第2話 妖ナマコ島(実験島)

 しばらくして,,,


 ピカーーー!


 突然,陣法が光った。それは明るい光ではない。黒光りした光りだった。そこから,黒い球が出現した。その玉は豊富な血を吸った。


 パヒューン!


 その玉から黒い煙,屍気が大量に出現して,その場にいたユズハとミズキを覆った。


 魃鬼『ほう? ここに新鮮な子供の肉体があるぞ。しかも,どちらも新鮮な死体だ。ん? この2人,もしかしたら生きかえるかもしれん』


 魃鬼は,屍気でミズキとユズハの出血部を覆って止血させた。その後,屍気を心臓で覆って,強制的に鼓動させた。


 ドクン,ドクン,ーー


 ミズキやユズハが意識を失ってから10分と経っていなかった。彼らの心臓は,本来の鼓動を取り戻した。


 魃鬼『ふー,なんとか一命を取り留めたか。さて,それはいいが,いったい,ここはどこだ?』


 今の魃鬼と念話できるのは,屍気玉に閉じ込めれた水香だ。今の水香の肉体は,屍気によって覆われてしまい,屍気玉内の亜空間内に収納されている。


 水香『そんなの分かるわけないでしょう? そんなことより,ここから出してよ!』

 魃鬼『それは出来ん。お前のパワーは強大すぎる。どんな世界であれ,破滅に追い込まれしまう。この世界が救いようもないダメな世界だったら,お前を解き放つ』

 水香『・・・』

 魃鬼『お前を封印できるのは,どうやらおれの屍気流くらいしかないようだからな。フフフ』


 だが,水香も黙ってこんな状況を甘んじているわけではなかった。悪霊曼荼羅界の解析課に,屍気の解除方法を検討してもらっていた。だが,『屍気』というものが,まだどの悪霊も分かっておらず,解析は難航を極めた。


 そんなことをしていると,ミズキとユズハが意識を取り戻した。


 ミズキ「あれ? おれ,意識を無くしてしまったのか?」

 ユズハ「どうやらそうみたい」

 ミズキ「それよりも,陣法は発動したのか?」

 ユズハ「分からないわ」


 ミズキとユズハは,陣法の周囲を見渡した。すると,ネックレスの鎖で繋がれた黒色の屍気玉があった。ユズハは,それを拾い上げた。


 すると,ミズキの頭の中に声が響いた。


 魃鬼『おれは魃鬼というものだ。おまえがおれを召喚したのか?』


 それは念話だった。だが,念話など使えないミズキにとっては新鮮な驚きだった。魃鬼は,ミズキが念話が使えないと思ったので,使い方を教えた。


 魃鬼『この屍気玉を身につけていれば,お前の頭の中で話せば,おれは聞き取ることができる』

 

 ミズキは,言われた通り頭の中で話してみた。


 ミズキ『あの,,,わたし,ミズキっていいます。隣にいる女性は,妹のユズハです』

 魃鬼『そんなことより,お前がおれを召喚したのか?』

 ミズキ『この血で描いた陣法を見てください。これで召喚出来たんだと思います』

 

 魃鬼は陣法なんかまったく分からない。分かっていたら,屍気を生み出すのに何百年もかかっていない!


 ミズキ『あの,,,黒い球さま。あなたは,強大な力があるのですか? もし,そうなら,わたしたちにその力を分け与えてください!』

 魃鬼『あるにはある。この世界を破壊できるくらいのパワーがな』

 ミズキ『・・・』


 破壊されてしまっては困る! ここは,もっと丁寧にお願いすべきだ。


 ミズキ『ボクは,てっきり強力な召喚獣が呼び出されるものと思っていました。あの,,,この世界を破壊する必要はありません。でも,わたしに,わたしの妹に,この世界を変えるくらいのパワーを与えてください! お願いします!』


 ミズキは,ネックレス状の屍気玉を自分の首にかけて,五体投地を行った。ユズハも,わけが分からないものの,ともかくも兄を真似て五体投地を行った。


 五体投地をされても,魃鬼は困ってしまう。だが,まあ,ミズキやユズハを自分の奴隷にして,この世界のことを徐々に知っていくことにしよう。


 魃鬼『では,お前は,おれの奴隷になると誓え。ならば,お前は,お前のすべてはおれもものだ。全力で保護してやる』

 

