再誕
境 架佳
本篇
僕には勝手がわからなかった。人の感情の発露や遷移にとても疎い自覚があった。今まで関わってきた全ての人に告ぐ。
君たちに僕が何をされたのか一から説明して欲しい。と。
僕は彼らに憎しみを抱かなかった。抱くことに何か僕に利点があるのかと言えば、精々将来学生時代の記憶が鮮明に思い出せる、といったことだろうか。記憶力は人の認知能力に関係すると小耳に挟んだことがある。誰からかは知らない。そういうところなのかと一人で得心してしまった。彼等は僕に何をしたのか、そして僕は彼らに何をされたのかその事実確認がしたかったのだ。あくまで確認だ。確認にすぎない。人は必ず主観に囚われ、神のいる所から僕たちを見ることはできない。だって僕には神になれない一般ホモサピなのだから。しかし僕の真っ直ぐな問いに彼等は、僕の平静に、顔を歪ませていた。僕の表情筋が味気なかったのだろうか、美味しくはないが味はあるのだと思っていたのだけれど。そこにこだわるべきではないか。べきじゃないな。
事実は好きだ。何も変化しない。捻じ曲げることは決して悪だと共通に自覚している筈だ。だけど、感想は違う、僕の苦手にするところだ。結局ソレは自己中心の産物にすぎず、事実は無いか。もしくは副産物になってしまう。彼等は。
ぼくはこう思う、と口々に並べた言葉をドッチボールが高いな君達みたいな体をした人たちがが投げたように僕に罵った。これも主観だ。
僕には神はいると思う。時折阿保なりに考えることがある。世界には救いがない、救いようがない、見ているだけだと糾弾する声があることを知った。救いの手はないと思う。世界に介入できたら僕の存在価値はないから、存在を認めてくれるのが神だと思う。だから信じているのだろう。
興味がないと思う。僕が辿り着いた結論であり救いようはなかった。僕なら放置する。罪という倫理を認知の中でおままごとしながら、フィクションのというもう一つの血に従って包み込まれている。血には叛逆できない。僕たちの素をつくってくれた神は微笑ましく見てくれるほどほど僕たちは綺麗じゃない。彼等に僕が写っているのか分からない。推測を物語っても事実にはなり変わらない。何かはにかみながら話しているのが耳に届いた。そうか、僕が無言だったからだ。この間借りした僕たちには無限じゃないからだ。不気味なのはいつも通りだ。僕と同じ年でこれを考えるのはいかれてる。同士だけれど仲良くはなれない気がする。
罪は拭っても拭っても取れない血まみれの雑巾と同じだ。罪は償えないから罪なのだ。子供の謝罪で子供が許せてしまってはそれはさ。じゃれあいになるのだ。ならば、僕がされたことは罪には問えるのか。問えることが美徳ではないのもひとつあるが。明確に倫理観の欠如した行動を僕にぶつけたのは君たちだ。君たちは僕になにをしたんだ。それを僕に教えて欲しい。と問うた。
言えない。と逃げたのは僕のこと見ていないと意味していた。
可哀想に。可哀想でならない。君たちは歪んだ病んだ心が僕のような外面が鼻についた僕に理性を壊せと投げかけたのだ。僕も君たちもこの社会の構造の被害者なのかもしれない。神さまはこのことを見てなにを思うだろうか。
嘲笑って親指を地に向けるのだろうか。
慈しんで僕のことを包んであげたくなるのだろうか。
もしくは、何も思わないのか。
僕は今も身体が悲鳴をあげている。頭は平静を装っても身体はそうもいかないみたいだ。
だったら僕は苦しんでいよう。君たちも何かおかしいのか自覚しているのは理解している程、人間を辞めてしまったとは思えない。心は堅く、そして割れる時は刹那的に。僕は皆んなに愛を与える。だから僕は皆んなと一緒に苦しんであげたいと思ってしまうのは高慢だろうか。
また。願うのであれば。僕がまた生まれた時は自分は、願わくば。誰かの何かになりたいです。
再誕 境 架佳 @Le_mikann
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