第7話 ユミル自殺未遂,サチエ女中になる
妖ヒトデ城の検問のところで,星影と星羽の助けを受けて,水香とビルカは身分証を手に入れた。
ー 水香の身分証 ー
名前:水香
年齢:12歳
住所:奴隷棟405号
種族:ヒト族
気力:基礎
泡力:白色レベル
備考:大陸からの召喚で,千草姫の管理下に属する
ー ビルカの身分証 ー
名前:ビルカ
年齢:15歳
住所:奴隷棟405号
種族:ヒト族
気力:初級
泡力:赤色レベル
備考:妖ナマコ族族長の義理の娘。大陸からの召喚で,千草姫の管理下に属する
・・・
今回の大陸からの召喚で,ビルカだけでなく,水香も召喚されたことにした。あながちウソではない。
水香は,自分の身分証を星影に見せて聞いた。
水香「星影さん。この身分証で,職業紹介所とかで,仕事を探すことは出来ますか?」
星影は,ちょっと溜息をついてから返事した。
星影「分かりません。受付の対応が良ければ,職業紹介所で新しい身分証を発行してくれるかもしれません。でも,『ヒト族』という身分である以上,簡単に仕事はみつからないでしょう。身分証を提示しない仕事となると,,,」
水香「となると?」
星影「貧民街の奥まったところに行けば,それらしき女性がたくさんいますよ。そこまで云えばわかるでしょう」
水香「・・・」
水香は,溜息をついてから云った。
水香「では,わたしはここからひとりで行動します。大陸から召喚したのは,ビルカひとりだけ。それに,母乳を出せるのはビルカであって,ユズハではないこと,この秘密は守ってくだいね。折りをみて,その秘密を千草姫に高値で買ってもらいので」
星影「女王さま。了解しました。それで,女王さまとの連絡手段はどうしたらいいのですか?」
水香「頭の中で強く念じれば,大丈夫ですよ」
水香はユズハに言った。
水香「ユズハ。しばらくは魃鬼のところで,ビルカと一緒に行動してちょうだい。それと,泡力中等学院の入学資格がもらえるのだから,しっかり勉強してね。ビルカも同じく勉強してね」
ユズハ「はい,女王さま。なんか,わたし,ちょっと記憶力がよくなった気がします。はい,頑張ります!」
ビルカ「女王さま~ 了解で~す。でも,伝承戦闘服が戦い不足だって言っていま~す」
水香「この海底王国,あらこちらで神人が潜んでいるはずよ。あの変な『クロス剣意』の対策,考えておいてね~」
ビルカ「は~い」
ビルカは,新しい環境に興味津々で,返事も元気があった。
水香「じゃあね~」
水香は彼らと別れて,ひとりでこの都市をぶらついた。道行く人に,仕事を紹介してくれる場所を聞いた。ひとりは,水香の娼館街を紹介してくれて,別のひとりは職業紹介所を紹介してくれた。
今日のところは,どこかの旅館に泊まることにした。明日,ダメ元で,職業紹介所に行くことにした。
・・・
翌朝,水香は職業紹介所に来た。
ー 職業紹介所 ー
そこの受付嬢に聞いた。
水香「ここで仕事を紹介しれくれるって聞いたんですけど?」
受付嬢「はい。身分証を提示してください」
水香は,『ヒト族』と記載されている身分証を提示した。
水香「え? ヒト族? これって,,,」
受付嬢は,その身分証を突っ返した。
受付嬢「残念ですが,ヒト族の方に紹介できる仕事はありません!」
水香「そうですか,,,では,わたしのようなヒトはどこで仕事が出来ますか?」
受付嬢「娼館街でも,うちの身分証が必要よ。貧民街でもぶらついたら?」
受付嬢はそう言って,プイとそっぽを向いた。彼女がそんな態度をとったのも,水香が若くて超がつくほど美人だからだ。どうしても嫉妬してしまう! こんな小女,さっさと男どもに犯されてしまえ! 彼女は心の中でそう叫んだ。
超がつくほどの美人は,ほかの女性にとっては敵だ。水香は久しぶりにそれを感じた。
水香は挫折してしまった。でも,充分に予想されたことだ。では,アドバイスに従って,貧民街に行くしかない。
ー 貧民街 ー
貧民街に来た水香は,一番貧相な土蔵作りの町並みに来た。その奥まった場所に行くと,それらしき女性がところどころで立っていた。管理する女将もいないようだ。なるほど,身分証などまったく必要がないようだ。
水香は適当な場所を選んで,ほかの女性たちと同じように胸元を広く開けて,ぽけーっと待つことにした。もっともBカップしかないので,胸元を開けても注意を引くのは困難だ。だが,今の水香は,若くてめっちゃ美人だ。若さと美貌,,,巨乳以上に男性を引きつけるのに充分だろう。
しばらくすると,男たちではなく,女性たちがやって来た。
女性A「ちょっと,あんた! ここで何しているのよ!」
女性B「そうよ。勝手に場所を荒らさないでよ!」
女性C「若くて美人だからって,無断で商売しないでよ!」
水香「・・・」
水香は,どこの世界でも,簡単に仕事できないと思った。
水香「じゃあ,どうすればいいの?」
女性A「ちょっと顔貸しな!」
彼女たちは,水香を連れて,貧民街の外れに来た。この辺りは無違法地帯のようだ。
そこに,2人ほどのむくつけき男たちが木陰の後ろから出現した。ボス風の男が水香に言った。
ボス「お前,いい度胸しているな。若くて美人だからって,勝手に商売できると思うな!」
水香は,ちょっと恐怖を感じた振りをした。
水香「あの,,,この辺では,自由に商売できないのですか?」
ボス「そんなの当たり前だろ! まあいい。お前に2つの選択肢を与えてやる。1つ目は,今すぐにこの妖ヒトデ城から出て行けくこと。もう一つは,おれたちの奴隷となることだ。どうだ? 良心的な選択肢っだろう?」
水香「・・・」
水香は周囲を見渡した。どうやら,この場には,女性3名と2名の男たちしかいない。
水香は悪霊曼荼羅界のセイリスに念話した。
水香『霊力を使わないで,ヒトからエネルギーを吸収する方法はないの?』
セイリス『そうですね,,,一番,簡単なのは,相手の血を吸うことでしょうか?』
水香『それって,バンパイアになれってこと?』
セイリス『それ以外では,相手の筋肉や内臓を喰らい尽くすことでしょうか?』
水香『なんか,恰好悪いし,血で汚れるわ。もっといい方法ないの?』
セイリス『・・・,あの,,,お奨めしないんですけど,,,』
水香『いいから,紹介して!』
セイリス『では,紹介します。天撃で相手を消し炭にするんです。その後,剣で真っ二つにして,内臓を体に取り込めばいいんです。効率は悪いですが,30%ほどの効率で気力と妖力を取り込めます』
水香『・・・』
結局,いろいろ考えて,血を効率よく吸収する方法を考えついた。
水香は,女性3名の傍に来た。
水香「あなたたち,よかったわね。わたしの餌になるのよ」
女性A「え?」
女性B「何言っているの?」
女性C「頭,おかしいんじゃないの?」
