第10話魔法を使おう

 朝。今日も仕事をしなければ。今日は夕方から魔法の授業だ。魔法は色々と使えるようになっておくことに越したことはない。だけど、魔法って滅茶苦茶伝えるのが面倒なのである。何せ、魔法はイメージが一番だからな。魔法って、魔法名を言って攻撃する訳でもない。いや、魔法名は叫んだ方が良いのは解っているんだけど、別に声に出していう必要はない。イメージを固めるだけで、割と何でも良かったりはする。エアショットでも、エアバレットでも、エアガンでも、発動する魔法は似たようなものである。これを使い分けている人って、珍しいんじゃないかな。……まあ、俺はそういう派閥でしたよって事は、伝えておこう。詠唱を必要とする派閥なんかも存在するからな。魔法に関しては、魔法研究所の方が優れている。錬金術師にとって、魔法とは、道具であって、どうやって使うのかが求められているだけだからな。詠唱したって良いんだよ。それでイメージが固まるのであれば、だけどな。んなもん無詠唱で良いんだよって人も居るんだ。俺は魔法は無詠唱でも良いとは思っているが、パーティーで動く時なんかに、何の魔法を使ったのかが解らないと困るから、魔法名は叫んだ方がいい派に属しているけど。


 とりあえず、今日から暫く教えるのは、身体能力強化魔法である。身体とは何か。そこから始めないといけない訳だ。筋肉とは何か。それも説明が必要だろう。まあ、ざっくりとしていれば良いんだけどな。強化が出来れば成功なんだよ。ぶっちゃけ、魔法は発動さえすれば良いんだ。理屈でどうにか説明しても、結局はイメージの問題なんだから、気合でどうにかなったりする。気合ではどうにもならない部分を、今日は教えるつもりなんだ。寧ろ、それさえ出来れば、イメージ次第で魔法は使えるようになる。その為の道具を、錬金術で作らないといけない。


 とりあえず、5つくらい作ろうかなとは思う。今ある素材だと、4大属性と、光属性、闇属性が精々だ。空間属性や時属性も作れないことはない。マジックバッグから魔石を外せば、1つは作れる。けど、そもそも空間属性も時属性も難し過ぎるんだよな。……俺は使えるけど。まあ、空間とは何ぞやって話を理解しないといけないからな。それを捻じ曲げる事だって、イメージさえ出来れば何とでもなるんだよ。理論が合っているのかどうかが問題じゃない。自分の理論でイメージが出来るかどうかが問題なんだ。だから、水はH2Oで、水素と酸素から出来ているという知識があっても、水素と酸素をイメージできなければ意味がない。それなら、水道を思い浮かべて、蛇口を捻れば水が出てくるとイメージした方が良かったりする。理屈だけでは無理なのだ。


 どんな風に教えるべきなのかというのを、昨日のダイヤウルフを解体しながら考えていた。イメージが固まらないと、魔法は使えない。魔力をその様に動かすことが重要だからな。まあ、多分だけど、今日は魔力を動かすことで終わるとは思うけど。それすら出来るかどうかが怪しい所である。魔法を使うのに1番必要なのはイメージである。じゃあ2番目はと言われると、魔力操作なんだよな。


 それを補うのに、必要な道具を作る。6つの属性に対応した物を作るだけだ。5つもあれば、使いまわせるとは思う。危険なものではない。魔力を無理やり使うだけの魔道具だ。それが、今はどの属性なのかというのを判断するのに使うのが、その魔道具なんだよ。火属性に近づいてますよとか、風属性に近づいてますよとか、そういうのが副産物としてわかる。メインの効果は、魔力を無理やり使うだけなんだけどな。それで、魔力とはどういうものかを覚えて貰う。それをしなければ、いくら魔法の知識があっても使えないからな。


「さて、5つも作れば十分だろう。危険じゃない様に、森に向かって魔法を使えば良いんだし。まあ、そもそも教えるのは身体能力強化魔法なんだけど。これはどの属性でも構わないからな。イメージさえ出来れば問題ないんだ。俺は時属性でやっているけど」


 何故に時属性なのかというと、俺と一番相性が良かったからだな。大体、個人で魔力の質がどれに偏っているのかってのがあるんだ。俺だと時属性に偏っていた。珍しいらしいが、居ない訳ではないらしい。それで、自分に合わせた属性で、身体能力強化魔法を使うのが一番良かったりするんだ。だから、聖属性なんかも居るんだ。それなりの道具を使わないと解らないんだけど、聖属性や死属性、空間属性、時属性は、1万人居たら、1人はどれかに当たるんじゃないかってくらいには珍しいので、考えない方が良い。寧ろ当たらない方が良い。イメージが難しくなりすぎるからな。


 さて、そんなこんなで、ポーション各種を作りながら、時間が過ぎるのを待っていた。子供たちも、今日は採取を早めに終わらせて集合している。子供たちは、何故か12人に増えているんだけど、そんな事はどうでもいい。獣人のお客さんのパーティーは4人だったらしく、合計で16人の生徒と、エレナちゃんが魔法を教えて欲しいとの事だ。


