第3話 すかしっ屁と貢ぎ物

 間もなくして,水香が上空から戻って,窓を経由して部屋に戻ってきた。


 妖力の羽を解消した水香は裸体のままだった。


 水香「お兄さま,連絡がつきました。数日のうちに,巨乳小女2名をアレンジ出来ます。後は,時間を連絡するだけです」

 魃鬼「ユズハ,よくやった」


 魃鬼は,自分の脚元を抱いて懇願している星影と星羽を見た。ここは,彼らのために一肌脱いでやろう。今後の指揮に影響するだろうし,,,


 魃鬼「ユズハ,お前の体,こいつらに与えてやれ。かつ,こいつらに一切の加害行為はするな。これは命令だ。拒否は許さない」

 

 今の水香は,いまだに全裸状態だ。そんな姿でうろうろされていたら,確かに周囲の男どもはたまったものじゃない。その辺のことは,水香もよく分かっている。


 水香「いいわよ。でも,ひとつだけ条件があるわ」


 水香は,憑依したユズハの体でも,妖力を駆使して術ができるのか試したかった。


 魃鬼「なんだ?」

 水香「わたしのあの部分からのすてきな臭いを嗅ぐこと。それが条件よ」

 魃鬼「ほう? あの部分って,どこのことだ?」

 水香「ここよ!」


 そう言って,水香は星影と星羽のそばに寄ってきて,後向きになってお尻を突き出した。お尻の肛門や陰部,さらに,Dカップの垂れた巨乳も少し左右に揺れた。


 星影と星羽は歓喜で喜んだ。この巨乳小女を抱けると!


 その直後,,,


 スカッ~~!!


 肛門から微かな臭いが放出された。それは,妖スカンク族が放つ低レベルの『すかしっ屁』だった。

 

 星影「グァーー!」                                                

 星羽「ぎゃぁあーー!」


 彼ら2名は,あまりの悪臭にその場で意識を失って倒れた。魃鬼は,臭いと聞いて,こんなこともあるかと,屍気の気流で自分の鼻を覆って悪臭攻撃の阻止に成功した。


 水香「あら? 魃鬼はまったく影響ないのね? わたしは事前に鼻を妖力で覆っていたから大丈夫だったけど」

 魃鬼「おれも事前に対策を取った。それより,こいつらはどうするんだ?」

 水香「もちろんこいつらの能力を奪うのよ」

 魃鬼「ほう? どうやって? だが,やつらの体を害してはならんぞ」

 水香「大丈夫よ。害しても,元通りにしてあげるから」


 水香は,かれらのあの部分の片方の精子を精製する部分を切除して,妖力で覆った。水香は早速,悪霊曼荼羅界分署のセイリスに命じて,その解析をお願いした。


 しばらくして解析が終了した。


 セイリス『女王さま,解析が終了しました。妖ヒトデ族の特異能力は,自分の腹部に第2の口器を持っていることです。そこから30cm程度の大きさの餌を直接取り込むことが可能です。また,ヘビ毒ほど強力ではありませんが麻痺毒を生成できます。それらは遺伝子レベルの陣法によって伝承されます』

 水香『ふ~ん,たいしたことないのね』

 セイリス『・・・,それ以外に,海洋族の共通の能力ですが,水中でも呼吸ができるように,背の部分にエラの構造を有しています』

 水香『ふ~ん,あまりたいしたことないのね』

 セイリス『まあ,女王さまにとってはそうかもしれません。それはともかくとして,この世界の情報を取るために,彼らの記憶を読み取ることを勧めます』

 水香『じゃあ,悪霊を選んでやつらに棲まわせてちょうだい』

 セイリス『了解しました』

 

 セイリスは悪霊22号と23号を選別して,星影と星羽に棲ませた。

 

