第3話店員ゲット

「何をしているのかと言われたら、お金を稼いでいるんだ。ここにはお金になる素材が沢山あるからね。庭の管理もしなきゃいけないし、今日中には片付けてしまわないと。……そっちは何しに来たのかな?」


「錬金術師さんがきたから見に来たの」


「そっか。俺が錬金術師のサンルーグだ。お嬢ちゃんの名前は?」


「あたしはエレナ」


「エレナちゃんか。……ここって子供も結構いるのか?」


「友達なら何人かいるよ?」


「そっか。それなら子供たちを呼んできてくれるかな? ちょっとお手伝いをして欲しい事があるんだ。大丈夫、村の中で出来ることだから。それに、無理にとは言わない。やりたい子供たちだけで良いから、集めてくれないか?」


「いいよ。何をすれば良いの?」


「それは連れて来てくれたら教えるよ」


 労働力はどれだけあったも良いからな。エレナちゃんが手伝ってくれるかどうかは微妙ではあるんだけど、村の子供たちに頼む分には問題ないとは思うんだ。何をやらせるのかって、村にある素材を集めて貰うんだ。保存瓶は渡す。それで素材を集めて貰う。それだけで良いんだ。勿論だが、対価は支払うつもり。お手伝いだからな。正規の価格で買い取る予定だ。それが出来れば、村人から素材が供給されるようになる。それは俺にとっては有難い事なんだ。


 錬金術店を運営していくには、素材が必要不可欠。素材が無ければ、何も出来ない。だから、冒険者に素材を取ってきてもらうか、他の錬金術師から買い取らないといけない。だが、それだけだと、どうしても店の経営が難しい。特に他の錬金術師から買い取る場合は、手数料とか、保存料とかが必要になってくるからな。割高で買わないといけないし、そもそも町まで行くのに、……半日もあれば十分走れるとは思うが、それくらいの時間は必要になってくる。それはそれで面倒だからな。


 出来るのであれば、村人から素材を供給してもらい、賃金を渡す。そうすれば、村人も儲かるし、俺も素材が手に入る。正に両者が得をする話なんだ。そんな事を村の人に話すのは難しい。仕事があるだろうからな。だが、子供たちなら別だ。暇をしているだろう。そんな子供たちに、遊び感覚で素材を採取してもらえば良いんだ。そうしたら、両親が何処でお金を手に入れたのかを聞くだろう。それでどんどんと村人に伝播してもらえば、助かるんだよな。


 まあ、間違えていても仕方がないとは思うけどな。素材を間違えることは、冒険者でもよくあることだ。それで査定をするのはこっちなんだから、気にしたら駄目だ。始めから間違えていると思って査定をしなければならない。こっちが村中の素材を探すよりも、子供たちに探してもらった方が、圧倒的に手間が省けるからな。


「連れてきたよ」


「おっと、えーっと、8人かよく集めてくれた。それじゃあちょっとした遊びに付き合ってもらおうかな。まずは、これを見てくれ。これは――」


 そんな感じで、素材の見た目を教えていった。ここには20種類以上の素材がある。だから、村中に同じような素材があるはずなんだ。まあ、流石に教えたのは3種類だけだけどな。闇属性のポーションに必要な素材だ。それがあれば、錬金術店を始めてからも使えるし、今後も納品されるのであれば、非常に助かる。だから、高級素材よりも、汎用的な素材を集めて貰う。保存瓶1個分集めて貰えば、銅貨30枚にはなるだろう。3000ケッタだ。結構な収入になるはずである。それを両親に見せれば、何処で貰ってきたんだという話になるだろう。そこで話題にしてもらえば、素材が定期的に供給されるはず。特に農家からは定期的に入ってくるはずだ。農家にとって、雑草は邪魔でしかないんだから。それがお金になるというのであれば、歓迎してくれると思うんだよな。


「解ったかな? 解らなかったとしても、また聞いてくれれば良いからな。じゃあ、頼んだよ。保存瓶がいっぱいになったら帰ってきてくれれば良いから。くれぐれも、同じ保存瓶に違う素材を入れない事。こっちが面倒になるからね」


「「「「「はーい」」」」」


 よろしい返事だ。これで子供たちが遊び半分で素材を入手できる環境が整った。こういうのって、子供は結構好きだからな。俺も前世で心当たりがある。変な草を集めて、薬を作ったりしてたっけな。そんな感じだから、こっちの子供たちもそんな感じだとは思うんだよ。特に、こんな村だ。娯楽なんて殆どないだろう。こっちが供給してやれば、なんだかんだと役に立てるとは思うんだよな。遊び感覚で良いんだ。それで十分だから。


 そんな訳で、どんどんと貴重な素材を回収していった。裏庭に、金貨が転がっている状態は、あまりよろしくない。闇属性の素材の宝庫だ。結構な貴重品もあるし、高級素材なんかも平然と生えている。闇属性が強い土地だと聞いていたが、ここまでだとはな。この分なら、森に入れば、もっとえげつない量の素材があるかもしれない。冒険者にとって、宝の山だろう。……まあ、運搬には時間がかかるのかもしれないが。今までは町にいかないと換金できなかっただろうからな。それはそれは面倒だっただろう。


