第5話今度は西の森

 さて、結果はというと、東の森の成果は、ダークスライム、ゴブリン、コボルト、ダストフロッグ、氷雪コウモリ、ダイヤウルフ、ネガルドウルフの7種類の魔物が確認できた。まあ、まだ居るかもしれない。調査したのは1日だけだから、合っているかどうかは解らない。けど、買い取りが出来ない訳ではない。知らない魔物だって何とか解体する事は出来るし、素材の確認くらいは出来る筈だ。解らなければ、師匠に問い合わせることになるんだろうけど、魔物が解らなくて解体出来ないって事にはならないはずだ。……自信がある訳でもないが、何とかなるとは思っている。


 それと、ソウルカードなんだが、合計で3枚も手に入った。ネガルドウルフが1枚と、ダイヤウルフが2枚だ。定期的に狩りに出かけるのであれば、東だな。これからもダイヤウルフとネガルドウルフのソウルカードは手に入れたい。こういうのは運命で決まっているらしいからな。師匠が言っていた。落ちる奴にしか落ちないって。俺はそれが偶々ウルフ系統の魔物だったんじゃないかな。あまり詳しい事を知っている訳ではないけど、手に入ったのが運命みたいな感じだから。


 それで調査を終えて帰って来た訳なんだけど、ちゃんとエレナちゃんは帰ってくれたようだ。待っていたら、こんな夜の遅くになっていたんだからな。帰ってくれてほっとしている。責任感が変に強い子だと、最後まで残るっていいかねないからな。こういう所で約束を守ってくれるのは好感が持てる。危機になったら逃げろと言われて、逃げないのは駄目だからな。ちゃんと逃げないと。約束とはそう言う事なんだし。これなら継続して雇っても問題ないとは思う。ユニークスキルが観察だし、かなりの有望株だ。しっかりと育てていかないとな。


 育てるためには、観察が必要だ。今回採ってきた素材をしっかりと観察してもらわないといけない。ものがものだから、覚えられない可能性もあるけど、それは仕方がない。そういう場合は、俺が出てきて査定を行えば良いからな。適当に採取しただけの素材を買い取るのは避けないといけない。冒険者には居るんだよな。話を聞かない奴らが。王都の冒険者も、よく師匠に食ってかかっていたっけ。師匠が強すぎて、2度目は無かったけどな。なんであんなに強いんだろうな。出鱈目に強いんだから、どうしようもないんだよ。


 どう考えても、素材なんて一目で覚えられるわけがないんだ。形を覚えても名前が、名前を覚えても属性が、なんて事はザラである。何万と素材があるんだからな。……師匠に手ひどく教えられたが。覚えられるように叩き込まれたからな。そんな一瞬で記憶できるか! 無理だ! って何度言ったか解らないくらいには、文句を言ったっけ。5年で文句を言わなかった日の方が無いんじゃないかな。それだけ、錬金術師というのは、知識が求めれられるし、資質も求められる。俺だって5年間遊んでいた訳ではない。必死になって勉強したさ。覚えられる限界があるとは思っていたけど、それでもかなりの量を叩き込めたはず。今では師匠に感謝をしているくらいではある。


 それをエレナちゃんが1日2日でどうこうできるわけもなく。俺だって苦戦したんだ。いくらユニークスキルが観察だからって、記憶力が良くなるわけではない。いきなり全部を覚えるのは不可能なんだ。そのくらいは頼って欲しいとは思うけど、大丈夫だろうか。今日だけでも、100種類近い素材を採取してきたんだ。これを覚えろってのは無理があるんだよ。最低でも3年は修行が必要かな。錬金術師として食っていく訳じゃないんだから、そのくらいの時間は必要だろう。まだ、北と西が残っているし。属性も変わる可能性があるからな。闇属性と水属性があったんだから、光属性と火属性は無くても大丈夫。最低でも風属性か土属性は欲しいかな。そうすれば、4大属性と光と闇が揃うんだし。死属性はあるのは解っているんだから、冒険者待ちなんだよな。優秀な冒険者が来てくれないと、死属性の素材は手に入らない。


 俺が取りに行くのもなんだしな。冒険者に取りに行ってもらいたい。師匠が何を言い出すのかが解らないが、そこまで死属性の素材を求めている訳ではないだろうしな。……いや、あのアル中が我慢できるのかという問題があるのか。早い所酒を寄こせと言われる可能性は十分にある。良い冒険者が来てくれることを願うしかないな。そうじゃないと、アル中が酒欲しさに、ベルンケラーまで俺を連れて行きかねない。それは勘弁願いたい。非常に面倒である。


 まあ、とりあえずは、裏庭で解体からだな。ダイヤウルフのお肉は、良いお土産になると思うし。肉も食べないと成長しないからな。村で何処まで肉の供給があるのかは知らないが、子供たちにはしっかりと食べて貰いたいものである。……まあ、渡すだけで、調理はしてもらわないといけないんだけどな。俺か? 料理は出来ない訳ではないぞ。面倒なだけで。錬金術師は何でも屋なんだ。料理も出来ないといけない。……料理の授業もあるんだ。料理は出来ない訳ではない。ただ、後片付けが嫌いなんだよ。思った以上に掃除が面倒である。だから、出来るだけ料理もしたくない。出来るのであれば、誰かにやって貰った方が良いんだよ。ここには宿屋があるから、食事には困らないし、それで良いんだ。