 その後,しばらくして,悪霊22号から水香に連絡が入った。


 悪霊22号『女王さま,泡力についての情報を入手しました。すでに報告済みの内容ですが,改めて報告します。

 泡力とは,気力の防御結界をさらに発展したものです。妖ヒトデ族も,最初は気力を修得します。その後,泡力下等学院や泡力中等学院で泡力の修行をするのが通例です。

 星影は,気力では中級レベルの術者で,泡力も黄色の透明色で展開できます。彼らは,泡力を展開する際には,手印を切ることで気力を泡力に変換します。女王さまの場合は,すでに泡力の核を体内に構築済みですので,そんな変換など不要です。一応,手印の切り方を送ります。弱者を装うには必要な知識ですから』


 悪霊22号は手印の切り方を水香に送った。


 水香『なるほど。手印の切り方は覚えたわ。でも,泡力って,相手を窒息させる使い方のほかに,どんな使い方があるの?』

 悪霊22号『基本的な使い方は,自分の周囲に泡力による球を展開して,自分がその中に入ります。そして,海底都市などに展開してある結界を通過するときに,球を接触させることでその結界を通過できます。簡単にいうと,結界の通過手段です。

 ほかには,泡力の球を剣状やヤリ状などに変形させて,攻撃技に転用できます。その辺については,妖ヒトデ族の泡力中等学院で修得できます』

 水香『なるほどね。わたし,悪霊曼荼羅界では女王なのよ。女王さまって,食っちゃ寝食っちゃ寝するものなのよ! どうすればいいと思う?』

 悪霊22号『・・・』


 ここで星羽に宿した悪霊23号から念話があった。


 悪霊23号『女王さま,星羽の記憶を読み取ったのですが,彼の親戚のひとりが,海底王宮都市に住んでいます。どうやら,今,王宮では,1年以内に皇太子の王妃候補を選定するようです。どうです? 女王さまはその選定候補に名を連ねてはいかがですか?』

 水香『え? 皇太子の王妃候補? それって,食っちゃ寝できるってことね? このユズハの体でDカップでも大丈夫かしら?』

 悪霊23号『その辺のことについては分かりません。ですが,王妃候補は,海底王宮都市にある泡力高等学院で優秀な成績を取った小女たちから選ばれるのが通例になっています』

 水香『じゃあ,その泡力高等学院に入学するにはどうすればいいの?』

 悪霊23号『妖ヒトデ族の泡力中等学院で,優秀な成績を収めることで,泡力高等学院への入学資格が得られます。ですが,問題は,その泡力中等学院にどうやって入学するかですが,もともとのユズハは,妖ナマコ族の泡力下等学院でも,さほど成績がよくないようです。星羽の記憶では,ユズハは強制労働施設で性奴隷にされる予定になっています』

 水香『・・・』


 ちょっとガッカリしたものの,ともかく将来の『食っちゃ寝食っちゃ寝』生活を享受するには,どうやら星影と星羽の協力が不可欠だと感じた。


 水香は,彼らの切り裂いたあの部分に,回復魔法をかけて完全に元通りに戻した。それを見た魃鬼が感心しきりだった。


 魃鬼「水香,お前の治癒術は相当なものだな。紫江子のそれも相当のレベルだが,お前のはそれ以上かもしれん」

 水香「こんなの当然のことよ。それより,わたしのすべきことが分かったわ」

 魃鬼「ほう? 何をする気だ?」

 水香「わたし,皇太子の王妃になるわ。食っちゃ寝食っちゃ寝生活をするのよ。魃鬼は,わたしの付き人でそばに控えてればいいわ」

 魃鬼「まあ,口で言うのは簡単だぞ」

 水香「わたし,妖力を使えば,いくらでも超爆乳になれるのよ。それを持ってすればなんとかなるわ」 

 魃鬼「アホかお前! 皇太子の王妃って,処女だって相場が決まっているんだ! お前みたいな残虐非道で娼婦よりも汚れた生命体でよく言えたものだな」

 水香「世の中,すべての男は巨乳好きなのよ! わたし,超爆乳で王妃になってみせるわ。それに,ユズハはまだ処女よ! 仮に処女でなくても,処女を偽装するなんて,超ウルトラ簡単よ!」