「さて、よくぞ集まってくれました。今日で魔法が使えるようになるとは思わないでほしい。早ければ使えるようになるかもしれないが、大体平均すると5日くらいはかかる。魔法の習得はそのくらい難しいと思ってくれ。さて、魔法を使いやすくするために、5つの道具を用意した。とりあえず適当に5人に渡すから、持った感想を言い合ってくれ」


「おお! なんか熱い!」


「なんか動いてる!」


「不思議な感じ!」


「それが魔力だ。魔力がない人は居ない。どれだけあるかは、道具があれば量れるが、量ることは重要じゃない。魔力があるって解らないと意味がないんだ」


「貸して! 早く貸して!」


「ちょっと待って、もうちょっとだけ!」


「なあ、早く回してくれねえか?」


「お、おう。なんか変な感じだ」


「持ったら何かを感じたと思う。それが魔力だ。感じた人は、魔力を体の中で回転させるイメージをしてみてくれ。体中を魔力が伝わるように、回転させるんだ」


「ん? うーん?」


「……どうやって動かすの?」


「回転……。回転?」


「何でも良い。魔力を感じて、それを動かす。今日はそれだけ。それが出来れば、もう魔法は使えたも同然だからな。」


 さあ、悪戦苦闘してくれ。これが一番難しいと思うからな。俺にとっては、イメージの方が簡単だった。この魔力を動かすというのが一番難しい。まずもって、思ったように動かないんだ。簡単そうに見えるんだけどな。魔法を使っている人を見ると。慣れれば簡単なんだけど、それまでに時間がかかるんだよ。まあ、どうしても今日中に使えないといけないって訳ではないからな。必死になって頑張ってくれ。


 唸る人も居れば、気合で何とかしようとする人も居る。……俺もそうだったから解るよ。何かをしようと思うと、声が出てくるんだよな。しかも、まともな声にならないからな。どんな叫び声をしているんだよって感じなんだ。まあ、今となっては懐かしい思い出だ。俺の場合は、声なんて関係なくて、血液みたいなものが回り廻っているって感覚に辿り着くまでに時間がかかった。だが、これが出来てくると、体が熱くなってくるんだよ。回転をすればする程、体が発熱し始める。そうなれば、直ぐにでも魔法が使えるんだけどな。


 動いている様で、動かないのが魔力だ。自分では動かしているように感じているんだけど、動かないからな。思った以上に動かない。それを何とかするのもそうなんだけど、こういうのには裏技もあるんだよな。


「さて、難しいと解ったところで、2人でそれを持ってみようか。持っている人の反対側を持ってみて。そうすると、魔力が動く感覚が解るから」


「何これ!?」


「気持ち悪い!」


「え? くすぐったくない?」


 まあ、感想は人それぞれだろう。属性があるからな。それで感覚が違ってくるんだよ。頑張れ。それを乗り越えないと、魔法は使えないんだ。何で魔法を皆に教えないか。面倒だからだ。面倒じゃなければ、皆が皆に教えている。魔法はもっと普及している。それでもしていないと言う事は、それなりに面倒だからである。貴族は大体の人が使える。それは教師を雇ってまで魔法を教えるからだ。こんな感じで、青空教室で魔法を教えようなんて奇特な人が居ないからである。そもそも奇特な人が、魔法を使えないと意味がない訳で。俺みたいな変人が、こうやって魔法を教えるって事は、中々に無いんだよ。


 でも、ユニークスキルの加減で、始めから魔法を使える人は存在する。逆に、魔力が使えないために、ユニークスキルも使えないって人も居るんだ。俺の場合は後者だな。国立錬金術師大学校で、魔法を使えるようにならなければ、ユニークスキルは使えなかった。だから、幼少期は反転のユニークスキルを使っていないんだよな。使えなかったから。使えていれば、何かが変わっていたとは思わないけどな。結局、国家資格である、錬金術師を目指していただろう。魔法を使うのに、黒歴史が作られなかっただけだ。


 どんなに頑張っても、無理な事は存在する。だけど、魔法に関してはそうではない。魔法は努力すれば使える。魔力が0の人はあり得ないからだ。そんな人が居るのであれば、直ぐにでも実験動物として、研究室送りにされるだろう。量り間違えていないのか、未知の属性があるんじゃないのか。などなど。色んな事が考えられるだろう。まあ、ここにはそんな生徒は居なかったと言う事で。普通で良かった。でも、これだけ遊んでいても魔力が続くんだから、皆3桁以上はあるんだろうな。少なくとも、1秒で10くらいは吸われるからな。わいわいと遊びながらやれているんだから、皆魔力の資質は結構あるんじゃないか? 大体ではあるが、スライムの核を壊さない程度の魔法が15から25なんだ。そのくらいの魔法は使えると言う事である。


 まあ、資質が解っても、使えなければ意味がないんだけどな。だから、使えるようになってくれ。今日が無理でも明日がある。明日が無理でも明後日がある。時間はまだまだあるんだ。どんどんと黒歴史を作ってくれ。そして、ふとした時に思いだして悶えような。自分もこんなことがあったなあって、悶え苦しむがいい。俺は今、それを経験している。記憶が走馬灯のように流れていく。恥ずかしい記憶が蘇ってくる。子供たちが、無邪気に叫ぶたびに、精神的ダメージを負っているのだ。


「なあ、魔力ってどんな感じなんだ? なんか粘り強いものがあるように感じてきたんだが……」


「おっと、早いですね。多分それが魔力です。ちょっと道具を長い事もって、動かしてみてください。案外一番早いかもしれません」


「お? そうなのか? 獣人の俺でも使えるもんなんだな」


「獣人とか人間とか関係ないですからね。使えない人が居ないんです。だから、獣人だからって使えない訳がないんですよ。皆、等しく魔力はあります。多いか少ないかの問題です。それを長時間持てるのであれば、それなりの魔力量だと言う事になりますからね」


 早くも獣人のお客さんの1人が感覚を掴み始めたので、道具を独占させる。ここからが勝負だぞ。思った以上に動かないからな。粘り強いと表現したように、動かすのには苦労する。ものを持って運ぶのとは訳が違うからな。見れない、触れない、解らないものを動かさないといけないんだ。でも、ここまで来れば、別の補助の仕方もあるんだよ。


「腕を濡らしても良いですか? 濡らす方が早く習得できる可能性があるんですけど、やりますか? どうするかは選んでも良いですよ」


「濡れるくらいはどうってことないが。全身じゃなくて、腕だけなんだろう?」


「腕だけですね。それじゃあ水を流しますので、感覚を掴んでください」


 そう言って、腕の肩の所から、手の方向に向かって水を流し続ける。これでなんとなく感覚が掴めるかもしれないんだ。この人が水属性の魔力をしているらしいからな。似たような魔力に触れることで、自分の魔力を自覚できる。そう言う意図があって、こう言う事をしているんだ。火属性なら熱を、風属性なら風を、土属性なら泥を。光属性や闇属性だと動いているのかが解らないとは思うが、一応流れは作る。面倒なのが、空間属性と時属性だ。そもそも使い手が限られるので、同じことをし難いというデメリットがあるんだよな。


「……なんとなくだが、外にあるのと、中にあるのが同じな気がする」


「同じですよ。属性を合わせていますからね。そこまで感じとれれば、あと少しです。頑張ってください」


「押せど引けど、動く気配は無いんだが」


「外側の魔力の流れに身を任せる感じです。動かすというよりも、動いてもらうって感覚の方がいいかもしれないです。そこまで固まっているのは、自分で固めているからだと思うので」


「そう、なのか? ……水の流れを感じれば良いんだな?」


「恐らくですが。これは感覚でしかないので、絶対の答えは無いんですよ」


「んお!? 動いた! そうか! こうやって動かせば良かったのか!」


「おめでとうございます。今日は動かすことに全力を注いでください。明日は魔法を使う方にシフトしますので」


「あ! おっちゃんずるい! 僕にも貸してくれ!」


「おう、いいぞ。坊主も頑張れよ」


「動かして動かして、ひたすら動かしてください。魔力が無くなるまで、ひたすらに動かすんです」


「おうよ。1度感覚を掴めればどうってことはないな。なんで今まで動かせなかったのかが不思議でならねえ」


「とにかく魔力を体の中で回転させてください。そうすると、段々と暖かくなってきますから」


「おい、どんな感じなんだよ。俺にも教えてくれ」


「いや、これが言葉にするには難しいんだって。なんて言うかな、押したり引いたりするのが無意味なんだって感じたな。流れるのに身を任せる? みたいな感じだ」


「人それぞれなんですよ。こればかりは、色々と試してください。押したり引いたりで動く人も居れば、それでは絶対に動かない人も居るんです」


 何とか1人は動かすことが出来た。子供たちの方は苦戦しているな。それだけ難しい事をしている訳なんだから、当然ではあるんだけど。これが簡単に出来る様になれば、一気に変わる。魔法という手段が取れるようになる。そうなると、冒険者としての活動に幅が出てくる。出来ることが増えていくんだから、当然ではあるんだけど。魔物に対しても、物理以外に魔法という選択肢が増えることで、出来ることは沢山あるんだ。それを感じて貰えれば良いんだよ。


「おわあ!? きたー!」


「おっと、2人目かな? 誰か、道具を貸してあげて」


 さあ、どんどんと増えてきて欲しい。魔法を使える様になれば、冒険者としても強くなれるだろうからな。少なくとも、手札は増える。魔法しか効かない魔物も居るんだから、そう言う手合いに勝てるようになる。スライムの核を得るには、魔法が使えないといけないし。そう言う面でも魔法は役に立つんだ。討伐の冒険者でも、採取の冒険者でも、魔法があって困ることなんてそうそう無いからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る