 この言葉に,ミズキは歓喜した。


 ミズキ『はい! よろしくお願いします!』


 ミズキは,屍気玉を自分の首にかかているが,ユズハにはない。そこで,魃鬼にお願いした。


 ミズキ『魃鬼さま。わたしには,この黒い球があります。でも,ユズハには何もありません。ユズハにも力の源を与えていただけませんか?』

 魃鬼『まあ,確かにそうだな。少し待て』

 ミズキ『はい!』


 魃鬼は水香に聞いた。


 魃鬼『水香,ここに11歳くらいの小女がいる。彼女のために,何か力の根源的なものを与えてやれ。形状は屍気玉的なものがいい』

 水香『それって,わたしにとって何のメリットがあるの?』

 魃鬼『その玉を使って,外の世界を垣間見ることができるぞ。亜空間で寂しく過ごさなくてもいいし,気分転換にもなれる。それに,彼女と念話でもすれば,気も紛れるだろう』

 

 確かに言われてみればそうだ。ならば,自分の分身を玉にして,彼女に与えればいい。


 水香『1時間ほど時間をちょうだい。玉を構築するわ。出来たら,玉を屍気流の外に出すから,部分的に屍気流を解除してちょうだい』

 魃鬼『了解した』


 水香は,悪霊曼荼羅界に命じて,悪霊曼荼羅界の分署を作るように命じた。さらに,自分の分身をどうやって作ればいいのか一瞬悩んだ。そうなのだ! 霊魂の分身など出来ない。ならば,自分自身が玉の中に入ればいい。この肉体は悪霊たちに管理させればいいだけ!


 水香はニヤッと微笑んだ。でも,霊力を使うのはリスクがある。また,探知されて討伐されてしまうかもしれない。ならば,玉の中に構築するのは,妖力,気力,そして魂力だ。


 1時間ほどかけて,水香の分体ともいうべき玉を構築した。ピンポン球よりも少し小さい大きさだ。でも,その玉には亜空間収納機能も構築できるので,大きさはさほど関係がない。また,首からかけれるようにネックレス状とした。


 水香は,この玉を,かっこよく『明鏡玉』と命名することにした。というのも,透き通った水色をしていたからだ。その後,屍気流の一部を解除してもらい,明鏡玉を屍気玉の亜空間から取りだした。


 魃鬼はミズキに命じた。


 魃鬼『ミズキ。この玉は明鏡玉という。お前の妹の首にかけてやれ。妹もその玉の力を借りて,力を発揮するはずだ』

 ミズキ『はい! ありがとうございます!』


 ミズキは明鏡玉をユズハの首にかけた。


 ミズキ「この玉は明鏡玉という。お前に力になってくれる。大事にしなさい」

 ユズハ「はい! お兄ちゃん,ありがとう! これで大量の血を費やして召喚した価値があったね」

 ミズキ「まったくだ」

 

 ちょうどその時,複数人がこちらに向かってくる足音が聞こえた。


 そこでミズキがユズハに命じた。

 