 魃鬼「だけど,お前を犯した連中から証言が漏れたらすぐにバレてしまうぞ」


 水香は手で否定のサインを送った。


 水香「大丈夫よ。星影たちが目覚めたら,わたしを抱かせてあげるけど,でも,わたしを抱いたことは内緒にさせるわ」

 魃鬼「そんな都合いいように出来るのか?」

 水香「任せてちょうだい」


 その後,部屋の換気を行って,すかしっ屁の臭いを完全になくした。しばらくして,星影たちが意識を取り戻した。そこで,水香が彼らにある要求をした。


 水香「わたしを犯していいけど,わたしとお兄ちゃんを妖ヒトデ族の泡力中等学院に入学できるようにしてちょうだい。それが条件よ」

 

 これには星影がちょっと反発した。


 星影「あの強烈な臭いを嗅いだら抱かせてくるって言ったじゃないですか。また条件を加えるのですか?」

 

 まあ確かにそうだ。水香は,ちょっと考えてから言った。


 水香「じゃあ,わたしを抱いていいわよ。でも,あなたたちが充分に満足できたら,泡力中等学院に入学する受検資格を与えてちょうだい。それならいいでしょう?」

 星影「受検資格ですか,,,少なくとも泡力下等学院での優秀な成績証明書が必要だが,,,さて,どうしたものか?」


 ここで星羽が星影に耳打ちした。その内容に星影はニヤッとして頷いた。


 星影「可能性が五分五分っといったところだが,受検できるように最善を尽くす。それでどうかな?」

 

 水香はこれ以上グダグタしていると,彼らの協力が得られないと思い,彼らの提案に同意することにした。


 かくして,水香は憑依を解いて明鏡玉に戻った。水香の行動は,ユズハも分かっている。今,ユズハがすべきことは,,,自分の処女を彼らに与えることだ。ともかくも,水香という人物は,めちゃくちゃのレベルで強者だと分かった。ユズハは,自分が水香の奴隷身分であることを悟った。


 ユズハができること,,,それは,,,


 ユズハ「あの,,,わたし,まだ処女なんです。あの,,,優しくっして痛くしないでください。お願いします」


 この言葉に,星影と星羽はニタッとした。どうして急にしおらしくなったのかは分からないが,まあ,2重人格なのかもしれない。


 星影「もちろんだよ」

 星羽「お兄さんたちに任せておきなさい」


 ユズハは星影と星羽の両名によって性的攻撃を受けて処女を失った。


 一方,魃鬼は,ミズキに気を利かして,その場から去って,屍気流を解除して,ミズキの肉体を本人に返した。


 ユズハが彼らに何度も犯されている時,明鏡玉内にある悪霊曼荼羅界の解析課の担当者は,とうとう未知の屍気の解析の端緒を見いだすところまで達した。


 解析課担当者がセイリスに報告した。


 解析課担当者「腐敗時に発生する分解エネルギーが,屍気の源だと推定されます。その分解エネルギーを,魃鬼は強力な思念によって『屍気』として生成しているようです。その思念の構成方法さえ分かれば大丈夫です」

 セイリス「では,魃鬼に悪霊を植え付ければいいのね?」

 解析課担当者「そうですが,でも,魃鬼も,ある意味,超級レベルの悪霊です。下手な下級悪霊では,すぐに身元がバレて調査できないでしょう」


 セイリスはどうすべきか考えた。


 セイリスは,水香にある提案をした。


 セイリス『女王さま。ミズキの霊魂に,魃鬼が屍気を扱うときの思念の動きを読み取るようにお願いしてはどうですか? それが分かれば,もしかしたら,屍気を解除することも可能かもしれません』

 水香『分かったわ。ミズキに,魃鬼の思念の動きを注意深く観察するように言っておけばいいのね?』

 セイリス『はい,そうです』


 星影と星羽があの行為が終わって寝入った頃に,ミズキが戻ってきた。


 ミズキ「ユズハ,すまなかったな」

 ユズハ「いずれ,こんな日が来たわ。それより,わたしの明鏡玉の主・女王さまからお願いされたの」

 ミズキ「ん? なんだ?」

 ユズハ「今度,魃鬼がお兄ちゃんの体を支配した時,屍気を使うときの思念の動きをよく観察してほしいんだって。それが出来たら,お兄ちゃん自身が屍気を扱えるかもしれないんだって。それって,超がつくほどの強者になれるってことだよ」


