第6話北の森の調査と店の準備
引き続き、北の調査だ。今日で調査は終わりにする予定だ。頑張っていこう。基本的には採取物の調査と魔物の調査だ。冒険者は知っているのかもしれない。けど、知っているのと調査しているのとでは勝手が違う。こっちが何を買い取り、何を売っているのかで、内容が変わってくるからな。普通の錬金術師の店ではあるが、町の錬金術師と村の錬金術師では、地元密着度合いが全然違うからな。町の錬金術師の店は、どちらかというと汎用店なんだ。いくつもの狩場を想定した、色々な物を売っている店である。しかして、村の錬金術師の店は、地元に特化していく傾向があるんだよ。だから、俺も必要な物を、必要なだけ売ると言う事をしていくつもりだ。
そういう訳で、調査をしていた。採取物は相変わらず闇属性の素材が多い。高級品もいくつも見つかる。こんな場所なら、本気で採取をすれば、それだけで食っていけるくらいには闇属性の素材が豊富だ。良い場所だとは思う。……師匠の私欲さえ入っていなければ、もっと歓迎できたと思うんだよな。師匠の酒好きには困ったものだ。最終的には師匠が得をする形になるんだから。
ダークスライム、ゴブリン、コボルトと言った、いつものラインナップはさておいて、ここで出てきたのが、ホーンデッドラビットだ。攻撃力に特化した魔物である。なので、守りに入れば弱いんだけど、新人冒険者なら死にかねないくらいの攻撃力がある。その原因が、鉄の鎧くらいなら貫通してくる角だ。突撃を仕掛けてくる訳なんだが、角は薄い鉄の防具くらいなら貫通する。ただ、その代わり、ホーンデッドラビットも死ぬんだが。硬いものを貫通した時、頭に衝撃が走り過ぎて、脳が破壊される。なので、ホーンデッドラビットの名前が与えられている。自滅するからな。特に、木にぶつかっても死ぬので、油断さえしていなければ、楽な魔物である。まあ、それでも、気配を消されたら、マジで死にかねないので注意が必要だ。
俺は探知魔法が使えるからな。普通に見つけられる。探知魔法は便利だぞ。いつも助けられている。錬金術師で使えない人の方が珍しいんじゃないかな。国立錬金術師大学校で、嫌という程、索敵の大切さを学ぶからな。探知魔法さえ使えれば、それだけ危険な事から身を守れる。昨日のアースマッドやトレントだって、探知魔法があれば、ある程度の違和感を覚えることが出来るんだ。後は慣れだな。探知できても、何が引っかかったのかが解らなければ、意味がないんだよ。探知魔法は万能ではない。それをどう使うのかが問題なんだ。
ただ、兎肉は美味しいので、食料としては申し分ない。可食部分が少ないのが問題ではあるけどな。小さいし。これがもっと大きければ、もっと驚異的な魔物になっていただろうから、これで良いとは思うんだけどな。気を付けないと普通に死ぬ。まあ、今の胴長は貫通しないんだけど。伊達に見た目を捨てている訳ではない。見た目の代わりに、安全を買っていると思えば、それなりに良いとは思うんだよ。もうちょっと見た目がなあ。ただの変人にしか見えないのが難点だ。
少し奥に行くと、ダークピッグが居た。これは良い。魔石が闇属性なのも良いんだけど、何よりもお肉が美味しい。食べられる部分も多く、非常に良きである。まあ、乱獲したところで、買い手がつかないとは思うんだけどな。町の人に売るしかないだろう。……そうなってくると、運び屋というか、商人が必要になってくると思われる。こんな村にまで商人が来るのかって話ではあるんだけど、これだけの闇属性素材が取れるんだから、商人が来ていてもおかしくないんだよな。来ていないっぽいけど。なんでだよとは思わなくもない。これなら商売になるはずだ。なのに、商人が来ないのは、何か理由があるんだろうか。
ただ、ダークピッグが居ると言う事は、ちょっとした問題もあるんだよ。ダークピッグを捕食する魔物が居る筈なんだよな。ダークピッグは、美味しいしお肉が多い。他の魔物の餌食になることが多いんだ。だから、捕食している上位種が居ることが予想される。そして、その予想は当たった。
「グレイズベアか。4本腕の凶悪な魔物だ。火属性だから、こっちには火属性もあるのかね? ……ネガルドウルフ、1体だが行けるか? いけないなら無理はしないでもいい。ダイヤウルフが死なない様に行動できるか?」
「ウォン!」
「そうか。それじゃあ目は狙うなよ? 素材になるからな。それじゃあ、行ってこい!」
ネガルドウルフとダイヤウルフが駆けていく。相性的には悪くはない。火属性と水属性は対になる。有利不利もあるが、反対の属性は攻撃側が有利。防御したいのであれば、同じ属性で合わせていくのが良いんだよ。今回は攻撃側が有利になる。攻撃力は圧倒的にグレイズベアに軍配が上がるんだけど……。
「流石はウルフ系統の魔物だ。連携力が違う。グレイズベア相手なら、完封できるのか」
結果としてみれば、グレイズベアを完封。それだけネガルドウルフが強いという証明にもなる。攻撃側に回れれば、だけどな。防御に回らされれば、こちら側が一気に崩れた可能性も十分にある。だが、ネガルドウルフの強さを再確認したとは思う。……まあ、これでこの森なら何とでもなるとは思わないけどな。この状況なら、間違いなくグレイズベアの上位種が居るだろうし。
と言う事で探した。グラングレイズベアだ。大きさはグレイズベアの2倍程度。腕も6本に増えて、凶悪さが増している。流石にネガルドウルフたちでは分が悪い。なので、サクッと俺が倒すことにした。凶悪なんじゃないかって? それはそう。でも、これ以上の上位種ならまだしも、グラングレイズベア程度では苦戦はしない。それだけの訓練は積んでいる訳だ。まあ、油断しなければこんな――!?