 ミズキ「ユズハ! お前は気絶した振りをしろ!」

 ユズハ「はいはい,お兄ちゃん」


 ユズハはその場に倒れて気絶した振りをした。その後,ミズキは倒れた振りをしたユズハをゆすった。


 ミズキ「ユズハ! 起きろ! ユズハ!」


 そんなことをしていると,泡力下等学院の院長が生徒10名ほどの生徒を連れてやってきた。


 院長「おや? ミズキではないか? ん? すでに陣法を描いたのか?」


 ユズハは声のする方を見た。院長たちだった。


 ミズキ「院長! ユズハの意識が戻らないんです! 助けてください!」


 院長たちは急いでやってきて,ユズハの容体を診た。彼女の腕には切り傷の跡があった。


 院長「腕からの出血はもう止まっている。でも,呼吸も心音もしっかりしている。大事にはいたらないだろう。だが,安全のために下級精力丹を与えよう」


 巾着袋を取りだして,そこから常備薬の下級精力丹を取りだして,ユズハの口の中に押し込んだ。しばらくしてユズハが意識を取り戻す振りをした。


 ユズハ「え? 院長? わたし,,,腕を切って,,,そのまま意識が,,,あっ,お兄ちゃん?! どうして,,,??」


 ユズハは少し涙を流した。この場は,涙を流すほうが状況に即していると思った。


 そんなユズハの思いなど分からない院長はテキパキと対応した。


 院長「もう大丈夫だ。いったん家に戻ろう。おんぶしてあげよう」

 ユズハ「はい,,,」

 院長「ミズキも家に戻ろう。話はそれからだ」

 ミズキ「はい,そうします」


 かくして,ユズハとミズキは族長の家に戻った。ユズハは,体が本調子ではないという偽装をしたので,ベッドで寝かされた。


 ミズキは父親の族長と院長を前に,これまでのことの顛末を語った。


 ミズキ「ボク,,,ほんとうに陣法が起動するのかどうか事前に確かめたくて,ユズハを連れてダンジョンの地下3層に来たんです。そこで,小さな陣法を描いて,自分の血を流したら,意識を失ってしまいました。しばらしくて,気がついたら,今度はユズハが意識を失っていました。その時,空中にこれが出現したんです」


 ミズキは首にぶら下げている屍気玉を彼らの見せた。


 院長「その黒い球が召喚されたというわけか?」

 ミズキ「はい,そうです。この黒い球がどんな効能があるのか,まだ分かりません。でも,きっと,すごいものだと思うんです」


 院長はその屍気玉を手に取って詳しく診た。だが,なんの変哲もない物のようだ。族長も手に取って診た。だが,何も分からなかった。


 族長は屍気玉をミズキに返した。


 族長「もう陣法のことは気にするな。とりあえず,あの陣法が何かを召喚する陣法だということは分かった。陣法の管理については,今後は院長に一任する」

 院長「了解しました」

 族長「陣法の件はこれでいいとして,明日,妖ヒトデ族の検収人がやって来る。農作物が貢ぎ物としての規定量に満たない現状では,どうしたって,美少女2名を人身御供として提供しなければならない。ひとりはユズハでいい。だが,2人目の美少女として,しょうもない黒い球を召喚したミズキでは,どうしたって満足しないだろう。さて,どうしたのもか?」


 族長に妻がいれば,最悪,妻を差し出すところだ。だが,数ヶ月前に海に漁に出かけたきり戻ってこなかった。浅瀬での漁なので,女性ひとりでも問題ないはずなのだが,,,


 ここで,ミズキがある提案をして,族長の院長の耳元でささやいた。


 族長「はあ? そんなんで誤魔化せれるのか?」

 院長「バレたら,それこそ命はないぞ!」

 

 ミズキはニコッとした。


 ミズキ「バレたらバレたときです。できるだけ頑張ってみますよ」

 族長「・・・」

 院長「・・・」 


 ・・・

 翌日の午後3時頃,2名の妖ヒトデ族の検収人がやって来た。彼らは,早速,農作物の検品を行った。


 検収人のひとり・星影が族長に文句を言った。


 星影「族長,ぜんぜん足りないじゃないか! 規定量の7割にも満たないぞ! どうしてくれるんだ!」

 族長「まあまあ,そんなに騒がないでください。まずは,貴賓室で食事を用意していますので」


 族長はもみ手をしながら,彼らを貴賓室に案内した。


 彼らを貴賓室に案内した後,料理をミズキとユズハに運ばせた。彼女たちを見て,検収人のひとり・星羽が目を見張った。


 星羽「なんと,,,美しい,,,」


 そうなのだ。ユズハと女装したミズキだった。


 ユズハは薄い化粧をしても美人だ。しかも胸はDカップの巨乳だ。どんな男性であれ,イチコロで参ってしまう。


 一方,ミズキは,カツラと厚化粧は当然として,偽乳はユズハの趣味でFカップとした。もちろん素手で触ると,ワタを布で覆った乳パットだとバレてしまう。でも,仮に触られても,ミズキには対処できる自信があった。


 多少の欠点はあるものの,ともかくもミズキは期待以上に美人に化けることができた。そもそも「ミズキ」という名前は,女性の名前にも使っても違和感はない。


 族長が彼女たちを紹介した。


 族長「ピンクの服を着ているのがユズハ,水色の服を着ているのがミズキです。彼女たちが,今晩,あなたがたをもてなします。まあ,それに免じて,,,農作物の検品の件は,,,」