 これからは違うけどな。俺が換金してしまう。村で完結できるようになるんだ。その方が実入りは良いだろうし、羽振りも良くなるはずだ。冒険者が儲かれば、村も儲かるんだ。そんな好循環を作っていかないといけない。俺だけが儲かる様にというのは、あまりよろしくないんだよな。その辺はちゃんを考えないといけない事なんだよ。


 そんな訳で、裏庭の掃除を行っていった。金額にすると、金貨10枚分くらいの素材が転がっていた事になる。そこそこ大きな庭だからな。ここで昔も素材を育てていたんだろう。これから俺も育てるんだけどな。まあ、高い素材というよりも、汎用的な素材を育てる方が先ではあるが。特に闇属性のポーションを作る素材を確保しないといけないだろうからな。ポーションは結構な数売れると思うし。多少の傷だからって、放置して良いものではないからな。傷が属性を帯びると、途端に面倒になるんだ。だから、ポーションで治すことは必須である。後で治療しようとすれば、費用が100倍くらいに膨れ上がるからな。


 特にここは闇属性が強い土地なんだ。闇属性の強い土地では、傷口から、闇属性の魔力が入り込み、徐々に傷口から黒ずんでいく。まあ、悪いものではないんだけど、色が真っ黒になるからな。闇属性は悪さはしないからまだいいんだけど。火属性とかは、火傷みたいな痣になって、痒みが止まらないって状態になるからな。最終的には全身がかさぶただらけになる。だから、ちょっとした傷でも、ポーションを飲んでおくことに限るんだよ。


 さて、裏庭の掃除は出来た。後は森の中を見て回って、どんな魔物が住んでいるのかとか、どんな素材が取れるのかとか、その辺の調査をしないといけない。大量に高級素材があるとは思う。そんな場所なんだし、冒険者にとっても稼げる場所だとは思うんだよな。……それにしては、もうちょっと冒険者の数が増えていても良いとは思うんだけど。冒険者も稼げないって言っていたしな。何でこれで稼げないのかが不思議でならないんだけど。その辺にお金が落ちている様な状態なんだけどな。


「エルフのお兄ちゃん。皆で集めてきたよ」


「おお? おお! 結構頑張ってくれたんだな。……ちゃんと森には入らなかったよな?」


「それは勿論。親からも言われているし」


「よろしい。それじゃあ、皆はこれを飲んでくれ」


「これは何?」


「これはポーションだ。怪我を放置していたら絶対に駄目だからな。この作業が終わったら、ポーションを飲む。それが当たり前の事なんだ」


「あれ? ポーションって高いんじゃなかったっけ? ガレリアの店で売ってるよな?」


「売ってるよ。確か1000ケッタくらいしたと思う」


「たっか! そんなの飲んで良いのかよ?」


「雑貨屋で買うと、どうしても高くなるからね。輸送費が馬鹿にならないんだよ。でも、錬金術師から買うと、200ケッタで良いんだよ。今度からは安く手に入るよ」


「でもそれじゃあ、ガレリアの所のポーションは売れなくなるんじゃないか?」


「それは困るよ! 何とかならないの?」


「それは大丈夫。ポーションとは別の物を仕入れるだけだから。雑貨屋さんは仕入れるものが変わるだけだよ。まあ、そもそもポーションで利益が出るかどうかって言われると、微妙だからね。所詮はポーションだし」


 雑貨屋の娘さんも居るのか。まあ、そりゃそうか。子供は何処にでも居るよな。でも、雑貨屋のラインナップは変わるはずだ。錬金術店由来のものが無くなるだろう事は解り切っている。その辺は仕方がないとは思うし、寧ろ、割れやすいガラス製の物を仕入れなくても良い分だけ、得をしているとは思うんだけどな。割れたら1ケッタにもならないんだし。仕入れの分だけ赤字になるだろうからな。その事を考えれば、錬金術師関連の商品を扱わなくても良いだけ、面倒が少なくなるとは思うんだが。


「それじゃあ、お店の方に来てくれるかな? ほらほら、皆こっちに来てね」


「「「「「はーい」」」」」


 そんな訳で、皆が取ってきてくれた物を、査定する。3種類だからな。そこまで難しくはないはず。それでも丁寧に査定を行う。間違っている可能性もあるし、それでは渡す金額も変わってくるからな。……万が一、高級素材が混ざっていたら、流石にその分だけ金額を上乗せしないといけないからな。


「……うん。問題ないかな。皆間違えずによく採取できたね」


「それはエレナのお陰だぜ! 全部見分けてくれるからな!」


「うん? エレナちゃんはそう言う事が得意なのかな?」


「うん。あたしのユニークスキルは観察だから。そういうのは得意なんだ」


「観察……。観察かあ」


 これは、交渉次第では有りなんじゃないか? どうしても、錬金術店を1人で回すのには限界がある。素材の買取や、ポーションの販売なんかは、店員が居た方が助かる。その点、ユニークスキルが観察であれば、1度見た事のある素材なら、見分けることが可能なんだろう。これは、思った以上に掘り出し物かもしれないぞ。