 この話にミズキはめちゃくちゃ喜んだ。


 ミズキ「そうか。分かった。じゃあ,頑張ってみよう」

 ユズハ「はい,お兄ちゃん!」


 ユズハは,股間に血を拭いて服を着た。


 ・・・

 翌日の早朝,,,


 その後,星影と星羽が目覚めた。朝の志度を済ませた後,ミズキが彼らにいくつかの注意事項を与えた。それは魃鬼からの指示だった。


 ミズキ「では,これまで通り,ボクは初級中期レベルの『ミズキ』であり,彼女は基礎レベルの『ユズハ』です。対外的には,充分に言動に注意してください」

 星影「はは~! 肝に銘じます!」

 星羽「おれも大丈夫です。昨晩,ユズハさまの豊満な肉体を抱くことが出来ましたので,全力で頑張ります」

 ミズキ「よろしい。では,例の件,よろしくお願いしますよ」


 例の件とは,ユズハとミズキを妖ヒトデ城にある泡力中等学院への入学試験に受験させる機会を与えることをいう。


 星影「もちろんでございます。その可能性は五分五分といいましたが,今では,六分の可能性に引き上げっています」

 ミズキ「それは楽しみだ」

 

 そんな打ち合わせをしている時,ドアが叩かれる音がした。


 コンコン!


 ドアをノックする音がして,ドア越しに声がした。族長だった。

 

 族長「あの,,,そろそろ海神さまへの貢ぎ物を備える供養祭の時間ですけど,,,」


 この声に,星影が返事した。


 星影「10分ほどで用意する」

 族長「では,よろしくお願いします。玄関で待ってます」

 星影「了解した」


 その後,星影たち4名は服装を整えて玄関に集合した後,族長を先頭にして,供養祭の会場である大広間に移動した。


 ・・・

 大広間の中央には3重構造の大きな祭壇がある。その傍らに,今期,収穫された農作物の一部が積み上げられていた。農作物が一杯に積まれた背負子の数で,およそ百個ほどだ。ほかの農作物は保存加工処理した後,11等分して毎月行われる供養祭に提供されることになる。


 収穫際には,部落全員が参加する。そこで族長が今年の収穫量の総括を行った。


 族長「今年の収穫量は,昨年同様に例年の7割程度だった。減収の要因は,すでに知っての通り,『ワタリバッタ』の幼虫に食い荒らされたことだ。昨年,突如として飛来し,今年はそのワタリバッタがこの島に棲み着いてしまったようだ。来年も同様の被害が予想される。

 泡力下等学院で対処方法を検討してもらった結果,われわれ妖ナマコ族が有する毒液でも,ワタリバッタの幼虫に散布すれば殺せることが判明した。ただ,問題なのは,われわれが産出する毒液が微量という点だ。全員の毒量を集めても,せいぜい千匹程度の幼虫を殺す程度の量にしかならない。それではまったく意味が無い」


 このことを聞いて,全員ががっかりした様子を見せた。


 族長「だが,安心してほしい」


 この言葉に,全員が眼を見張った。


 族長「先般,妖ヒトデ族の検収人から毒を分けてもらったところ,その毒なら,1000倍希釈しても,憎きワタリバッタの幼虫に有効だと判明した」


 この説明を聞いて,「オオオー!」,「天の救いだ!」などの感嘆の声が聞こえた。

 

 族長「これから冬を迎え,雪が降るシーズン到来だ。その間,さらに効率的な駆除方法を検討してもらうが,その検討結果をもって,妖ムカデ族の毒を10㎖ ほど分けてもらうよう交渉する予定だ」