「エアショット! ……まさか、こんな所で見ることになるとはな。迷いスライム。迷いスライムが居るって事は、かなりの収穫だぞ。グラングレイズベアなんて目じゃない。これだけでもこの辺に潜るだけの理由が出来る」
迷いスライム。何処かのメタルなスライムを彷彿とさせるくらいには、素早い魔物だ。基本的には逃げる。もの凄く逃げる。だが、狙って狩るやる奴らも居る程度には儲かる。迷いスライムの核は、時属性の素材なんだ。これがあれば、俺なら反転のユニークスキルを使って、マジックバッグを作ることが出来る。時属性はレア中のレア。なので、空間属性にするには勿体ないかもしれない。けど、マジックバッグはそれだけの価値がある。どちらかの属性があれば、マジックバッグが完成する俺にとっては、迷いスライムほど、欲しい魔物は居ない。普通の時属性の魔物は強いからな。一番弱いのがこの迷いスライムだ。だから、確定で狙う。乱獲したい。マジックバッグはあればある程便利だからな。今日の予定は決定だ。これからは迷いスライムを乱獲する。……まあ、そこまで居ないとは思うんだけどな。でも、迷いスライムが居ると言う事が解ったのは大きい。さあ、今日中に何体狩れるか。時間との勝負である。
そんな訳で、粘りに粘ったんだが、合計で6体しか倒せなかった。それでも、マジックバッグ3つ分である。マジックバッグはいくつあっても良いからな。非常に高価であるマジックバッグを所持していると言う事は、それなりの冒険者であると言う事でもあるし。まあ、Cランク以上の冒険者からしか所持を認められていないんだけどな。冒険者が所持するには、Cランクを越えないといけない。例外的に認められているのは、譲り受けたり、相続した場合である。購入するなら、Cランク以上で無ければならないんだ。まあ、頑張っていれば、Cランクには成れるだろう。そこまで難しい訳ではないはずだ。冒険者についても、ある程度は勉強しているが、机上と実状では違うだろうからな。色々と大変なはずだ。まあ、でも、そこまで考えてやる必要はないとは思うけどな。錬金術師の方が立場的には上なんだから。伊達に国家資格ではないと言う事なんだよ。錬金術師が不足するなんてことはあってはならないはずなんだよな。
まあ、不足しているから、レイトーン村に錬金術師が居なかったんだろうけど。独立して、村で生活しようって人が少ないのがいけない。そもそも、師がいない状況になるなんてな。普通は師匠の監修の元、修行をして、10年くらいで1人前って感じなんだから。俺がこうやって苦労をしているのは、主に師匠が原因である。好き勝手し過ぎなのだ。苦労した分だけ、良い事があると思わないとやっていられないくらいなんだよな。何か良い事があれば良いんだが。今の所、そう言った兆しはない。そもそもエルフが少ないからな。この村にもエルフは居ないっぽいし。というか、殆ど人間だからな。村長くらいか? 後は職人の人か。ドワーフだったもんな。その他は殆ど人間だったと思う。まあ、人間に見えるだけの種族も居ない訳ではないので、何とも言えないんだけど。
さて、それじゃあ、明日に備えて寝るか。今日も夜なべして素材の価格を記入した保存瓶を展示しておくんだけどな。素材はこのくらいあるんだと言う事を認識してほしい。全部を覚えるのは不可能に近い。だから、ある程度覚えて、収入の足しにしないといけないんだよ。冒険者は辛いぞ。それでもやる気があるなら、しっかりと覚えてくれれば良いとは思う。
そんな訳で、朝。いつも通りに目を覚まし、早速風呂に入って錬金術だ。まずは、闇属性の素材を使った、ダークポーションを作らないといけない。ダークポーションの素材は、子供たちが集めてくれている。それを使う。大体、保存瓶1個分で、100本のダークポーションが作れる。それを瓶詰めするのは面倒なので、売る時に瓶詰めするんだ。ガラス瓶を作る魔道具もちゃんとあるので、その辺は安心である。……無ければ、炉からガラスを作るって感じになるんだよな。非常に面倒だけど、魔道具が無くなっても、商売が出来るようにと言う事で、国立錬金術師大学校では授業でやらされる。師匠は非効率だのなんだのとは言っているが、ガラス細工も出来るようにならないと、卒業をさせてもらえない。そこまでしないといけないのかって気持ちはない訳ではないが。
「さて、闇属性の素材と、水を錬金釜に入れて、魔力を込めながら混ぜるだけと。その辺の調整方法は嫌という程教わったからな。錬金術師が、ただのポーションで失敗する訳にはいかない。そんな事はあり得ない。1年生ならまだしも、卒業生がポーション作りに失敗しましたって事になっては恥ずかし過ぎるからな」