彼女たちがそう言ったのが最後の言葉だった。水香の両方の10本の指が急に伸びて,彼女たちの胸を突き刺した。しかも,その指はストロー状になって,彼女の鮮血をどんどんと吸収していった。その吸収する速度は,さほど速いものではなかった。というのも,まだ,指をストロー状にして吸収する動作に慣れていなかった。
そこで,魂力を展開して,新しく2本の腕を生成した。水香の胴体から4本の腕が生えた形態になった。これで,いつでも術の展開を出来る状態にした。食事中に攻撃されるのを予防する措置だ。
水香のその作業を驚愕の眼で見ていたものたちがいた。先ほどのむくつけき男たちだ。だが,立ったまま驚愕してしまった。それでも,声を発しては殺されると思い,その場から,出来るだけ声を立てずに去っていった。
水香の食事に30分程度かかった。彼女たちの体は干からびた状態になった。ミイラとまではいかないが,吸われたのは血だけではなく,体液や半粘液状のものまで吸われてしまった。つまり,ブヨブヨ状態の内臓諸器官すべてが吸われてしまった。
その作業の間,悪霊曼荼羅界のセイリスと会話した。
水香『セイリス,どう? かなりエネルギーの補給になりそう?』
セイリス『そうですね。気力はあまり期待できませんが,妖力の補強にはなりそうです。でも,女性の霊魂は大変貴重だったので,その点が大いに助かりました。彼女らの霊魂は,悪霊たちにお願いして,強制的に悪霊曼荼羅界に回収しました。また,こんな機会があったらお願いしますね?』
水香『分かったわ。今度は男たちよりも女性を『餌』にするわね』
セイリス『はい,彼女らにとっても新しい世界を経験するいい機会になると思いますよ』
食事が終わったところで,水香はふと2名の男連中のことを思いだした。周囲を見ていると,もう周囲には影も形もなかった。
水香『逃げたか,,,まあ,当然かな? セイリス,どうしたらいいと思う?』
セイリス『女王さま。わたしどもは女王さまの命に従う者であって,相談相手ではありません。その点を間違わないでください』
水香『・・・』
こんな海洋族などどうでもいい。もし捕まりそうなら,妖力を使って,少し顔の形を変えて逃げればいい。それでもダメなら,魃鬼から自分の肉体を返してもらって,海底都市を一瞬で破壊するだけのこと。そう思い直して,女性の遺体から,貴重品と身分証を奪った。身分証を持っている女性はひとりだけだった。その身分証を見ると,妖ヤドカリ族の『サチエ』15歳と記載されていた。
水香はセイリスにサチエの霊魂に,彼女の家庭事情を至急聞くように命じた。しばらくして,セイリスから連絡が入った。
セイリス『サチエは年齢が15歳で,12歳になる弟・ユミルがいます。すごく優秀で,泡力下等学院に通っていて,飛び級で進級して,今度,泡力中等学院を受験するそうです。自慢の弟のようです』
水香『へぇ,,,そうなんだ』
今の水香は,不慣れな気力の肉体を使っている。自分本来の肉体なら,いくらでも自由に変身できる,だが,今のこの体では,妖力で羽を付加することや,妖力で巨乳にすることは出来るが,精密な顔の形まで変えることは無理だ。
水香『セイリス,『サチエ』の顔に似せるにはどうしたらいいと思う? おっぱいも同じようにしたいし,,,』
『サチエ』は娼婦稼業をするだけあって,胸がFカップほどもあった。だが,水香の胸はそのままBカップのままだ。まだ妖力が充分にないので,これ以上の変身はしないほうがいい。
セイリス『女王さま。祭司のアンフィさまは,解析課に配属しましたが,彼から,本物の肉体を水香さまに移植するノウハウがあるとのことです』
水香『あっ,そういえば,生身の肉体を使えば,触られた感覚も感じることができるので,性的快楽を味わえるって言われたわね』
水香は,3名の女性の死体を見た。皆,巨乳だった。Fカップ,Gカップ,Iカップのようだ。血が抜かれているが,もともとが脂肪なので,さほど萎んではいない。
水香『では,手順を教えてちょうだい』
セイリス『まず,顔ですが,顔の皮膚と肉をそのまま上手に剥ぎ取ります。乳房は,手刀で上手に胸の皮膚ごと切除し,それを一旦,水香さまの体内に収納します。女王さまの肉体と切除した肉体を,しばらく共存させてください。丸1日ほど時間をかければ,気力の肉体と生身の組織や皮膚が馴染むようになります。それから,女王さまの肉体に適用してください』
水香『そんなことでいいの? でも,体内にそんなスペースないわよ』
セイリス『アンフィさまから,亜空間収納陣盤をもらったと思います。パスワードは,XXYYです。それを使うんです。あっ,それと,女性の腹部内の子宮と陰部の器官一式も回収するようにとの指示です』
水香『ええ~? 面倒くさい』
でも,水香は右手を鋭利な手刀に変えて,3名の女性の体から,顔面の皮膚,乳房,子宮,さらに陰部器官などを切除して,亜空間収納陣盤の中に収納した。かつ,その亜空間の部屋には,肉体を生成する気力で満たした。
水香『この乳房,さらに巨乳にすることは出来ないの?』
セイリス『アンフィさまの説明では,神人の回復術によって,細胞分裂を促すことができるって聞いています。『仙女の涙』程度の回復術でいいそうです。その術式をイメージ念話で女王さまに送りますね』
水香『そうか,,,この体では,それさえも使えないのね,,,ほんと不便だごと』
セイリス『女王さま。徐々にしていけばいいのですよ。慌てないでください』
水香『りょうか~い』
水香は,『仙女の涙』の術式を送ってもらった。
水香『じゃあ,暇々に巨乳にしていくね~』
さて,水香は,この3名の死体をどうようか悩んだ。そのまま放置するか遺体をどうにかして処分するか,,,
水香のこの肉体では,何もすることが出来ない。水香は,そのまま放置することにした。どうせ,身元の照会などまずできないはずだ。そう思って,水香は,そのまま放置して,旅館に戻った。
・・・
翌日,水香は『サチエ』のFカップの乳房に集中して『天女の涙』を展開した。何度か『天女の涙』を展開して,FカップからIカップ(両方で4ℓ )の大きさにまで大きくした。
その後,顔面に『サチエ』の皮膚を貼り付けて,さらに,サチエの子宮と陰部の器官も自分の体に装着した。水香は,ほぼ完璧なサチエに変身した。性的な刺激を感じる部分はすべて本物のサチエだ。
水香「よし。これで,サチエとしてやっていけるかな?」
水香は,なんか本物の悪辣な妖怪になった気分になった。まあ,本当に悪辣なのだが,,,
水香は『サチエ』の身分証に記載の住所に行くことにした。
15歳の『サチエ』の姿を模した水香は,何度か通行人に道を聞いて,なんとかサチエの家に着いた。そこも貧民街の長屋だった。この辺一帯は,妖ヤドカリ族たちが住んでいる。彼らは定住しない種族だが,でも,大きな海底都市は5ヶ所しかない。自ずと定住する場所が決まってしまう。
ガラガラ!
