「信じられないのなら、証拠を見せてやる！」

　優馬は、懐から一通の古い手紙を取り出した。それは、地下迷宮のアデルの遺体のそばに、巧妙に隠されていたものだった。優馬が最後の探索で見つけ出した、決定的な証拠だ。

「これは、あなたのお父上が殺される直前に遺した手紙だ！そこには、彼を呼び出し、殺害した真の黒幕たちの名前が記されている！」

　優馬は、手紙に書かれた名前を読み上げた。そこには、先代の王に仕えていた、今は引退したはずの二人の重臣の名前が記されていた。彼らは、王家の血塗られた歴史が公になることを恐れ、和解を進めようとしたアデルと、そしてその遺志を継ごうとした現国王を、オルテガを利用して殺害させたのだ。

　全ては、王家の権威を守るという歪んだ忠誠心から起こった悲劇だった。

「そん……な……」

　オルテガは、手紙を受け取り、その震える文字を読んで、その場に膝から崩れ落ちた。

　自分の復讐は、全くの見当違いだった。自分は、父を殺した憎き仇のために、道化を演じていただけだったのだ。

「う……あああああああああっ！」

　オルテガの慟哭が、崩れゆく玉座の間に響き渡った。

　彼は、自らの犯した罪の重さと、取り返しのつかない過ちに、ようやく気づいたのだった。

「私は……何ということを……」

　彼は、全てを語り始めた。自らの悲しい生い立ち、父を殺された絶望、そして王家への憎しみを胸に、ただ復讐のためだけに生きてきた長い年月。

　呪いだと恐れられていたものは、たった一人の人間の、あまりにも悲しく、そして間違った復讐計画だったのである。

　彼の告白は、その場にいた全ての者の胸を締め付けた。憎むべき殺人犯。しかし、彼の背負ってきた運命を思えば、誰も彼を一方的に断罪することはできなかった。

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