 この報告を受けて民衆から,

 「これで,来年からは通常通りの収穫量が確保できる!」

 「もう,ひもじい思いをしまくて済む」

 「妖ムカデ族さまさまだ!」

 などの声が聞こえた。


 だが,魃鬼や水香の傍にいた星影は,ボソッとつぶやいた。


 星影「ふん,族長もアホだな。われわれのボスにそんな要求をしてしまうと,来年の検収量が倍増になってしまうぞ。今年以上に悲惨な目に遭うのは明らかだ」

 

 この言葉を受けて,星羽もつぶやいた。


 星羽「ボスはおれたちみたく甘くないからな。それに,われわれの毒は大変貴重なものだ。10㎖ の少量といえど,おいそれとは渡さんだろう。検収量の倍増以外に,美少女5,6名を差し出す要求するのが見え見えだ」

 星影「まったくだ。そもそも今のボスは,新米のボスだから,これまでの妖ナマコ族をどう統治してきたの歴史をまったく知らない。搾取することしか考えていない」

 星羽「たぶん,来年の今頃は,何十年ぶりかに反乱がまた起きるだろう」

 星影「フフフ,歴史は繰りかえす,,,よく言ったものだ」


 彼らの会話を聞いたミズキが魃鬼に念話で尋ねた。


 ミズキ『魃鬼さま,妖ヒトデ族の毒に頼らない方法ってないのですか?』

 魃鬼『お前が心配するのは当然かもしれないが,そんな次元の低いことを心配する必要はない』

 ミズキ『え? 次元が低いって,どういうことですか?』

 魃鬼『もし,ユズハがこの国の皇太子の妃になったら,どうなると思う?』

 ミズキ『え? まさか,,,,でも,,,万一,それが実現したら,妖ナマコ族から皇太子妃を出したということで,『隷従』から開放されるのは間違いないです』


 ここまで言って,でも,その可能性は絶対にないと思った。


 ミズキ『でも,そもそも隷従身分の者から妃が選ばれることは絶対にないです』

 魃鬼『果たしてそうかな? 世の中,『絶対』という言葉は存在しないものだ。何がどう転ぶか分かったものではない。

 毒がどうのこうのと考えるよりも,ユズハが皇太子妃になるように,全力でフォローするほうが,妖ナマコ族のためになるぞ。そう思わんか?』

 ミズキ『・・・』


 ミズキは,確かに魃鬼の言うのももっともだと思った。今後は,些細なことは考えず,全力で自分に与えられた役割を果たすことにした。


 族長の説明が終わって,検収された量の貢ぎ物が最上段の祭壇に積み上げられた。


 ここで,祭司が登場した。外見的には中年の男性のようだが,銀色の仮面を被っていた。また,美少女2名が祭司の秘書役兼身の周りの世話役として1年交代で任命される。祭司は妖ヒトデ城の城主から任命される。果たして,その詳しい身分は明らかにされていない。ただ,祭司の身分になると,祭壇の最上段に設置された転移陣法を発動する権利を与えられる。また,冠婚葬祭では,必ず祭司の了解が必要となる。


 祭司は,なぜかほとんど声を発することはしない。その代わり,秘書役の美少女が彼の代弁をする。

 

 秘書「では,祭司さまより,貢ぎ物を海神さまのもとへ届ける儀式をしていただきます。司祭さま,どうぞよろしくお願いします」

 

 秘書の言葉を受けて,司祭が1段目の祭壇に立ち上がって,そこで,腕を交互に交差するやら,手の平を不思議な角度で回転するやらして,気力を充実させていった。


 オーラが見える魃鬼と水香は,彼の動作を見て,彼からどんどんと気力が上昇していくのが分かった。その気力,,,S級レベルから仙人レベルを超えて,S級仙人レベルに達した。しかも,強化気篆術を使って,さらに2S級仙人レベルに達した。


 魃鬼と水香は,驚きのあまり念話で会話した。


 魃鬼『まさか,こんなところに,あんな強者がいるとは驚きだ』

 水香『ここって,奴隷身分の妖ナマコ族の部落でしょう? なんで,あんな強者がいる必要があるのよ?』

 魃鬼『どうやら,何か裏がありそうだな』

 

 魃鬼はミズキから,そばにいる星影に祭司の身分を聞いてもらったが,星影たちも祭司に関してはまったく情報を持っていなかった。


 祭司は10分ほど不思議な動作をして,気力を充分に高めた後,複雑は手印を切った。


 ボボボ~!!