水香は大きな音がする引き戸を引いた。こんなボロ屋に住むのは慣れている。かえって落ち着くというものだ。
弟のユミルらしき少年が居た。ユミルに間違いないだろう。彼は背を向けていた。
水香は,いつもなら初対面の時は,相手のオーラを診る。相手の強さを測るためだ。だが,今は,ユミルの姉の身分だ。オーラを診る眼に変える必要はない。
水香は姉を演じて,背を向けた弟らしき人物に声をかけた。
水香「お姉ちゃん,戻ったわよ」
だが,その声に返事がなかった。水香は,ユミルの声質が違うのかとも思ったが,声質など風邪を引いたとでもいえばどうにでもなる。
ユミルは振り向いた。彼の顔は涙で濡れていた。
ユミル「すべてお姉ちゃんが悪いんだ!」
ユミルはそう叫んで,手に匕首を持って,一直線に水香に襲いかかった。
ドスーーー!
その短剣は,水香の腹部を深く刺した。昨日,吸収した血と体液の混じった赤い血がそこから少量流れ出した。
その行為は,水香にはまったく予想できず,無抵抗に刺されてしまった。刺した当人も,自分が行った行為に恐れたのか,匕首から手を離して数歩引き下がった。
水香「え? どうして?」
水香は,一瞬,頭が混乱した。この場をどうすればいいのか? 反撃してユミルを殺すか? それとも,,,考えがまとまらずに,とにかく止血を行った。まず,匕首を抜いた。止血といっても,この体のベースは気力だ。陣盤の濃獣石のパワーを借りて,刺された部分を修復した。
ユミルは気が動転したが,でも,せめて自分がどうしてこんな行動に出たのかを簡単に説明することにした。せめてもの姉への弔いだ。殺す行為をして弔いでもあるまいに,でも,ユミルにはそれしか出来なかった。
ユミル「すべてお姉ちゃんが悪いんだ! ボク,,,すーーっとお姉ちゃんのこと隠していたのに,とうとうバレてしまって,,,いじめれて,,,,でも,決定的だったのは,自分の好きなリリカさんにまでバカにされて,もう顔も見たくないってまで言われて,リリカさんの取り巻き連中から袋だたきにされてしまって,,,」
ユミルは,やっと思いの丈を話すと,少し気持ちを落ち着かせたのか,水香の体の状況をマジマジと見た。出血多量で死んでもいいはずなのに,未だに倒れずに立っている。出血はすぐに止まっていた。
それに,水香は,姉とはところどころで違っていた。まず,胸の大きさが違う。職業がら巨乳に見せるのは当然だが,でも,そこまでの大きさではなかったはず。髪型も違っている。しかも,髪の色が少し違う。顔だって,確かに姉に似ているが,少し違うようだ。首筋にあるホクロがないこと,眼のまぶたが完全な二重になっていて,あたかも姉が整形手術をしたような顔だった。
ここにきて,ユミルは目の前の女性が姉ではないと断定した。
ユミルは,徐々に恐怖心が増してきた。殺人行為をしたという事実に加えて,刺した相手が,腹部を刺しても,まったく倒れる様子もないことに,恐怖心を何倍にも増加させた。
ユミルはさらに後ずさりした。
ユミル「あなた,,,あなたは,いったい誰ですか? 姉ではない! それに,そんな致命傷を受けて,倒れないなんて,,,」
その言葉を受けて,水香の取るべき態度が決まった。
水香「あなたに聞きます。あなたがユミルなのね?」
ユミル「そっ,そうだ。ユミルだ」
水香「あなたが殺したい姉は,もう死んだわ。わたしが殺してあげたの。あなたの行為は,姉への復讐行為として,今回の殺人行為は見逃してあげるわ。あっ,そうそう,姉に文句があるなら,直接,姉に文句をいいなさい。わたし,霊能力者なの。死んだ姉の霊魂と会話できるのよ」
ユミル「・・・」
殺したい姉が目の前の女性に殺された? その女性を殺そうとした行為が姉への復讐行為?? ユミルは,まったく理解が追いつかなかった。でも,徐々に平静を取り戻した。
ユミル「あなたの名前は?」
水香「この場だけは,水香と呼びなさい」
ユミル「分かった。じゃあ,水香さん。じゃあ,本当に姉と話しが出来るのか確認する。イヤな思い出だけど,両親が死んだ時のこと,姉に聞いてちょうだい」
しばらく間が空いた後,水香が返事した。
水香「1年ほど前のことだわ。強制労働の一環で,海底の『三ツ目サメ』を捕獲する任務についたの。もう少しで捕獲できるところだったけど,網が食い破られて,その勢いで両親が死んだわ。もっとも,その事実は,両親が加わったグループの班長から報告を受けたんだって」
この内容は,姉でないと知らないことだ。ユミルは完全に水香のことを信じた。
ユミル「分かった。水香さんの言葉を信じる」
ユミルは,何度か深呼吸をした。そして,気持ちを落ち着けて水香に言った。
ユミル「じゃあ,お姉ちゃんに伝えて。ボクがお姉ちゃんを殺そうとしたことは,後悔はしていない。でも,その行為が決して許されることはないことも知っている。だから,お姉ちゃん,すでに死んでしまったけど,一言謝らせてくれ。“本当にごめんさい"」
ユミルは,その場に跪いて五体投地を行った。
水香「ユミルの謝罪は,サチエにしっかりと伝えたわ。安心してちょうだい」
ユミル「水香さん。ありがとうございます」
ユミルは,これでもう思い残すことはない,,,いや,その実,めちゃくちゃあるのだが,でも,次にすべきことをしなくてはならない。
ユミルは,水香が捨てた匕首を拾って,自分の腹部に刺そうとした。
だが,水香はすでに自分の眼をオーラを診る眼に変えていた。ユミルの心の変化を知るためだ。自殺しようと決心した事も,事前に分かった。なんせ,すべてを諦めた灰色のオーラ一色に変化したからだ。
水香は,ユミルの動きよりも速く,彼の後頭部を強打して気絶させた。しばらく寝てもらおう。時間が経てば,絶望的な気持ちから,少しはいい方向に変化するかもしれない。
水香は,ユミルの体に悪霊26号を植え付けた。
・・・
数時間後に,ユミルが意識を取り戻した。
ユミル「え? あれ? ボク,,,自殺しようとして,,,」
水香「どう? 少し気持ちが楽になった? わたし,こう見えても,とっても強いのよ。どんな相手でも,決して負けないの。ユミルの本当に復讐したい相手は誰なの? お姉ちゃんじゃないでしょう? ユミルを虐めたやつ? それともユミルの好きだった小女なの?」
ユミル「・・・」
ユミルは起き上がって,台所から一杯の水を取ってぐいっと飲んだ。それから,水香の正面に座って,事の顛末を話した。
ユミル「お姉ちゃんが娼婦だってバレて,虐められたことはどうでもいいんだ。そんなことはいずれバレることだし,そんな境遇の子はボクだけじゃない。でも,,,片思いのリリカさんがそれを知ったんだ。リリカさんは,ボクを人気のないところに誘ったんだ。ボクはとっても嬉しかった。ボク,これでも,2階級も飛び級して,学院ではトップの成績だったんだ。だから,ぼくは女性たちにモテると思ってた。リリカさんだって,ボクに好意を寄せていると思ったんだ。
だけど,,,リリカさんは,その場で,自分の服を破って,「いやーー!」と叫んだ。そう,ボクにレイプされたように装った。その直後,付近で隠れていた取り巻き連中が現れてボコビコにされた。さらに,教師たちが来て,その場で退学処分にされてしまった。ボクの,泡力中等学院に推薦で入学するという夢が潰えた。ボクの人生が終わってしまったんだ」
水香は,なんとも次元の低い話だと思った。だけど,少年が学歴も無く生きていくのは小女よりも難しい。身を売ることが困難だからだ。
水香「ユミルは,いったい何をしたいの? 泡力中等学院に行きたいのは分かるけど,その後は? 将来はなんになりたいの?」
ユミル「・・・,そこまで考えていないけど,ボク,泡力に才能があるんだ。だから,中等学院に行って,いい成績を取って,王都にある高等学院にだって合格できると思う。そしたら,王宮の親衛隊や憲兵隊員にだってなれる」
水香「ふ~ん。なんとも小さい夢なのね。でも,今の状況でそれが可能なの?」
ユミル「その夢がすべて絶たれた。もう終わりだ」
ユミルはそう言ったものの,とても落ち着いていた。もう自殺するような気分ではなかった。すべてを水香に吐露したせいかもしれない。
水香「わたし,あなたのお姉さんを殺したの。だから,あなたに対して,贖罪の意味で,少しは助力してあげるわ。あなた,別人になって,新しい身分証を手に入れなさい。それで,中等学院を受験すればいいんじゃない?」
ユミル「でも,どうやって入手するのですか?」
水香「そうね,,,」
水香は,娼婦たちの護衛のような男たちのことを思い出した。もしかしたら,やつらなら,,,
水香「あなた,お姉さんたちの護衛をしている連中のこと,知っている?」
ユミル「え? あの源八郎さんたちですか? ときどき,夜が遅くなるとここまで見送ってくれますから,よく知っていますよ」
水香「じゃあ,彼らの家まで行きましょう」
ユミル「?」
ユミルは何のことか,分からなかったものの,水香を源八郎の家に案内した。彼らの家は,さほど遠くはなく,15分も歩くと着いた。同じようにボロ長屋だった。
水香「ユミル,ドアをノックして」
ユミル「はい,水香さま」
今のユミルにとって,水香の命令を忠実に実行するしかない。そうすることで,あの悪夢を少しでも忘れたい。
コンコン!
