第21話:異世界探偵の誕生
復興が進む王城のテラスで、優馬は穏やかな日差しを浴びながら、故郷の世界のことを考えていた。元の世界に帰る方法は、まだ見つかっていない。あの古書はどこへ行ってしまったのか、全く手がかりもなかった。
「ユウマ」
ふと、隣にリリアナがやってきて、優馬の隣に腰掛けた。女王としての日々は多忙を極めているはずだが、彼女の表情は充実感に満ち溢れていた。
「まだ、元の世界に帰りたいと思っていますか?」
リリアナの問いに、優馬は少し黙ってから、静かに首を横に振った。
「不思議と、今はあまり思わないんです。もちろん、家族や友人のことは心配ですが……。ここには、俺を必要としてくれる人たちがいる。俺が、守りたいと思う人たちがいる。それは、俺が探偵になって、叶えたかった夢と、どこか似ている気がするんです」
彼は、自分の居場所をこの異世界に見つけ出していた。
元の世界に帰る方法を探すことは、一旦やめよう。そして、この世界で、この国で、人々のために自分の頭脳を使おう。優馬は、そう決意していた。
「そう……。嬉しいです」
リリアナは、心から安堵したように、優しく微笑んだ。
水無月優馬。探偵になることを夢見ていた青年は、今、この異世界で唯一無二の存在となった。彼の論理と知識は、魔法と共存し、この国の未来を照らす新たな光となるだろう。
「異世界探偵」ユウマの伝説は、この日、静かに、しかし確かに、その幕を開けたのだった。
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