第15話:黒幕の正体
地下迷宮から戻った優馬、リリアナ、アーロイの三人を待っていたのは、玉座の間で静かに彼らを見つめる、牢を破ってきたオルテガ宰相の姿だった。彼の傍らには、数人の武装した兵士が控えている。彼らはオルテガの思想に共鳴し、忠誠を誓った者たちだった。
「おかえりなさい、リリアナ様。そして探偵殿。過去の亡霊には会えたかな?」
オルテガの表情は、もはや温厚な宰相のそれではない。深い憎悪と、長年の計画が最終段階に入ったことへの静かな興奮に満ちていた。
「全て、あなたの計画だったのですね、オルテガ」
リリアナが、震える声で問う。
「いかにも。あの地下に眠っていたのは、私の父、アデルだ。父は、愚かにも王家を信じ、和解などという戯言を口にした。その結果、当時、まだ王子であったお前の父君に、この場所で騙し討ちに遭い、殺されたのだ!」
オルテガの言葉に、リリアナは衝撃を受けた。父が、そんな非道なことを……。
「私は、父の亡骸を見つけ、全てを知った。そして誓ったのだ。この腐りきった王家を、偽りの歴史ごと根絶やしにしてやると。そのためだけに、私は生きてきた!」
オルテガの憎悪が、玉座の間に渦巻く。
優馬は、静かに一歩前へ出た。
「あなたの復讐心は分かった。だが、あなたの計画は、もう終わりだ」
優馬は、集めた全ての証拠と情報を、最後のパズルのピースをはめるように、論理的に突きつけていった。
「国王殺害に使われた、遠隔硬化する魔法触媒。あれは、宰相であるあなたの権限がなければ、エリザールの研究室から持ち出すことは不可能だった。持ち出し記録が、その動かぬ証拠です」
「第二王子アルフォンスの殺害。これは、侍女アンナが、あなたが王子を唆している現場を目撃している。彼女は今、我々が保護しています」
「そして、私に送りつけてきた脅迫状。あの特殊な紙とインクは、あなたがエリザールを脅して作らせたものだということも、彼の証言で分かっている」
優馬は、最後に地下で見つけたペンダントをオルテガの前にかざした。
「これが、あなたの血筋と、あなたの動機の、何よりの証拠だ。あなたは、父の復讐のために国王を殺し、罪のない王子までも手にかけた。これが、事件の全ての真相です」
優馬の言葉に、オルテガは反論しない。ただ、肩を震わせ、静かに笑い始めた。
「ははは……素晴らしい! 実に素晴らしい推理だ、探偵殿! まさか、ここまで全てを暴かれるとはな。だが、遅かった。もう、何もかもが手遅れなのだよ」
オルテガはそう言うと、両手を大きく広げた。彼の足元、玉座の間の床に刻まれた巨大な魔法陣が、不気味な紫色の光を放ち始める。
「最後の対決と行こうじゃないか。この城の、そしてエクリア王国の、最後の幕引きを、特等席で見せてやろう!」
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