 そんな訳で、手頃なネガルドウルフを解体し、心臓を保存瓶の中に保管して、毛皮や牙も処理していく。鞣すのはまた今度だ。良い感じの木材を手に入れないといけないし、もしかしたら、そう言う事に特化した素材があるかもしれない。鞣すのに丁度いい素材があるんだよな。土属性と風属性に幾つかあるんだけど、それが手に入る可能性がある。それらも採取対象なんだ。まあ、魔物から奪い取るんだけど。そういう用途のある素材があるんだよ。都合よくあるかどうかは知らないが。


 ああ、冷蔵庫も欲しいな。水属性の素材があるんだから、箱さえ作れば何とかなる。金属を入手するか、職人さんに箱だけ外注するかだな。ここにも炉はあるんだけど、鍛造するための炉なんだよな。簡単に言うと、木材で覆った鉄の箱が欲しいだけだから、板を組み合わせて、溶接した方が使い勝手は良いと思うぞ。何でもかんでも自分でやらないといけない訳ではないし、外注できるものは、してしまった方が良いとは思う。無駄に重いし。冒険者に運んでもらえば良いとは思うけどな。緊急時のお茶とか、保存しておいて損はない。今は秋だけどな。夏場は暑いかもしれない。冷蔵庫は欲しいだろうな。


 お風呂に入って、綺麗にした後、寝ることにした。……もうベッドが出来上がっていた。仕事が早いなあ。これで床で眠る必要が無くなった訳だ。布団は良いものを王都で買って来てあるし、このままで良いとは思うんだよな。へたってきたら、買い換えれば良いんだし。最悪は、布団も自分で作るという手段がある。錬金術で作る布団は、割と高級品なんだけど、自分用だからな。作るのもいいかもしれない。そう言う事で、ぐっすりと寝た。まあ、ちょっとした作業をしてからだけどな。


 朝、起きて朝食を食べたら、エレナちゃんが来るのを見届けて、冒険者の真似事をしている子供たちを待った。今日も来るだろうからな。因みに、多い子で銅貨50枚くらい稼いでいたらしい。順調だな。採取の冒険者としては、中々の滑り出し。更に今日は、ここに追加の見本を置いていく。これと同じだけの量を集めて貰えば、これくらいの金額になるよと、保存瓶に書いてある。これを昨晩の内に用意した。値段は王都の10分の1から100分の1。それなりに地元では取れるだろうからな。俺がもしも町の方に売りに行ったら、儲かるようには値段設定をしたつもりだ。そのくらいは商売として許される。まあ、王都価格で買ったら、普通に払い過ぎって感じではあるんだけどな。


「これは昨日取ってきた肉だから。今日は夜に焼いてもらえよ。皆の分があるからな。まずはこれを家に届けてから採取に向かってくれ」


「おお! 肉だ! こんなにあるのか!」


「えっと、貰っていいんですか?」


「久しぶりの肉だ!」


「ああ、貰ってもらうために解体したからな。素材を採取してくれているお礼だ」


 純粋な気持である。マジで素材の採取は時間がかかるからな。こういうのはマンパワーがものを言う。子供たちの労働力を使っているんだから、これくらいのご褒美は必要だろう。毎回は無いけどな。


「そして、君たちに朗報である。ここにこれだけの素材を用意した。村の中で、探せば見つかる素材もあれば、無い素材もある。ここにある素材は買い取るからな。査定はエレナちゃんに任せる。しっかりと査定をしてやってくれ」


「こんなにもあるんですね……。解りました。頑張ります!」


「おい、これすげえたけえ! これ探そうぜ!」


「見つからない奴もあるって話だろ? 高い奴は無いんじゃないか?」


「最悪解らなくても、持ってきたら査定してもらえるんじゃないか? 無駄になる可能性もあるけど。もしかしたら、高いものもあるかもしれないんだし」


「それじゃあ冒険者見習い諸君。頑張ってくれよ。一杯素材を見つけてくれ」


 頑張ってほしい。こんなにも素材があるんだぞって、見せておかないとな。それで稼げるのであれば、どんどんと稼いでほしい。ただし。


「ただし、くれぐれも森に入るんじゃないぞ? 森には凶悪な魔物が居るんだからな」


「解ってるって。武器が手に入るまでは駄目だって言うんだろ?」


「親からも言われているし、問題ねえよ」


「ちょっとくらいで入って死ぬって事もあるって言うし、流石にしねえよ」


 まあ、誇張が入っているだろうが、それは正しい。少しの油断で死ぬからな。死なない様にしないといけない訳なんだ。中々に大変だとは思うぞ。親御さんも苦労しているんだろうし。子供たちが森に入ったら、まずはスライムにやられるからな。スライムは強敵だぞ。物理攻撃で倒そうと思ったら、核を攻撃しないといけないし。ダークスライムでも、触れ過ぎたら、皮膚が溶かされるからな。危険な存在であることには変わりがない。まあ、物理で倒すと、素材が一切手に入らないから、勿体ないんだけどな。魔法を使えるようになれば、スライムなんかは怖くないんだけど。でも、魔力量にも因るからな。少ない人は本当に少ないらしい。1桁の人も居るって話だ。俺は7桁あるんだけど。錬金術師には、魔力が必須だ。錬金術師の素養があるかどうかは、魔力量で決まると言っても過言ではない。それだけ重要なんだよ。