ユミル「ユミルです。サチエの弟,ユミルです。ドアを開けてくれませんか?」
しばらくして,微かにドアが開いて,その隙間から覗くようにして眼が見えた。
「ゆ,,,幽霊だーー!!」
その言葉と共にドアが再び閉まった。
水香は,部屋の中に人が居ることが判明したので,もう遠慮はいらない。腕を剣に変えて,その周囲を純剣気で覆った。通常の純剣気くらい,なんらパワーを消費しなくても繰り出せる。
シュー!シュー!シュー!ーー
ドアがあたかも紙で作られていて,紙をハサミで切り裂くように破壊された。
その後,腕を元の形に戻して部屋の中に入っていった。あのむつくけき男たちは源八郎,源九郞という名の兄弟だった。
源八郎は,サチエの姿をした小女が,サチエを殺したあの化け物だとすぐに分かった。ドアを紙に切り裂くことなど,どんな強者でも絶対に不可能だ! 奇跡の術だ!
源八郎と源九郞は,その場で土下座して,かつ,五体投地して床に頭をこすりつけた。
源八郎「あのことは絶対に口外しません! 海神さまに誓って,天地神明に誓って,あなたさまの奴隷になります! あの死体だって,絶対見つからないように処分しました。犯行がバレるようなことはありません! おれたち,絶対,役に立ちます! どんな命令にも従います!」
こう言うしかない! 命あってのものだねだ。
水香の背後にいたユミルは呆然としていた。水香のドアを切り裂く奇跡の術を見て,どう頑張っても泡力では実現不可能だと感じた。いったい,この水香という小女って,どんだけ化け物なのか?!
でも,その化け物が,姉を殺した贖罪で自分を助けてくれる,,,ユミルは,少し光明を見いだした。生きる希望を見いだした。
水香「そう? だったら殺すのは止めましょう。では,お前達は今からわたしの奴隷よ。お前達の身の安全は保証します。もし,お前達を虐めるやつが現れたら,わたしが虐めたやつを皆殺しにしてあげるわ。望みなら,この海洋族全員を殺してあげるわ」
源八郎「い,,いえ,そんな必要はありません。はい。それで,まず,わたしたちは何をすればいいのでしょうか? あの,,,事前に言っておきますけど,おれたち,,,あまりお金がないんで,お金のこと以外でお願いします」
水香「・・・」
水香「まあ,いいわ。今から,わたしはサチエと名乗ります。わたしのことはサチエと呼びなさい」
源八郎「はい!分かりました!」
水香「わたしの弟,ユミルは,先ほど,学院を退学させられました。そこで,ユミルに復讐する機会を与えたいのです。でも,今ではありません。まず,ユミルに新しい身分を与えます」
源八郎「え? それって,別人に偽装するってことですか?」
水香「そうよ。バレない方法でやってちょうだい」
源八郎「でも,顔が変わらない以上,無理ですよ」
水香はユミルを見た。
水香「ユミル,今からお前の顔を変えるわ。その結果,醜くなってもいい?」
ユミル「水香さま。そんな心配はいりませんよ。一度は,死のうと思ったんです。どんな醜い姿でも気にしません」
水香「分かったわ。ここでは人目につくわ。部屋の中に入って」
ユミル「はい」
ユミルは家の中に入った。源九郞が,毛布をドア代わりにして,ドアの部分を覆って,外から中を見えなくした。
水香「ユミル。眼を閉じて,歯をくいしばりなさい」
ユミル「はい!」
ユミルは言われた通りにした。水香は,自分の手の平を無数の小さなトゲ状にして,ユミルの額,頬,顎,耳の下,さらに鼻の周囲を傷つけていった。
ユミルの顔全体が血で覆われた。その後,回復術をかけた。
10分ほどが経過した。
あまり高度な回復術ではないが,それで充分だった。
水香「もういいわ。眼を開けていいわ。洗面所で顔を洗ってきなさい」
ユミルは言われたとおりにした。その後,自分の顔を鏡で見た。
ユミル「え? これが自分の顔? そこには,まったく別人の顔があった。醜くはないが,なんかアンバランスな感じがした」
源八郎や源九郞は,もうこれ以上,驚くような心の余裕はなかった。源八郎は,水香の機嫌を取ることに集中していた。
源八郎「はい! 今の顔なら,別人でいけます! ですが,,,言いにくいのですが,すくなくとも金貨5枚ほどは必要です。そこはなんとかからないでしょうか?」
水香は,殺した3人の小女たちが持っていた小銭を源八郎に渡した。金貨10枚ほどあった。
源八郎「これだけのお金があればなんとかなると思います。2週間ほど待ってください。本物の身分証を入手できるようにアレンジしますんで」
水香「そう? だったわいいわ。ユミルはサチエの家にしばらくいるから,なんかあったら来てね」
源八郎「え? サチエさまはどこにいるのですか?」
水香「わたし,お金がないのよ。それに,ユミルのためにも,娼婦の仕事はしたくないしね。となると,住み込みの女中くらいしか仕事がないかな? ともかく,わたしと連絡を取るなら,職業紹介所に聞けばいいわ。あっ,そうそう,わたし,1殺,金貨10枚で引き受けるから,暗殺の仕事があったら,すぐに連絡してちょうだい」
源八郎たち「・・・」
その後,水香とユミルは自分たちの家に戻った。その道すがら,ユミルは,新しい身分証が手に入った前提で,この後,どうするかを水香に語った。
ユミル「泡力中等学院に受験するには,泡力下等学院の成績証明書があることが条件なんですが,それがなくても,貴族たちの推薦で受験できます。それすらもなくても,特別枠として,泡力が中等レベル以上で,かつ,筆記試験で好成績が取れれば,「臨時・泡力下等学院証明証」が発行されるんです。でも,この筆記試験は,非常に難しく,かつ,出題範囲も広く,これまでこの方法で受験資格を取った者は,数えるほどしかいないと聞いています」
水香「なるほど。つまり,ユミル,あなたは,その方法で挑戦するわけね?」
ユミル「はい。気持ちの整理をつけて,明日から筆記試験に向けて,集中してこれまでの勉強の復習に当てたいと思います。泡力中等学院に入学して,姉を喜ばせるのが,わたしの望みでしたので」
ユミルは,これまで姉が自分のために,姉がどれだけの犠牲を払ってきたのかをマジマジと思い出した。自分がした愚かさに涙が流れてしまった。
泡力中等学院と聞いて,ビルカとユズハのことを思い出した。どうせなら一緒に勉強させたい。
水香「近々,ユミルのところに,ビルカまたはユズハと名乗る女性たちが訪問するわ。彼女たちは,わたしよりももっと大きな巨乳をしているわ。それが目印よ。もし,彼女たちが現れたら,彼女たちの希望を聞いてあげてほしいの」
ユミル「え?でも,ボク,,,なんの力もありませんよ」
水香「大丈夫よ。ユミルが下等学院ではトップレベルの優秀な生徒だったのでしょう。それがあるじゃないですか」
ユミル「え?そんなんでいいのですか?」
水香「そうよ。一緒に勉強するだけでいいのよ」
ユミル「え? 女性と一緒に?」
ユミルは,女性と一緒だなんて,,,果たして,集中して勉強できるだろうか?