 この言葉に,星影がニヤッと笑った。


 星影「世の中,魚心あれば水心ってな。フフフ,まあ,今回の検品はこれでみにがしてやらぁ~」

 星羽「そうそう,いつからこんな美少女が2人もいたんだ? こんなことなら,毎月でも来たいものだな。へへへ」

 

 星羽は,そういって飲み物を持ってきたユズハの腕を引っ張って,自分の隣に座らせて,着物の胸元から手を差し込んだ。その行為に,ユズハは一切抵抗しなかった。妖ナマコ族のために,,,ここは甘んじなければならない。


 族長は,『ユズハ』はまだいいとして,『ミズキ』が同様のことをされてしまうと,すぐに偽乳だとバレてしまう。それを恐れた。


 案の定,星影もミズキの腕を引っ張って,自分の膝の上に座らせて羽交い締めにして,偽乳のFカップもある胸の谷間の中に手を差し込んだ。


 グォーーー!!


 この音はミズキにしか聞こえない。そうなのだ。星影がミズキの胸元に手を入れた時,思わず屍気玉に触ってしまった。その際,星影の手が屍気によって汚染された。そのため,手から伝わる感覚が麻痺した。そんな手で偽乳を触ってもバレるはずがない。

 

 星影「フフフ,こいつのおっぱいもなかなかのものだ。今夜は一晩中楽しめそうだ」


 この言葉に,族長は内心『え? どうしてバレないの?』と違和感を覚えたが,バレないのはいいことだ。


 ミズキは族長にウィンクをした。その意味は,偽乳がバレなかったよ~,という合図だ。

 

 その後,星影と星羽に豪華な夕食の接待をした。


 族長「明日は,朝早くに海神さまへの供養祭がありますので,もう,そろそろ寝室でくつろいでいただくのはいかがでしょうか?」

 

 この提案に,お酒もちょうどよくほろ酔い加減になった彼らはふたつ返事でOKを出した。


 族長「では,ミズキ,ユズハ,彼らを寝室までお送りしなさい」

 ミズキ「分かりました。しっかりと明日の朝まで奉仕させていただきます」

 ユズハ「わたしも処女を差し出す覚悟です。安心してください」


 この言葉に,族長は悲しいやら嬉しいやら悔しいやら,なんとも言えない複雑な感情を覚えた。でも,ここはニコニコ顔で返事した。


 族長「いい心構えだ。しっかりと奉仕しなさい」


 族長は,ミズキとユズハがほろ酔い加減で,脚元が少しよろついた星影や星羽を片腕を自分の肩に廻して連れていく後ろ姿を見送った。


 族長の眼から涙が少しこぼれた。


 でも,族長は何もすることができない,,,


 寝室には,ベッドが2台備えられていた。ツインベッドだ。1台のベッドはかなり大きく,ダブルベッドの大きさがある。つまり,ダブルベッドが2台備えられていた。


 寝室に入るなり,星羽はユズハを,星影がミズキをベッドに上に押し倒して,彼女たちの服を脱がせた。


 パチーン!パチーン!


 それは,星羽と星影の顔がひっぱたかれる音だった。彼らは,いっぺんに酔いが覚めてしまった。


 星影「貴様! なんてことするんだ!」

 

 この罵倒に,ミズキがニヤニヤしながら返事した。


 ミズキ「もう,お遊びは終わりだよ」


 そう言って,ミズキは半分脱がされた服を完全に脱いで,ブラジャーを外した。そこから,偽乳のパットがポロンと落ちた。


 これには,星影がポカンとした。


 星影「え? なに? お前,男だったのか?!」

 ミズキ「ほんと,星影さまはアホですね。男の胸を触って気持ち良くなるなんて,あなた,変態ですか?!」

 星影「・・・」


 ここで星羽がユズハに質問した。


 星羽「お前も男なのか?」

 ユズハ「いいえ,わたしは女よ」


 ユズハも半分脱がされた服を完全に脱いだ。彼女は一切の下着を付けていなかった。Dカップの豊満な胸が露れた。


 星影は星羽に眼でサインを送った。その意味は,この場は力づくでミズキとユズハを押さえ込む!