 そんな事は良いとして、今日は西側の森の調査だ。東が水属性だったからな。別の属性であってくれると助かる。という訳で、ダークスライム、ゴブリン、コボルトは無視しつつ、西の森の奥に入っていった。何が居るのかなという感じで奥に入っていったんだけど、面倒な魔物を見つけた。……マンイーターか。人間の天敵ともいえる魔物だが、普通にゴブリンなんかでも食べるからな。擬態をしていないだけマシだ。溶解液が面倒なだけで、それはそれで素材になるからな。まあ、動けないので、倒す分には簡単なんだけど。魔法が使えれば、の話ではあるが。普通に遠距離から魔法を使ってお終いだ。何も考える必要はない。


 ただ、マンイーターが居ると言う事は、土属性なのかね? マンイーターは土属性の魔物だ。魔石が土属性で、その他は、溶解液が使い物になる。溶解液は、金属加工に使ったり、合金を作る時に使われる。溶接なんかでも使うな。割と色々と使い道があるんだよ。劇物ではあるんだけど、それでも専用の道具を使えば、簡単に溶接が出来るという優れモノだ。素人が扱うものではないけどな。


 その後も、土属性の素材を多く見つけた。この辺は土属性なんだな。魔力の流れがどうなっているんだろうか。色んな属性があって助かるけど。必要以上に採取はしておく。どうせ無くなるなんて心配はしなくても良いんだから。どんどんと見つけて、採取をしていけば良いんだよ。取り尽くしても、また生えてくるんだし。そんな感じで採取をしていたら、罠を見つけた。群生地があるんだけど、そこを踏み抜くと、魔物が襲い掛かってくる。アースマッドだな。こいつらは自分の上に、群生地を作って誘い込み、パクリといく魔物である。簡単に言うと、とらばさみ? それの植物版だ。これも気が付けば簡単に倒せるんだけどな。気が付かないと大変な目にあうんだけど。


 気が付かなければ、だけどな。そんな簡単な擬態を見破れない訳がない。ある程度は知能があるんだろうけど、その程度では誤魔化されない。サクッと倒して、群生地になっている場所で採取をする。アースマッドは、蔓が良い感じに弓の弦に使えるんだよ。結構、弓使いとしては良い装備になるとは思うぞ。後は、こっちの溶解液は、皮鞣しに使える。ネガルドウルフの皮を鞣すのに使わせてもらうとするか。それなりに集めておかないといけないかな。取れる量は、マンイーターの溶解液よりも少ないし。探せば沢山居るだろう。


 そんな訳で、アースマッド狩りを行っていたんだけど、また微妙な群生地があるんだよな。でも、アースマッドは居ない。……となると、こいつか! トレントだ。こいつも土属性だ。木材が良い感じの杖になる。魔法使いが使いたがるな。木材も土属性を帯びていて、結構使い勝手が良いんだよ。また、魔法陣の材料にもなるし、結構使いどころがあるんだよな。


 でも、トレントが居たと言う事は、上位種であるエルダートレントも居る筈である。また広範囲で探さないといけないな。そんな訳で、慎重にかつ大胆に、探索を開始した。エルダートレントは、木材としても優秀なんだ。消費先は沢山ある。特に貴族が見栄で買いたがるのがエルダートレントの木材だ。柱とかに加工するらしい。普通に勿体ないので、魔法使いの杖に使った方が良いとは思うんだけどな。枝から葉っぱから、無駄にするところが無いくらいには、良い魔物だよ。沢山貰えると嬉しいな。エルダートレント探しだ。


 そんな訳で、探して探して、3体のエルダートレントを討伐する事に成功した。素材はその内町に行くときに持っていくつもりである。村では使わないだろうからな。無駄に高級木材を使ってもである。こういうのは貴族が買い漁るんだから、高く買ってもらえば良いんだよ。無駄にはしない。俺が使う訳ではないけどな。多分だけど、屋敷の改築の時とかに使われるんじゃないのか? 俺は必要ないかなとは思うけど。


 と言う事で、西側には、ダークスライム、ゴブリン、コボルト、マンイーター、アースマッド、トレント、エルダートレントの7種類が確認できた。まだいるかもしれないので、今後に期待である。冒険者が持ってくるだろうからな。それなりの需要があるような魔物が居てくれて助かるな。これで稼げないのは嘘だろう。稼ぎ放題じゃないか。……荷物持ちが居れば、って話になってくるんだろうけどな。荷物持ちが必須だよなあ。村には冒険者ギルドが無いんだしさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る