・・・
翌日,水香は,Iカップのサチエの姿をして,かつサチエの身分証を持参して職業紹介所に向かった。
ー 職業紹介所 ー
相変わらず愛想の悪い受付嬢がいた。水香は身分証を示して受付嬢に聞いた。
水香「簡単にお金もうけできる仕事紹介してちょうだい」
受付嬢「・・・」
そんな仕事なんて,こんなところに募集が来るはずもない。
受付嬢は身分証と水香を見てから言った。
受付嬢「では,まず,ここで登録する必要があります。この書類に必要事項を記入してください」
水香「はいはい」
そこには,氏名,住所,性別,年齢,最終学歴,種族,泡力レベル,気力レベル,妖力レベル,得意能力,などを記す欄があった。
水香「わたし,字が書けません。代わりに書いてくれますか?」
受付嬢「・・・」
水香は,銀貨1枚を受付嬢に渡した。受付嬢はニコッとして,水香の代わりに記載していった。
「サチエ,妖ヒトデ城貧民街265番地,15歳,学歴なし,妖ヤドカリ族,泡力・白色レベル,気力・基礎レベル,妖力・基礎レベル,得意能力・特になし」
簡単な内容だった。その後,その場で写真を撮られて,その顔写真が載った登録証が即座に発行された。手数料として銀貨3枚を渡した。
水香「これで,楽してお金もうけができる仕事が出来るのですね?」
受付嬢「・・・」
受付嬢は,手元の募集帳を開いて,赤いラベルを貼ったページを開いた。そのページは,ブラック募集リストのページだった。見かけ,めっちゃ割りのいい募集なのだが,その実,大クレームになるというものだ。でも,楽して金儲けが出来るという条件なら,このページしかない。
受付嬢は,そのページを水香に見せた。
受付嬢「このページからは,条件的にサチエさんの希望に添うと思うわ。自分でひとつ選んでしょうだい」
水香「は~い!」
水香はペラペラとそのページを見た。真っ先に眼に入ったのは,『モデル募集』というものだった。どうやらヌードモデル募集のようだ。次のページを見ると,煉丹師の弟子募集で,学歴不問だが,女性で15歳まで,かつ,住み込みが条件という内容だった。さらに次のページを見ると,家庭教師募集というもので,やはり,学歴不問,女性で17歳まで,かつ,住み込みが条件というものだ。家庭教師なのに,なんで学歴不問なのか? 意味不明だ。
次のページ以降も,似たような内容が列んでいた。水香は,もう自分で選ぶのは諦めた。
水香「どれも似たり寄ったりね。貧民街から一番近い場所の仕事を選んでちょうだい」
その要望に答えようと,受付嬢がページをめくっていると,ひとりの女中風の女性がやってきて,受付嬢に言った。
女中「あの,,,この内容で募集をかけていただけませんか? これ,登録料です」
女中は,募集内容の書類と銀貨5枚を受付嬢に渡した。
受付嬢「あっ,はい。書類の内容は正確ですね。はい,では,これで募集をかけますね」
女中「はい,よろしくお願いします」
女中は,深々と頭を下げた。
受付嬢は,改めてその依頼内容を見た。女中の仕事全般(具体的には,赤ちゃんの世話,家庭教師,掃除,料理手伝いなど)で,女性で18歳まで。学歴不問で,住み込みが条件というものだ。仕事の内容はきつそうだが,日当が金貨1枚だ。これはかなりいい条件だ。
受付嬢は,この内容を水香に紹介することにした。
受付嬢「今し方,こちらの女性からの仕事で,女中の仕事があります。どうです? 日当も,とてもいいと思いますよ?」
水香「はい,じゃあ,それでお願いします」
水香は,特に迷うこともなく,その仕事を引き受けた。その後,この仕事をもってきた女中と一緒に彼女の屋敷に向かった。
1時間ほど歩いて目的地に着いた。そこは,城主の弟・バーザルの屋敷だった。
会議室に連れていかれて,水香はバーザルと面談をもった。その会議室には,ひとり娘のマリアン,14歳もいた。
水香が自己紹介をした後,バザールが娘のマリアンに言った。
バザール「おれは,サチエに異論はない。仕事の割り振りはお前がしろ」
マリアン「はい,お父様」
バザールはもう用がないと思い,その場から去った。それに,この場には,親衛隊員が3名ほど控えている。万一のことがあっても大丈夫だ。
マリアンは仕事の内容を水香に伝えた。
マリアン「サチエ,仕事内容を伝えます。主な仕事は,病弱な赤ちゃんの世話よ。でも,それだけではありません。世話の合間に,弟・メーデルの家庭教師をしてもらうわ」
水香「マリアンさま。承りました。でも,わたし,バカですから,家庭教師なんて出来ませんけど?」
マリアン「ホホホ,女中のあなたに頭脳労働は期待してませんわ。大丈夫よ。直接,家庭教師といっても,頭を使わなくていいのよ。そんなことより,今日のところは,赤ちゃんの世話に集中してくれればいいわ」
その後,水香は赤ちゃんのいる部屋に案内された。
マリアン「この赤ん坊は,病弱で今にも死にそうなの。もう医者にも見放されているの。でも,1日でも長く活かせてちょうだい。この赤ちゃんには恩義があるの」
水香はマリアンの言っている意味がよく分からなかった。だが,この赤ちゃんは,ほとんど筋肉という筋肉が無いようだ。まるでミイラの一歩手前だ。
なんとも可哀想な赤ちゃんだと思った。つまり,水香の仕事は,この赤ちゃんのターミナルケアだ。
水香「分かりました。ともかくも,わたしの最初の仕事は,この赤ちゃんを1日でも長生きさせることですね? 大丈夫ですよ。できるだけ活かしてあげます」
マリアン「生きながらえるなら,それに超したことはないわ。よろしくね」
水香「あの,この赤ちゃん,なんていう名前なんですか?」
マリアン「この子,名前がないのよ。朝,玄関に捨てられていたの。しばらく女中に世話させたんだけど,その女中,妊娠もしていないのに,急に母乳が出てしまって,赤ちゃんに飲ませたのよ。そしたら,その女中,てんかんの持病持ちだったんかけど,それが治ってしまったの。その後,別の女中に世話させたら,同じような現象が起きたの。
