第8話隣町テッケルン
「そもそもそう言う事は冒険者ギルドの怠慢だからな。錬金術師の店の情報を流すのもその辺がやっているはずだ。冒険者ギルドの職員の中に獣人差別をする奴が紛れ込んでいるんじゃないか?」
「その可能性はある。現に俺たちの知識が足りていない状況だからな。何かしらあるのやもしれん。それはこちらで調査する。獣人のネットワークはあるんだ。その辺りで聞いてみる」
「獣人は基本的に情に厚いからな。助け合いのネットワークがしっかりしている。エルフよりも数が多いし、その分は情報があるはずだ。後、この店は獣人を差別しない。適切な処理をされた素材なら、通常と同じ値段で買い取る。……まあ、町で売った方が高いとは思うぞ。ここはこういう場所だからな。闇属性の素材が多いんだ。それだけ買い取り価格は安くなる。本当に高いものに関しては、町に持って帰ってから売る方が特だとは思うぞ」
「本当か? 町の方が高く売れるのか?」
「ちゃんとした錬金術店があればな。……俺も調査に向かうか。エレナちゃん、明日1日空けるけど、店番は大丈夫そうかな?」
「えっと、買い取れないものは断れば良かったんですよね?」
「ああ、それで良い。買い取れるものは買い取ってやってくれ。まあ、大きな持ち込み物は無いと思うけどな」
「それなら大丈夫です。基本的にポーションを売って、保存瓶を売って、素材を買い取れば良いんですよね?」
「それであっている。ちゃんと出来そうだな。俺も明日町の調査に行って来る。もし明後日もこの店に来ることがあるなら、情報を共有しよう」
「それは有難いが、そもそも1日でどうやって調査するのだ? 往復には6日7日はかかるはずだが……」
「その辺は魔法でどうにでもなる。錬金術師は魔法も得意な人が多いんだ。身体能力を強化して走っていく。獣人ほどではないが、身体能力はある方だからな。そこから強化をしてやれば、馬車よりも遥かに早く走ることが出来る」
「そうか……。俺たちは種族的に魔法が苦手な者が多いからな。魔法は俺も使えん」
「訓練次第だとは思うがな。まともに師事をしたことが無いんだろう? 国立錬金術師大学校では、獣人も魔力さえあれば、魔法を使えていた。苦手そうではあったが、使えない訳ではなかったぞ?」
「そうなのか? あまり獣人で魔法を使っているものが居ないからな。俺は知らない」
まともに教育を受けていなければ、そんなものだよな。獣人に限らずだ。人間だから、魔法に適性がある訳ではない。エルフだから、魔法に適性がある訳ではない。何事も、やってみない事には解らないものだ。まあ、獣人に教える機会が無いって事なんだろうけどな。教師として魔法を教えてくれる人は、大体貴族家に囲われてしまう。錬金術師くらいしか、獣人で魔法を使っている人は居ないんじゃないか? 獣人だからって使えない訳ではないんだが。
「あの、あたしも魔法が使えるんですか?」
「ん? エレンちゃんがか? まあ、訓練してみないと解らないが、才能がない訳ではないとは思うぞ。全くの才能無しの方が珍しいからな」
「そうなんですね。……あの、魔法を教えて貰っても良いですか? そこの獣人のお客さんや、皆と一緒に」
「俺は構わないが。……どうする?」
「俺も構わない。魔法が使えるに越したことはないからな」
「うーん。それじゃあ、明後日の夕方からでどうだ? 少し早めに帰ってきてもらわないといけないとは思うが。それで成果は上がるのか?」
「俺は、俺たちのパーティーはそこそこ稼げている。稼ぎに関しては、問題ないはずだ。それに、素材をちゃんと買い取ってくれるんだろう?」
「ああ、なるほどな。採取の金もある程度見込めるか。……そこに展示してあるものが、保存瓶に入っていれば、その金額になる。なんなら匂いを嗅いでいってもいい。獣人なら、種族的にも鼻が利くはずだろう?」
「良いのであれば、匂いを嗅がせてもらえると助かる」
「それと、水属性の素材なら東へ、土属性の素材なら西へ行くといい。闇属性は何処でも取れるからな。ただ、西は植物の魔物が主だ。苦手なら西は避けた方が良い」
「狩りは主に東で行っている。植物の魔物は苦手だ。匂いが解らん」
「それなら水属性の素材だな。高価なものもあるから、積極的に狙っていけばいい。それと、魔物に関しては何を狩っているんだ?」
「大体はゴブリンとコボルトだ。偶にダイヤウルフだな。ダストフロッグに関しては、沼地だからな。入ることが余りない」
「そうか。ゴブリンなら魔石、コボルトなら魔石と毛皮、ダイヤウルフなら牙と毛皮と魔石が素材になる。ダイヤウルフに関しては、肉も美味しいからな。それも買い取ることが出来るぞ。査定は、エレナちゃんがやってくれる。エレナちゃんは、ここにある素材の値段で買ってくれればいい。……コボルトやダイヤウルフは、解体が面倒なら、丸ごと持ってきてくれても構わん。処理はこちらでするからな。処理分の経費は貰うが。討伐部位に関しては、俺は必要ないから、ちゃんと持って帰ってくれ」