「エレナちゃんは、今何歳かな?」


「14歳だけど……」


「14歳か……。なら、法的にも問題無いか。12歳から働いても良い事になっているんだし。エレナちゃんは、このまま錬金術店で働いてくれないかな? ユニークスキルの観察は、かなりの役に立つだろうし、俺としても、このまま働いてくれると助かるんだけど」


「おお! 良かったじゃんエレナ。仕事が決まるって事は良いことだって、親も言ってたからさ」


「そうよね。村で働けるなら良いんじゃいかしら?」


「えっと、一応はお父さんとお母さんに確認したいんだけど……」


「それなら俺もお願いしに行くから。両親の仕事は何かな?」


「農家」


「農家か。まあ、何とかなるだろう。継がないといけないって事は無いんだよね?」


「うん。継ぐのはお兄ちゃんが継ぐから」


「なら、早い内に説明をした方が良いな。今日これから話をしに行ってもいいか?」


「良いと思うよ」


「それなら早い内に行こうか。おっと、その前に、お手伝いをしてくれたご褒美をあげないとね」


 そう言って、8人には、1人銅貨20枚渡した。これが査定の金額だ。こうやってお小遣いを貯めるんだぞという経験になる。採取の冒険者としてもやっていけるとは思うんだよな。……まあ、採取の冒険者なら、1日に銀貨1枚は稼げないと、宿代とかで赤字になるんだけどな。実家住みで、まだまだ子供なら、これくらいの金額が稼げれば十分だろう。


「うお! マジで!? お金が貰えるのかよ!」


「お小遣いが増えるぜ!」


「冒険者になるには、このくらい出来て当然だからね。冒険者になりたいって言うなら、採取は絶対に覚えないといけない。討伐だけで食っていくには、厳しい世界だ。採取はお金になるんだよ。それを覚えておいてもらえば十分だ。今後も今日の素材があったら、買い取るからね。保存瓶は錬金術店で売っているから、遊びながら採取をしてくれると助かる。お小遣いが増えるんだ。良い事だろう? それに、冒険者を目指しているなら、武器は絶対に必要だからね。今からお金を貯めておいても損にはならないから」


「俺! 俺は冒険者になるんだ! これで良い剣が買えるかな?」


「良い剣が欲しいなら、もっと頑張らないといけないかな。お金は沢山ある方が良いからね。お金の稼ぎ方は教えたんだから、頑張ってくれると助かるかな」


 お金の稼ぎ方は教えた。後は努力で何とかなる。……観察持ちを引き抜いてしまったから、間違えることもあるだろう。だが、そもそもユニークスキルで楽が出来るなんて許されないからな? 普通の冒険者は、無限にある素材の見た目を覚えるんだ。錬金術師でも同じだけどな。無数の素材を覚えて、錬金術で使わなければならない。5年間でどれくらいの素材を詰め込んだのか。学校では習わない素材もあることにはある。それは師匠に教えて貰ったけどな。師匠は凄い出鱈目な人だから。色んな素材を見せて貰ったな。


「それと、エレナちゃんは今から家に行くからね。ご両親とも話をしないといけないし」


「うん。でも、大丈夫だとは思うよ? あたしも町に行って働くことを考えていたけど、村に居られるようになるんだから、良いんじゃないかな?」


「まあ、その辺はご両親に話をしてみてからだよ。駄目だって言われたら、駄目だからね」


 そんな訳で、エレナちゃんのご両親とご対面である。農家をやっているとのこと。……多分だけど、エレナちゃんもそうだし、他の子供たちも同じだったから、黒墨の痣とかがいっぱいあるんだろうな。闇属性の強い土地で、ポーションも使わないで農業をやっていたら、傷だらけにはなると思うし。そんな予想を立てていたんだけど、当たった。やっぱりポーションは使ってないよな。


「そういう訳でして、エレナちゃんのユニークスキルである、観察が役に立つんです。この村の錬金術店で働く許可が欲しいんです。お給料は、それなりに支払われます。錬金術店の店員である、普通の給料が支払われます。最初期は月に銀貨10枚になるんです。何年かすると、昇給するんですけど、とりあえずは、銀貨10枚になりますね」


「是非にともお願いします! これでエレナと離れなくて済む!」


「もう、お父さんったら。でも良いの? この家はお兄ちゃんが住むんでしょ?」


「まだ暫くは大丈夫だよ。エレナが出て行くことは無いって」


「そうなの? それなら良いんだけど」


 そんなこんながありつつも、エレナちゃんが錬金術店で働くことの許可は貰えた。幸先がいいぞ。店員問題は絶対に解決しなければならない問題だったからな。観察持ちが店員になってくれるだけでも有難い。運が味方しているとしか思わないな。これで俺がわざわざ店番をしなくても良くなる。ポーションを作っておけば、それなりの売り上げが伸ばせるとは思う。非常に良い事だ。エレナちゃんが良いなら、ずっと働いてくれると助かるんだけどな。錬金術店の給料は、国で決まっているからな。これ以上は出せないんだけど。

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