 その直後,彼らは,右手から淡い黄色の光りが放ったかと思ったら,魃鬼と水香の周囲に淡い緑色した透明の球が構築された。ミズキとユズハはその球体の中に閉じこめられてしまった。


 星影「フフフ,どうだ? 泡力完全封鎖球の味は? その球には特別に空気を遮断した術を施している。2,3分もしないで窒息してしまうぞ。どうだ? おれたちの奴隷になると宣誓しろ。そうすれば,その封鎖球を解除してやるぞ」

 

 こんな状況になってもミズキやユズハはいたって平静だった。空気など,屍気玉や明鏡玉の亜空間に腐るほどある! 1時間や2時間,いや,何日でもこの状況で呼吸することが可能だ。 


 ミズキは屍気玉の魃鬼に,ユズハは明鏡玉の水香に念話して,この泡力完全封鎖球を破壊してくれるようにお願いした。


 魃鬼はその球の内側から屍気を流して破壊を試みた。水香も,悪霊曼荼羅界の分署にその封鎖球の解析を依頼した。


 3分が経過した。魃鬼も水香も,まったくなんら変化を起こさなかった。そして,とうとう5分が経過した。


 魃鬼はニヤッと微笑んだ。どうやら,球を破壊する方法を発見したようだ。 一方,水香の方も,悪霊曼荼羅界分署の解析班の努力で,封鎖球が気法術の結界と類似していることが判明し,純剣気によって簡単に切断できることが判明した。だが,そうしなかった。というのも,もうそろそろ球の維持に限界がきていたからだ。


 ポン!ポン!


 その音と共に,2つの球が破裂した。彼らが維持できる持続時間は5分が限界だった。


 星影と星羽は驚いた。あの球の内側で息できる時間は僅か1分にも満たない。もともと水香や魃鬼の体格ギリギリに合わせて球を構築するからだ。それでも,まったく呼吸困難な状況を呈しなかった。

 

 ここで,星羽が何か異様さを感じた。ユズハとミズキは,もしかしたら強者ではないのか? 仮にそうでなくても,ここは命乞いをすべき! 強者でないと分かれば,それなりの対応をすればいい。


 星羽は,いち早くその場で土下座した。


 星羽「どなたかは知りませんが,わたし,星羽はあなたがたの奴隷になります!」


 この行動には,ミズキやユズハはポカンとした。彼ら自身はまったくもって強くない。でも,自分たちの奴隷になってくれるのなら,それはそれでいいか?


 ミズキ「ほんとうに,奴隷になってくれるのですか?」

 星羽「あなたがたは強者であると感じました。その直感を信じます」

 ミズキ「・・・」

 星羽「はい! 奴隷として友好的に対応させていただきます」


 ミズキと星羽とのやりとりを聞いて,星影もそうべきだと思った。そもそも,弱者がこんなに威風堂々としているわけがない。


 星影も態度を決めた。


 星影「わたしも,お前達,いや,あなたがたの奴隷となろう」


 星影もその場で土下座して,恭順の意を示した。


 そのようにされては,ミズキもユズハも,それを受け入れるしかない。ミズキは,ここで強者のアピールをしてみた。


 ミズキ「あなたがたは,どうやら命拾いをしたようです。土下座するのがもう少し遅かったら,あなたがたの命,なかったかもしれません」


 ここで,星羽がミズキにお願いした。


 星羽「あの,,,よろしければ,あなたがたの強者としての能力を開示いただけませんか?」

 ミズキ「そんなこと?」


 ミズキは,さて,魃鬼にそんなことをお願いしていいのか,よく分からない。そこで,ユズハに振ることにした。


 ミズキ「ユズハ,見せてあげなさい」

 ユズハ「・・・」


 ユズハも,やっと明鏡玉に水香という霊魂がいることを知ったばかりだ。でも,ここは,水香にお願いするしかない。


 ユズハ『水香さま。あっ,女王さまって呼ぶ約束でしたね。女王さま。あの,,,女王さまの力の一端を示していただけますか?』

 水香『面倒いこと嫌いなのよ。でも,先ほどの泡力完全封鎖球を解析できたので,それを真似てみるのもいいかもね。右手を出してちょうだい。そこに術を展開してあげるわ』

 ユズハ『はい!』


 ユズハは,右手を繰り出して,その手の平に,直径30cmほどの泡力による『泡力完全封鎖球』を構築した。しかも,その色は,透明の紫色をしていた。


 星影「え? えええーー!! むっ,紫ーー?」

 星羽「てっ,仙人・天女レベル?!」

 