 2段目の祭壇の周囲から火炎の壁が立ち上がった。さらに手印を切って,大きな声を発した。


 祭司「カッ! パーー!!」

 

 その声と共に,最上段の貢ぎ物は,フッと消えてしまった。転送陣法が発動したようだ。


 水香は魃鬼に念話した。


 水香『どうやら,あの祭司が自分の力を使って転移陣法を起動したようだわ。あれほどの重量を転移させるなんて,よっぽど効率のいい転送陣法なんでしょうね』

 魃鬼『おれは,陣法には無知だが,あの祭司,,,妖海族ではないのかもしれん』

 水香『そうかもね~』


 水香は,注意深く司祭のオーラをさらに詳しく診た。術の発動が終わった後,祭司の気力はどんどんと低下していって,S級レベルにまで低下した。


 水香は思った。


 水香『どうやら,もともとはS級レベルだけど,なんらかの方法でS級仙人レベルに引き上げて,さらに強化気篆術でもう一段のレベル上げをしたって感じかな? でも,あんな高等な転移陣法を操るなんて,とんでもないわ。海洋族って,意外と奥が深いのかもね。フフフ,やはり,しばらくは低調に過ごすべきだわ』


 水香は改めて慎重に行動することにした。


 その後,秘書が供養祭の終了を告げて解散となった。民衆が去った後,族長が星影と星羽の元に来た。


 族長「では,星影さま,星羽さま。ミズキとユズハをよろしくお願いします」

 星影「うむ。心配するな。たぶん,来月も,われわれが検収人として,ここに派遣される。その時,どのような状況になったかを報告してあげよう」

 族長「ははっ,ありがとうございます!」


 族長は深々と頭を下げた。


 星影と星羽は,ミズキとユズハを連れて,大広間の奥にあるダンジョンに向かって歩いていった。


 族長は,一緒にダンジョンの地下まで見送りしたかったが,それは許されない。


 このダンジョンは,地下10層しかない。もちろん,妖獣など出現するわけもない。すでに廃棄されたダンジョンだ。


 地下10階層に着いて,隠し扉のところに来た。


 星影「ここからは,本来ならミズキさまやユズハさまには,目隠しをしてもらう。でも,その行為は省略します」


 そういって,星影は,身分証代わりの銅札を取りだして,岩石の隙間に挿入した。


 ゴゴゴーーー!


 隠し扉が開いた。そこには,やや広い空間になっていて,前面が無色透明の結界で構築されていた。その結界の外側は,すなわち海底で海の中だ。


 星影たち4名がその空間の中に入ると,星影が再び銅札を使って隠し扉を閉めた。


 星影はおもむろに聞いた。


 星影「さて,この結界を通過する方法は分かるかな?」


 海洋族にとって,海底にある結界を通過する方法は必修事項だ。秘密でもなんでもない。結界を通過するには,白色の球で5分,赤色の球で3分,黄色の球で1分ほど結界に接触させる必要がある。


 だが,通常,基礎レベルで構築できる白色の球は30秒程度しか持続できない。初級レベルの赤色の球で2分程度,中級レベルの黄色の球で5分程度だ。基礎や初級レベルでは通過できない。


 通過できない場合,中級レベルの検収人が,低レベルの美少女を背負って黄色の球を構築することになる。


 星影が尋ねたと同時に,ミズキとユズハがそれぞれ魃鬼と水香の力を借りて,紫色球を自分の周囲に展開して,一瞬で結界を通過した。しかも,通過した後も,その球がそのまま維持していた。


 影と星羽は,お互い顔を見合わせた。


 ともかくも,彼らも黄色の球を自分の周囲に展開して,少々時間をかけて結界を通過した。通過直後,その球は水圧によって破壊された。


 彼らは,魃鬼とユズハの紫の球の前に移動して,ゆっくりと歩く速さで泳いだ。


 ーーー

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