友情コンパイル

白川津 中々

◾️

 指名手配中の友人が家にやってきた。


「いやまじ匿ってくれ」


 そう言いながらドカドカと上がり込んでくるものだから取り敢えずビールとベーコンを出してやると「ありがてぇありがてぇ」と泣きながら貪る貪る。さすがに笑えてきて、「おいおい鬼人のギンかよ」とユーモアを入れてやるも無反応。ひたすら飲んで食ってばかりであるから、逃亡生活も大変なんだなぁと同情を禁じ得なかった。


「なぁ、お前さぁ。本当に上司殺したの?」


 一段落ついたようなのでそう聞くと、友人はこくりと頷き煙草に火をつける。


「殺した」


 あ、殺したんだ。

 俺はまったく素直にそう感じた。


「なんでまた」


「半年前から着手してたプロジェクトがよぉ。いきなり仕様変更になったんだよ」


「……それで殺したの? 上司悪くなくない?」


「ヒアリング内容ミスってたうえ、全責任こっちに押し付けてきたとしても?」


「あー……」


 答えに窮す。確かにそれは殺したくもなる。


「しかし、いつまでも逃げれんだろ。俺だって庇いきれないぞ」


「安心してくれ。このコードさえ書いたら自首するよ。それまで、ここにいさせてほしい」


「なんのコード?」


「さっき話したプロジェクトのプログラムだよ。逃げながらローンチできるよう進めてた。あと30分もあれば終わる」


「作り直したの?」


「そりゃ……仕事だから……ただ、テストもしてないから動くかどうかは分からん」


「……鳥居建てようか?」


「頼む」


 ガムテとボールペンにてプログラム動作祈願の鳥居を建築。あとは神頼みである。取り敢えず俺はビールを開けて外の様子を見ると、警察が数人。こいつ見つかってんじゃんと溜息。ま、最悪二、三人ぶっ殺してやるかと包丁を装備する。


「人、刺した事ないんだよなぁ」


「LANケーブルと同じだろ」


「今の時代、有線環境で作業した事ない奴も普通にいそうだな」


「確かに」


 笑い合う中、階段を駆け上りドアを叩く音が響いた。


「警察だ! ドアをあけろ!」


 さぁ、やるか。ITバブルを生き抜いたエンジニアの絆と力を見せてやる。

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友情コンパイル 白川津 中々 @taka1212384

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