 ユズハは得意顔になってミズキを見た。


 ユズハ「お兄ちゃんは出来るの?」

 ミズキ「ふん,そんなの,お前だけの得意技ではないわ」


 ミズキは魃鬼にお願いして,同様のことをするようにお願いした。魃鬼も屍気以外に,気力を駆使できるし,泡力のメカニズムもだいたい理解していた。


 魃鬼はミズキの体にし屍気流を流して,ミズキの体の支配権を奪った。魃鬼は,水香に対抗して,右手に紫色の球を展開し,左手に一番レベルの低い白色の球を展開した。


 星影「ええーー?? 2種類の色違いの球??」

 星羽「まさか,,,こんな奇跡的なことが?!」


 水香も負けてはいられない。水香も,ユズハの体の中に入ってユズハの体を憑依して,さきほど構築した紫の球の下側に空間を開けて,そこから,左手を火炎にして,加熱した空気を送り込んだ。


 フワ~~!


 紫白の球がフワフワと浮遊していった。さらに,青色,緑色,黄色,赤色,さらに白色の球を構築して,それぞれの球を浮遊させた。


 星影と星羽は,もう呆然自失,,,ユズハとミズキを怒らせたら,われわれ海洋族全体がいっぺんに滅んでしまうことを悟った。


 星影と星羽は,改めて,その場で五体投地を行った。かつ,命令されていないのに,自主的に魃鬼の奴隷身分になることを宣誓した。それが,弱者の生き残る唯一の道だと知っていた。


 ミズキの体を支配した魃鬼は,この世界のこと,妖ナマコ族と妖ヒトデ族の関係などについて,星影と星羽に説明してもらうことにした。


 星影「ここは地獄界の海域です。われわれ妖海獣族は,海洋族とも呼ばれ,陸上族と区別しています。妖海獣族は王国になっていて,海底都市で生活しています。今の国王は,貴族階級の妖タコ族から選出されました。

 妖ヒトデ族も貴族階級に属します。ほかには,妖ウツボ族,妖ウニ族,妖サザエ族がいます。

 われわれ妖ヒトデ族は,いずれ陸上族の連中を支配することをもくろんでいますが,なんの準備もなしに,陸上族を支配をするのは困難です。

 そこで,この島です。この島で生活している妖ナマコ族を効率よく98支配する方法をいろいろ検討することで効率的な統治方法を模索しています。そのため,この島は,『実験島』とも呼ばれています。これまで,ある程度のことが分かってきたので,次の第二段階に入る予定です」


 魃鬼「第二段階?」

 星影「はい,今度は,実際に陸上族の小女を誘拐する計画です。特に,ユズハさまのような巨乳の小女を誘拐して,母乳を搾取して,栄養価の高い乳製品を精製する計画です。

 それが上手くいけば,第三段階として,量産体制を確立して,われわれ海洋族の人口を今の10万人規模から,一気に10倍増の100万人規模にまで拡大ですることになっています」


 魃鬼「なるほど。でも,そんな先の計画などどうでもいい。明日,海神さまの供養祭があるらしいけど,それは,いったい何をするんだ?」

 星影「供養祭,,,文字通り,貢ぎ物を海神さまに供える儀式で,祭司によって行われます。海神さまへの信仰心を高めるためです。海神さまに救いを求めることで,妖ヒトデ族たちの精神面での安寧を保つことを期待します」

 魃鬼「面倒くさいことをしているんだな。武力で妖ナマコ族を支配すれば簡単だろう」

 

 星影は,指を左右に振って否定した。

 

 星影「かつて武力で支配した時代もあった。だが,農作物の生産性に大きく影響が出てくる。だから,支配といっても,厳しい支配では意味が無い。最悪,反乱が起こってしまう。玉砕覚悟で反発されては元も子もないんです。海神さまへの信仰心によって,われわれへの反抗心を軽減してもらう策略です。でも,,,」


 星影は何か言いかけたが,これ以上言うのは避けた。


 魃鬼はだいたいのことが分かったものの,具体的にこれからどうしていいのか分からなかった。そこで水香に聞くことにした。


 魃鬼「ユズハ,これからどうすればいいと思う?」

 水香「え? 別に,命令に従うだけだよ~」

 魃鬼「・・・」


 魃鬼や水香が何も方針を持っていないと思った星影は,内心ニヤッとした。


 星影「ミズキさまに,特に方針がないのであれば,ここは,これまで通り,表向きはわれわれのシモベとして動き,われわれの仕事を手伝っていただけないでしょうか? わたしたちが手柄を立てると,さらに待遇がよくなります。あなたたちにも,より快適な環境を与えることができるようになります」