それで,母親にもこの子を世話させたの。というのも,母親は末期癌で余命いくばくもないって宣告されていたの。そしたら,なんと,母親も母乳が出て,かつ,末期癌がウソのように治ってしまったの」
水香は,そんなバカな話はないと思った。
マリアン「でも,それから間もなく,この赤ちゃんが,どんどん痩せていって,現在の状況になってしまったの。高名な医者に赤ちゃんを見てもらったけど,でも,原因は不明。病名も不明。ただ,このまま衰弱すると,余命1週間もないだろうって」
水香は,まじまじとその赤ちゃんのオーラも診た。どうやら妖海族ではないようだ。オーラの色からするに,まだ長生きするような気がする。でも,ドス黒いオーラが周囲を纏って,はっきりとは分からなかった。
マリアン「今日は,この赤ちゃんの世話だけでいいわ。明日から,時間が出来たら,わたしの部屋に来てちょうだい。別の仕事をあげるから」
水香「はい,お嬢さま」
水香の最初の仕事が決まった。寝泊まりもこの部屋でする。
水香は,この赤ちゃんに回復魔法をかけた。だが,まったく効果がなかった。どうやら,体自体は健康のようだ。
水香はセイリスに念話した。
水香『セイリス,この子を分析してちょうだい』
セイリス『この子,めっちゃどす黒いオーラをしてますよ。この調子では,数日で死んでしまいそうです』
水香『そんなの分かっているわ。でも,どすればいいの?』
セイリス『世の中には,浄化魔法という神に仕えた者だけが行使できる術があるようです。フフフ,,,神ではなく,悪魔に身を売った女王さまでは,絶対に出来ませんね』
水香は,もしセイリスが眼の前にいたら,ぶん殴ってやるところだ。
水香『いいから,わたしが出来ることを教えなさい』
セイリス『・・・』
セイリスは,解析課のアンフィやほかの連中と相談した。その結果,得られた答えは,,,
セイリス『女王さま。世の中には,伝説級の炎があるんです。紫色の『壊劫(えこう)の炎』と黒色の『業火の炎』です。女王さまは,もしかして,それらの炎を行使できるのではいですか?』
水香『そういえば,,,以前,紫色の『壊劫の炎』は使ったことがあるわ』
セイリス『でしたら,その種火でいいので,黒いオーラに近づけてみてください。もしかしたら,そのオーラを焼き払うことが出来るかもしれませんよ』
水香『ふ~ん,そうなの? りょうか~い』
水香は,壊劫の炎の種火を指先にイメージした。だが,,,指先に紫色の種火は出現しなかった。当然だ。霊力のない体だ。実現できるわけがない。
水香『こらー,セイリス! 実現できないわよー!』
セイリス『女王さま。オーラですよ,オーラ! 今の女王さまのオーラは,女王さまの霊魂に依存しているんです。自分のオーラの一部を,紫色の種火に変えるだけでいいんですよ。オーラにはオーラですよ』
セイリスは,そう言ったものの,その有効性には自信がなかった。
水香は,言われた通りにした。水香の得意なことは,言われたとこなら,それを忠実に実現できると思い込んでいることだ。オーラだって自在に変更することなど可能だ。霊魂の化け物といっていい。
オーラの壊劫の炎の種火が,どす黒いオーラに接触した。壊劫の炎がどす黒いオーラに着火した。
ゴゴゴーーー!
壊劫の炎がどす黒いオーラ全体に拡がった。
水香『え? オーラって,ほんとうに燃えるものなの??』
セイリスは,こんな可能性があるとは思っていたが,まさかこんなにうまく行くことは思っても見なかった。
セイリス『女王さま。わたしが言った通りでしょう? だから,もっともっと小女たちの霊魂を招いてくださいよ~ 若い小女の血ももっと必要ですよ~』
水香『・・・』
ドス黒いオーラが焼かれた。赤ちゃんのオーラが白色に変化してしてしまった。
水香『え?白色? どういうこと?』
セイリス『白色のオーラって,女王さまと銀次さまのオーラじゃないのですか。じゃあ,この赤ちゃん,銀次さまじゃないですか?』
水香『それはないわ。霊力がまったくないのよ。銀次じゃないわ。でも,なんで白色のオーラなの?』
セイリス『だって,こんな状況,初めてなので,まったく分かんないですよ~』
水香はがっかりした。まあ,壊劫の炎を使った影響なのは間違いない。炎の影響でオーラの色が消滅したようだ。
水香は,とにかく自分の乳首を赤ちゃんの口に含ませてみた。案の定,まったく吸う力さえもない。
水香『セイリス,この赤ちゃん,まったく乳首を吸ってくれないよ。どうしたらいい?』
セイリスは,最近,やたらと水香が命令してくるのに,ちょっと嫌気を感じした。たまには,ちょっと小馬鹿してあげよう。少しは,命令する回数が減るだろう。
セイリス『女王さま。もしかして,少々おつむが弱いんじゃありませんか? いくら本物の乳房でも,妊娠しないと母乳は出ないんですよ』
水香『ふん,そんなの知ってしるわよ! この赤ちゃん,吸う力があるかどうか,確認したかったのよ』
セイリス『女王さま。かなりおつむが弱いんじゃありませんか? そんなの指先を口に少し入れるだけでいいじゃないですか!』
水香『・・・』
水香は,むちゃくちゃ悔しかった。確かに云われてみればそうだ。でも,なんとか言い返したい。
水香『わたしは,リアリティを追求するのよ! 指先には爪もあるし,指先だって分かったら,吸わない可能性もあるでしょう?』
セイリス『女王さま。むちゃくちゃおつむが弱いんじゃありませんか? どの赤ちゃんに,そんな違いなど分かるものがいるんですか?!』
水香『・・・』
水香は,反論する代わりに,むちゃくちゃ難しい難題を出して,ギャフンと言わせてやる。
水香『セイリス,この赤ちゃんを簡単に元気にさせて,筋肉も付けさせて,母乳もたらふく飲ませるようにしてちょうだい。それも,1日以内でするのよ!』
この依頼内容なら,セイリスがどう段張っても絶対に実現不可能なはずだ。それに,そもそも外傷などではないのだから,回復術が使えない。その時にこそ,無能と蔑んでやる!!