一番簡単で、誰もが1000回は作るのがポーションだ。闇属性だからダークポーションって名前ではあるんだけど、ポーションはポーションだからな。失敗する訳がない。初めての道具だろうが、失敗なんてあり得ないんだよ。そんな訳で、1分もしない内に、ポーション100本分が出来上がった。これを、綺麗なバケツに入れて、店頭まで持っていく。
「エレナちゃん、ここにダークポーションを入れておくから、お客さんが来たら、ここでダークポーションを入れて、渡してあげてね。これも200ケッタだから。子供たちにも、今後はこれでお願い。使い切ったポーション瓶は、こっちの洗浄機の中に入れてね。使いまわしが出来るから。資源は無駄にしない事。これは常識だからね。ここには、えっと、10個のダークポーション入れがあるから、1つを使い切ったら教えてね。使い切ったら補充をするから」
「えっと、解りました。今日から始めるんですか?」
「そうだね。今日からお店を始めようか。店の前の看板をOPENにしてきてくれるかな?」
「はい。解りました」
「それと、俺はとりあえず、宿屋に行ってから、雑貨屋にも行くから。店番よろしくね。解らないことがあったら、冒険者の人には待ってもらえば良いから。ちょっとくらいなら待ってくれるとは思うし、大丈夫。緊張しなくても良いよ」
「はい。頑張ってみます」
「うんうん。ここにある素材は買い取って良いから。お金はそこのレジの中に入っている分で何とかなるはずだよ。何ともならなくなったら、待ってもらって。丁度その辺に椅子があるから、そこで待ってもらうのが良いんじゃないかな」
そう言って、まずは宿屋に。食事を買いに行かないといけないのと、冒険者に錬金術店がオープンしたことを伝えて貰ないといけない。ここからが始まりだからな。
「すみません。食事を買いに来ました。保存瓶に沢山でお願いします」
「あらま、また来たのね。沢山買ってくれるのは助かるわ」
「こっちも沢山売って貰えるのが助かりますから。流石に毎日は面倒なので。それと、冒険者の皆さんに、錬金術店がオープンしたことを知らせに来たんですよ。教えて貰っても良いですか?」
「あら、予定よりも早くオープンするのね。それは良い事ね。知らせておくわ」
宣伝は大事。何よりも店で買い物をしてくれる方が良いんだよ。どんどんと買い物をしてくれればいいとは思う。まあ、必須になるのは、とりあえずポーションだろうけどな。ダークポーションがあれば、事足りるとは思う。後はお守りに、ある程度のポーションを準備しておけば、何かと便利ではあると思う。けど、そんな事は冒険者に取っては当たり前なので、備蓄してあるとは思うんだよ。下手な事をしなければ、そこまでのポーションは必要ないはず。
そんな訳で、雑貨屋にも来ましたよと。雑貨屋では、ポーションの買い占めと、保存瓶の買い占め。それと錬金術関連の品物をすべて買い取った。割高だけど、こればかりは仕方がない。向こうの仕入れ値もあるからな。原価で買う訳にはいかない。そして、鞄を3つ購入した。これをマジックバッグに加工する。鞄づくりからしても良かったんだけど、こういうのは既製品を買った方が早いからな。自分で全部をする必要はない。出来ることは任せてしまえば良いんだよ。だから、ついでにその他の雑貨も買ったんだけどな。多少の食器は必要なんじゃないかって思えてきたから。俺だけなら、ポーション瓶で水分補給をしても良いんだけど、エレナちゃんにそんな事をさせるのもな。ちゃんと水袋を支給してあげないと。
そんな訳で、店に帰ってきた。早速、錬金術で色々と作っていこう。商品を作るのは勿論なんだけど、まずはポーションを確保しないといけない。ポーションは必須だ。各種ポーションを用意しておかないといけない。一番の売れ筋はダークポーションだとは思うけど、それ以外も必要だからな。種類は多い方が良いんだ。その都度、使うポーションを決めた方が良いのは確かだからな。それに、強化系のポーションもある。それらを準備しておけば、かなり役に立つとは思うんだ。俺には必要ないかもしれないけど、新人冒険者には、あった方が良いものも多いからな。ドーピングして戦うのは基本である。スポーツじゃないんだから。生きるためには、ドーピングも必要になってくる事があるんだ。生易しくはないからな。
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