 魃鬼「ほう? 例えば,何を手伝えばいいんだ?」

 星影「大変困難な任務になるかもしれませんが,大陸族から巨乳小女2名を,海底都市の妖ヒトデ城に転送してもらうというものです」

 魃鬼「ほう? でも,どうやって大陸から転送できるんだ?」

 星影「王都の中央広場の噴水場に,隠し転送陣が設置されているんです。そこに,時間を指定してその場に,2名の巨乳小女に来てもらえばいいだけです。どうです? あなた方ほどの強者なら,出来るのではないですか?」

 

 魃鬼は水香に聞いた。


 魃鬼「ユズハ,どうだ? できそうか?」

 水香「まあ,この世界が,地獄界の海域だと分かったので,高出力の遠距離念話を展開すれば,もしかしたら仲間に連絡できるかも。ちょっとやってみるわ」


 水香は,最大出力の念話を試みた。


 キーーーン!


 星影「グァーー!!」

 星羽「いてーー!」

 魃鬼「水香! 止めろ!!」


 その念話は,あまりにも激しかったので,星影,星羽,さらには魃鬼も,その場で頭を抱えた。


 その叫び声に,水香は高出力の念話を中断した。

 

 しばらくして,やっと頭痛が治った魃鬼は文句を言った。


 魃鬼「おい,ユズハ! おれたちを殺す気か?! そんな高出力の念話をされては,霊魂が破壊されてしまいそうだ! 上空1km以上離れてから念話しろ!」


 ペロッと舌を出した水香は,窓を開けて,そこから妖力の翼を繰り出して,妖ハゲワシ族の飛行行動を真似て上空を飛んだ。


 星影と星羽はポカンとした。なんと,,,多才な巨乳小女なんだ?!


 彼らは,すでに『ミズキ』と『ユズハ』が海洋族ではないと判断した。というのも,一度に何種類もの色違いの泡力による球を出現することなど,海洋族では絶対に出来ないからだ。となると,伝承に聞く,仙界,もしくは神界からの強者か? でも,どうやら,『ユズハ』の方が『ミズキ』よりも強者のようだ。その点を星影は聞いてみた。


 星影「ミズキさま。あなたさまは,ほんとうにあのユズハさまをシモベにしているのですか? ユズハさまは,なんか,めっちゃくちゃ強者のようなんですけど?」


 魃鬼はニヤッとした。


 魃鬼「まあ,彼女は大陸族でも最高の強者だった。神人でも彼女に勝てる者はいないはずだ」

 星影「え? 神人でも?? なんと,,,でも,どうしてそんな強者があなたのシモベになっているんですか?」

 魃鬼「たまたま彼女の体を封印できた。それがある限り,あいつはおれの奴隷だ。ラッキーだった。もう,二度とこんなラッキーはないだろう」


 星影は大事な点を確認した。


 星影「でも,ミズキさまの命令ならユズハさまは,何でもいうことを聞くのでですね?」

 魃鬼「もちろんだ」


 この返事に星影と星羽がニコッとした。


 星影「だったら,わたしたちに,ちょっとは恵みを与えてください」

 魃鬼「恵みってなんだ?」

 星影「へへへ,ユズハさまは,なんといっても巨乳ですよ。ぜひ抱きたいものですよ」


 魃鬼は溜息をついた。


 魃鬼「彼女は,別名『大妖怪・水香』って呼ばれた大悪党だ。彼女を抱いて死んだ者,軽く何万人も超えてしまう。お前達,死にたいのか?」

 

 この言葉に,星影が反論した。


 星影「そんなの,ミズキさまが我々に対して,いっさいの被害を加えないで抱かれるようにとユズハさまに命じればいいんですよ。そしたら,おれたち,ミズキさまのために,これまで以上にむちゃくちゃ一生懸命頑張りますから!」

 魃鬼「・・・」


 まあ,こいつらが死のうが生きようがどうでもいい。一応は願いを聞いてあげよう。


 ーーー

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