セイリス『女王さま,なんで1日以内なんですか?』
水香『だって,そう何日も待っていられないわ。でも,難しいのは分かっているから,1日以内って言ったのよ』
水香は,そんなこと出来ないか,せめて1週間はほしいと言ってくると思った。だが,,,
セイリス『女王さまは,先天的パー子じゃありませんか? たとえもうすぐ死ぬようなミイラに近い赤ちゃんでも,母乳が吸えない赤ちゃんでも,普通の赤ちゃんのようにするなんて,5分もあれば出来るじゃないですか!』
水香『・・・』
水香は,コテンパンにされてしまった。
・・・
セイリスの説明によれば,この赤ちゃんを,傀儡人形の陣盤にみたてて,悪霊27号を棲まわせて,魂力の力で,赤ちゃんの肉体を補強させるというものだ。それなら,母乳を吸うことなど,超ウルトラ簡単だ。それどころか,歩いたり走ったり,会話したり,さらには,魂力による術さえも展開可能だ。
水香は打ちひしがれて,その場で跪いた。自分がバカなのは知っている。だが,身内のセイリスにまでバカにされるとは,,,
でも,どうして急にセイリスは,バカにするような態度に出たのか? たぶん,悪霊曼荼羅界でも,いろいろとストレスがあるのかもしれない。
ともかくも悪霊27号が,その赤ちゃん,名前がないので,水香は,適当に付けることにした。『銀次』にちょっと似ているし,海底都市にいることこから,『カイジ(海次)』と名前を付けて呼ぶことにした。そのカイジに,まずは女性の霊魂による悪霊27号を棲まわせた。
悪霊27号は,事前に大気から魂力を生成する陣法を教えられていたので,カイジの胸の部分にその陣法を植え付けて,カイジのミイラのような四肢や体全体に,魂力による筋肉で補強していった。
実は,その女性の霊魂は,水香が貧民街の近くで血を吸収して殺した女性のひとりだった。海洋族のことがある程度分かっているのでちょうどいい。それに,わずか1日や2日しか経過していなくても,悪霊曼荼羅界では,すでに1週間や2週間が経過している。最低限の悪霊としての学習ができている。
カイジは,簡単に言うと,母乳の飲むためだけのロボットにされた。しかも,まだ,意識が戻らないので,他人によって動かされるロボットだ。
その後,水香は他の女中に聞いて,粉ミルクと哺乳瓶を確保して,やっとカイジにミルクを与えることができた。
セイリスにバカにされたとはいえ,これで,なんとかカイジにミルクを与えることに成功した。
水香は悪霊27号にひとつだけ条件を付けた。魂力で生成した補助肉体は,無色透明にせよというものだ。もともと魂力は肉眼で見えないものだ。それを見えるようにするには,悪霊として,ある程度の修行が必要だ。悪霊になって,まだ間もない悪霊27号にとっては,都合のいい条件だった。
普通のヒトがカイジを見ると,相変わらずミイラの一歩前の姿だ。もうすぐ死ぬ運命だと誰でも思うだろう。
一息ついたところで,水香がセイリスに,かなり困難な命令をした。今,セイリスにギャフンといわせることができるとすれば,超難問を押しつけるくいらいだ。
水香『セイリス! カイジから,他人の病を自分に移す能力をコピーしてちょうだい。ただし,カイジは,体が超弱いから血を採るのもだめよ。ましてや,粘液を取ることは不可能。でも,今から10分以内に実行してちょうだい』
セイリス『・・・』
さすがにセイリスでも即答することは出来なかった。水香が霊力を使えるからこそ,血液や粘液から,いろいろな情報をコピーできた。その霊力がないということは,優れた分析装置がないのと同じだ。
セイリス『今はすぐには無理ですよ~ でも,どうして,そんな超ボケカスがするような発想するのですか?』
水香『・・・』
水香は,またセイリスに揶揄されてしまった。
水香『ふん! カイジから能力を奪ってしまえば,もう育てる必要もないでしょう? カイジの死を待って,お役目を終えればいいのよ。それに,その能力を身につければ,わたし,どんな病だって自分に移してから,悪のオーラを壊劫の炎で焼いて治癒できるわ。これって,大金持ちになれるってことよ!』
セイリスは,もう水香に対して,バカ,アホと言うのは止めたかった。でも,ここは,どうしても言わざるを得ない。
セイリス『女王さま。ほんとうに救いようがない愚か者ですね』
水香は,超,超,頭に来た! セイリスをぶん殴ってやりたかったが,悪霊曼荼羅界にいる以上,そんなことは出来ない。水香が出来たことは,納得のいく説明をしてもらうことだ。
水香『セイリス! どこが救いようのない愚か者なのよ! ちゃんと理由を説明してちょうだい!!』
セイリスは,あたかも大きな溜息をしたかのようにして説明した。
セイリス『他人の病を自分の体に移し換えるという行為は,危険極まりない行為なんです。もし,その患者が10秒後に死亡するとしたら,女王さまが患者の代わりに死んでしまうんですよ。それに,そもそも論ですが,女王さまは悪オーラを壊劫の炎で焼き消す能力があるじゃないですか。その能力で患者を病から救って,大儲けすればいいです。そんな単純なこと,どうして分からないんですか?!』
水香『・・・』
そう言われてみればそうだと水香も思った。まあ,ここは,素直に自分がバカだと認めよう。
水香『セイリス,もうバカバカと言わないでちょだい。言われるたびに,ますまバカにばってしまうわ』
セイリスも,水香を小馬鹿にするのは,この辺が限界だと思った。これ以上怒らすと,悪霊曼荼羅界を壊滅させられてしまうかもしれない。
セイリス『女王さま。ちょっと言葉遊びしただけですよ。あるドラマを見過ぎて,その言葉使いを真似てみたんです。冗談ですよ,冗談。さて,女王さま。その赤ちゃんをどうしますか? もう利用価値はないと思いますけど?』
水香『いや,ちょっと考えが変わったわ。この子のお陰で,わたし,壊劫の炎でオーラを焼き消すという能力に目覚めたわ。わたし,受けた恩は返す主義なの。この子,わたしが女中を辞めるとき,この屋敷から連れ出すわ』
セイリス『女王さま。無策でそのような行動をすると,後々面倒になりますよ。ここは,わたしにいい策があります。この件,わたしに任せていただけますか?』
セイリスは,以前の優しい言葉使いに戻った。
水香『じゃあ,とっておきの方法をお願いするわ』
かくして,この日は,こうして過ぎた。
・・・
翌日,水香は,マリアンに業務報告を行った。
水香「この赤ちゃんですが,やはり母乳を飲む力がありません。なんとか,口移しで無理やり母乳を含ませて飲ませました。こうすれば,命だけはなんとか長らえることは出来そうです」
マリアン「あら? あなた,意外と優秀なのね。それで,どう? 赤ちゃんの世話以外に時間は取れそう?」
水香「1時間沖に,15分ほどかけて,少しずつ母乳を飲ませたいと思います。それ以外の時間なら,時間はあります」
マリアン「そう。だったら,今日の空いている時間は,弟・メーデルの家庭教師をしてちょうだい」
水香「あの,,,具体的には何をすればいいのですか?」
マリアン「直接,弟と相談してちょうだい」
水香「はぁ,,,分かりました」
水香は,とにかくメーデルに会うことにした。
・・・
ー メーデルの部屋 ー
メーデル,12歳で泡力もそこそこ優秀だ。泡力下等学院に入学していて,父親のコネを使って,まだ一回生にもかかわらず,泡力中等学院の受験資格を得た。彼としては,自分が姉のマリアンよりも優秀だと父親に証明したい。
でも,実技試験はなんとかなるかもしれないが,座学だけは,まだ未習の2回生と3回生の範囲を学習しなければならない。いくら,1年前から準備してきたとはいえ,学力には不安があった。それに,入学試験については,いくら城主の親戚でも不正は難しい。そもそも,合格したところで,成績が悪いと,いくら城主の関係者であっても,すぐに退学になってしまう。
だが,ひとりで勉強するには,どうしても学習意欲が低下する。そこで,姉のマリアンにお願いして,自分の勉強を監督する巨乳メイドを採用してもらうお願いした。メーデルとしても,巨乳メイドからの叱咤なら,勉強にやる気が出ると思ったからだ。
赤ちゃんのカイジを乗せた乳母車を押して,水香はメーデルの部屋に来た。
メーデル『お前が新しく来たメイドか?』
メーデルは,その谷間を見て眼を輝かした。予想以上に可愛くて巨乳だ。やっと,自分の自由になるメイドが手に入ったのだ。もっとも,メイドがほしいと言ってもダメなので,自分を管理する女性の家庭教師がほしいとお願いした。それがやっと受け入れられた。
とにもかくにも,目の前の小女は,あくまでも,自分の言いなりになる奴隷みたいなものだ。
水香『あの,,,メーデルさまには,家庭教師になると言われて来たのですけど,,,』
メーデル『そうだ。家庭教師だ。おれに,男女がする性愛行為をする方法を教えろ』
水香『・・・』
このとき,メーデルは『性愛行為』という,少し曖昧な言葉を使った。
水香『性愛行為って,よく分からないのですけど,その,,,男女が愛し合うってことですか?』
メーデル『そうだ。愛し合う行為だ』
水香『わたし,メーデルさまを愛していません』
メーデル『・・・,今は,授業の時間だ。仮にそうなった場合に,どういった行動をとればいいのか,教えなさい』
水香『わかりました。では,最初の一歩から教えます。メーデルさまがわたしを好きになったとしましょう。メーデルさまは,わたしにプレゼントを与えるものなんです。高価なプレゼントであればあるほどいいです。そう思いませんか?』
メーデル『うっ,そっ,そうだな』
水香『では,プレゼントをください』
メーデル『・・・』
メーデルがちょっと考えた。
水香『メーデルさま。わたし,この子にお乳をあげますので,ちょっと失礼します。30分ほどで戻ります。その時に,プレゼントを渡してください』
メーデル『よし,分かった』
水香は乳母車を引いて部屋から出ていった。今のメーデルに,貴重品などない。さて,どうしようか悩んだ。だが,悩んでも答えは出なかった。
30分経過した。水香が乳母車を引いて戻って来た。
水香『メーデルさま。プレゼントは決まりましたか?』
メーデル『おれ,まだ学生だし,貴重品などない。お前は教師なんだから,こんな状況のおれが送るプレゼントを考えろ』
水香はちょっとがっかりした。かなりいいものをくれると思った。この部屋を見渡した。いろいろなガラクタが転がっていた。その中に,最近実用化されて間もないカメラがあった。その隣には,もっと大型でカメラのような手作りのものがあった。水香はそれを指さした。
水香「このカメラみたいなものはなんですか?」
メーデル「それか? 写真を何枚もとって動画にするものだ。ビデオというらしい。まだ,大きくて重たいので,可搬性は乏しいが,でも,充分に実用性はある」
水香「じゃあ,これ,プレゼントしてください」
メーデル「これはダメだ。でも,これなら,,,」
メーデルは,ガラクタの中から,やや大型で写真機のようなものを拾い上げて水香に渡した。
メーデル「それは,おれが苦労して作った自作写真機だ。もっとも造り方は従兄弟のカツラ兄貴に教えてもらったんだけどな」
水香はそれを見た。機能的には,モニター付き一眼レフカメラと同じようなものだった。ただし,持ってみると1kgほどもあり,携帯性はあまりいいものではない。
水香「これって,もう使わないからくれるの?」
メーデル「うっ,,,」
図星だった。それに,写真撮影するには,いちいちその写真機に,一定量の気力を注入しないといけない。エネルギー源は気力だった。気力の弱いものなら,写真機を起動させることすら出来ない。
水香「気持ちだけ受けとるわ。もっと面白いものないの?」
メーデル「ほかのものは,カツラ兄貴から,もういらんと言われてもらったものばかりだ。使い方もよくわからない」
水香は,適用に転がっていたテニスボールほどの大きさの球を拾い上げた。そこに微量の気力を流してみた。すると,微かな光りを帯びた陣法が出現して,また消滅した。水香は,その陣法が何か分からなかったので,セイリスにイメージ念話を送って調べさせた。だが,すぐには分からなかった。でも,爆裂,火炎などの一般攻撃系陣法ではないようだ。そこで,さらに気力を注入してみた。
すると,今度は,隠密陣法が発動した。
スーー!
水香の体が消えた。
メーデル「え? 水香の体が消えた! すっ,すごい!」
別に消えたわけではない。保護色になっただけだ。動けば,どうしても周囲との色違いが生じる。
しばらくして,保護色の効果が消滅した。
水香「この球,面白いわね。じゃあ,別の玉は?」
水香は,ほかの球を拾って同じように少量の気力を流した。
ボア~!
メーデル「え? おれの体が痺れて動かなくなった。え?え?」
だが,十数秒後にはその痺れがとれた。
メーデル「え? あっ?! 動ける! よかった~」
水香「メーデルさま。この球がいいです。これください」
メーデル「・・・,そんなんでいいなら,何個でもいいぞ。でも,これで,おれが好きだって意思表示ができたってことなか?」
水香「そうだけど,でも,少なくとも1ヶ月くらい高価なプレゼント攻撃をしないと,女性は落ちないわよ。わたしは,2週間くらいでいいわよ」
メーデル「・・・」
水香は,メーデルが性に目覚めたのはよく知っているが,ほかにも悩み事があるようだと感じた。
水香「メーデルさま,あなたがわたしとあの行為をしたいのは,よく分かりました。高価なプレゼントを2週間分いただければ,その望み叶えてあげます。でも,それ以外に,何か悩み事があるようですね。正直に吐露していただけますか? 悩み事を共有するのも,お互いが知りあういい切っ掛けになります。真実の愛が芽生えて,あの行為をする機会が早まるかもしれませんよ」
メーデル「おっ? そういうものか? では,,,実は,,,」
メーデルは,正直に今の悩み事を水香に打ち明けることにした。
メーデル「おれは,父親のコネを使って,まだ泡力下等学院の1回生にもかかわらず,1ヶ月後に控えている泡力中等学院の入学試験を受けることにした。実技については,なんとかなるかもしれないが,でも,座学については暗記量が多すぎて,とても合格レベルには到達できない。短期間で2回生や3回生が学習する内容を暗記したい。だが,暗記はあまり得意ではない。それをなんとかできればいいのだが」
暗記が苦手なのは,受験生が持つ共通の悩みだ。
水香「実は,わたしの知人で,暗記が得意な子を知っています。その子,わたしよりも巨乳なんですよ」
この言葉に,メーデルは眼を輝かした。かくして,4日後に,『水香』に扮したビルカがメーデルの屋敷を訪問できるようにアレンジした。
ーーー
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