「ここにある値段で良いんですか? でも、何処に置いておいたら良いんですか?」
「ああ、それならこのマジックバッグに入れておいてくれ。時間のある時に、俺が処理するから」
「解りました」
「こちらも助かる。この恩は必ず返す」
「恩に着てくれなくても良いんだがな。それなら、良質な素材を取って来てくれればいい。それと、ゴブリンやコボルトに勝てるなら、新人でも歓迎だ。素材は幾らあっても良いからな」
「そうなのか? それでは、Eランク程度の冒険者でも採取は出来ると言う事か?」
「ゴブリンやコボルトに勝てるなら十分だ。採取だけでも、宿代くらいは稼げるとは思う。俺が試しに森に入った時は、運もあったとは思うが、普通に金貨は稼げたぞ」
「素材を知り尽くせば、そのくらいは稼げるのか……。この村は獣人差別は少なそうだ。新人にも声はかけておく」
「そうしてやってくれ。稼げるなら稼いだ方が良いからな」
新人冒険者でも、採取で稼げるはずだ。そのくらいには素材が豊富だからな。まあ、危険な事でもあるので、ある程度は選別してもらいたいが。無駄に怪我をされても困るからな。そんな感じで金欠になっていく冒険者が多いんだ。出来れば、宿代と食事代が稼げれば良いとは思う。……そうなってくると、宿屋も増設した方が良いんじゃないだろうか。そこまで行くと、住民の雇用先にもなるだろうし、村も大きくなるんじゃないか? この村の扱いがよく解っていない所ではあるんだけど。住民が増えても問題ないとは思うんだがな。農地もまだまだ余っているんだし。
そんな訳で、獣人の客が帰っていった。……冒険者ギルドも酷いことをするもんだ。冒険者ギルドは、獣人差別なんてしないと思っていたんだけどな。それとも、酷いのは錬金術師の方か? 何も教えずに、素材を買い叩くような真似をしているんじゃないだろうか。錬金術師もピンキリだからな。何とも言えない所があるんだよ。基本的には、平民の方が差別意識は強いんだろうけど。……貴族の錬金術師は、そもそも人間もエルフも獣人も、平民を等しく下等民族だと思っているからな。獣人だけを差別している訳ではないんだよ。どっちの方がマシなのかって感じではあるんだが。
結局は、その後はエレナちゃんが困るような事はなく。俺も解体が終わったし、明日は町に行ってみようかなって感じになった。とりあえず、向こうの町の相場も確認しないといけないし。どんな錬金術師が居るのか、興味があるな。まあ、あまり期待は出来ないけど。恐らくだが、貴族の錬金術師の店が、一番いい場所にあるんだろう。そんな気がする。その領主である貴族家の次男以下がやっているんじゃないかな。だから、不正をしても、おとがめなしで居るんじゃないか? 詳しい事は知らないけどさ。とりあえず、明日は早くに出て行くため、エレナちゃんに合鍵を渡して、早朝に出発する事にする。一気に走り抜けるからな。それだけの速度で走るつもりだ。ここには速度規制なんてない。まあ、そもそも走って速度規制を越えるってどう言う事だよとは思うかもしれないが、魔法を使えばそんなことくらいは出来るんだ。
と言う事で、朝。身体能力を強化して、風属性魔法で追い風にして、とんでもない速度で走る馬鹿野郎が居たと。俺なんだけどな。暴走特急の様に、かなりの速度で走っている。身体能力強化で、視力も強化していなければ、何処を走っているのか解らないってくらいには、早く走っていた。
そして、1時間後には、テッケルンに着いていた。1時間で走破出来るのか。これならもう少し余裕をもって出ても良かったな。まずは色々と調査をしていくんだけど、錬金術師の店を探さない事には話にならない。こういう時は、冒険者ギルドに聞き込みに行くのが良いんだ。教えてくれるのかどうかは解らないけどな。……特定の錬金術師と組んでいると、教えてくれない可能性がある。
「いらっしゃいませ。ようこそ冒険者ギルドへ。依頼を出しに来ましたか?」
「いえ。錬金術師の店を探していまして。この町の錬金術師の店を全て教えてください」
「全てですか? そうですね、錬金術師のお店は4軒になります。1つ目は、冒険者ギルドの向かいにある建物ですね。そこにポーションの看板があるので、解ると思いますよ。2つ目は、少し遠いんですが、北門の所にある錬金術店ですね。北からやってくるのであれば、そこに売ると良いんじゃないでしょうか? 冒険者が多いのはここか1つ目ですね。3つ目は、西門の近くにある錬金術店ですね。こっちは、商人が多く利用していると思います。4つ目は、南東にある錬金術店ですね。主に住民が使っている錬金術店になります。この町にある錬金術店は以上ですね」
「解りました。1つ目から順番に回っていきます」
……なるほどね。まあ、見えるところは見えたかな。1つ目は外れ。これは貴族が絡んでいる可能性が高い。2つ目も外れ。北門にあると言う事で、レイトーン村から一番近いのがここだ。ここが適正な価格で買い取っていれば、そもそも問題にはならない訳で。獣人だけを差別しているのかどうかは別だけどな。ここも貴族が運営している可能性がある。3つ目は微妙なんだよな。商人が出入りしているというのは、加点してあげたい所ではあるんだけど、商人と組まれている場合だよな。買い取りは安くなっている可能性が高い。それを商人に売ることで、利益に繋げていると言う事だな。商人も安く仕入れられるので、他の町で高く売れると。だから、そういう可能性がある点で微妙なんだよ。4つ目は当たりだな。住民が使うと言う事は、それなりに安い価格で物を売っている可能性が高い。それに、多分だけど、4番目に紹介されるという点で、冒険者ギルドとの繋がりは薄い。素材があまり納品されていない可能性がある。そうなってくると、相場よりも高く売れるかもしれない。そうでなくても、誤魔化すような事はしないんじゃないか? そう思うよな。
まあ、1つ目から潰していこう。用意したのは夕闇草。村では買い取り価格、保存瓶1個に付き銅貨20枚で買い取っている。王都なら銀貨40枚くらいかな。村の何処にでも生えているので、割と誰でも採取が出来るんだけど、闇属性が強くないと育たない。だから、この町では、比較的高く買い取ってくれると思うんだよ。相場は銅貨30枚から50枚といったところ。そのくらいでも十分に利益が出る筈だ。
「こんにちは。素材を売りに着ました」
「はい。買い取りますよ。素材を出してください」
「これになります」
「ちょっと待ってくださいね。うーん。間違ったものも幾つか入っていますね。これだと、銅貨10枚になると思いますが、よろしいですか?」
「はい大丈夫です。ありがとうございました」
間違えて入れる訳がないだろう。舐めてるのかと。雇われ店員だからな。そう言えって言われているんだろうな。1軒目は屑と。恐らくだが、貴族当たりがやっている店だ。屑は放置した方が良い。続いて2件目。
「こんにちは。素材を売りに着ました」
「こちらに並んでください。順番に買い取ります」
そう言われて、列に並ぶ。……やはり、冒険者が多い印象だ。凡そ、北から帰ってきた冒険者だろうな。まて。あいつら、保存瓶を使ってないぞ? こっちの奴もか? 嘘だろ? 冒険者ギルドは何をやっているんだよ。普通に考えて頭がおかしいだろ。保存瓶で保存するのが普通だ。そのまま持ってくるとかあり得ないだろ。
「はーい、次の人どうぞ」
「これを買い取ってください」
「うーん。保存状態が良くないですね。これでは高くは買えませんよ? 数は多いですけど……。そうですね。銅貨15枚で買いましょう。いかがですか?」
「はい大丈夫です。ありがとうございました」
保存瓶に入っていて、保存状態が悪いはあり得ない。舐めているのか? ふざけているんだろうか。何を考えているんだって感じである。そもそも他の人たちが保存瓶を持っていなかった。冒険者ギルドがそういう教育をしていないことになる。ふざけているんだろうか。絶対におかしいだろう。普通に保存瓶を使う様に指導しろよな。錬金術師も屑だが、冒険者ギルドも屑だな。領地ぐるみでやっているとしか思えない。そして、3件目。
「……客か?」
「買い取りをお願いします」
「ほら、出してみな。……闇属性の素材か。まあ、及第点だろ。銅貨20枚だ。これでいいか?」
「はい。ありがとうございました」
はい、屑確定。こいつ、自分が錬金術師だって自覚がないのか? それとも本気で言っているのか? 雇われなら、何とか値段を付けようとして、安くなるというか、間違えるのは解るんだ。こいつは錬金術師だ。錬金術師が店舗に出て、買い取っていた。なのに、夕闇草という素材の名前すら出なかった。闇属性の素材だと言う事は解ったらしいが、それ以上の知識が無かった可能性がある。そんな事で錬金術師が勤まる訳がない。……潜りか? その可能性は十分にある。それか、錬金術師に師事をして、国家資格を持っていない場合だな。
国家資格持ちの錬金術師が、師匠として他の錬金術師を育てることは、違法ではない。国家資格持ちでなければいけないのは師匠になる事までだ。錬金術店を開くにあたっては、国家資格は必要なかったりする。ただし、師匠の監視ありきでの話なんだけどな。師匠の元で働くか、独立しても、定期的に師匠の監査が必要になってくる。あの錬金術師の態度で、師匠が許可を出す訳がない。俺の師匠なら、殴って教育のやり直しだな。それくらいには屑だ。錬金術師を名乗って良いものではない。もしかしたら、師匠が死んでいる可能性まであるな。そんな潜りに店をやらせているって、この町の領主は何をやっているんだ? 錬金術師は貴重だ。それは解る。だからと言って、錬金術師未満を錬金術師として成り立たせるのは馬鹿だ。貴族であっても非難されるべきことだ。真っ当な貴族からしたら、何をやっているんだと怒られるぞ。本気でそんな事で良いんだろうか。良い訳が無いんだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます