4話「もう友達には戻れない」
「っ…………!」
びくりと落合は身体を震わせる。
青ざめた顔で視線を彷徨わせた後、自身の罪を正直に認めた。
「そうよ。私が盗んだ……萌子のイラストの才能が羨ましくて……妬ましくて……。私は何も結果が出せていないのに、あの子ばかりがどんどん進んでいくのが許せなかったのよ」
「……そうですか」
涙目で拳をぎゅっと握る落合。
その声音にはどうしようもないやるせなさが滲んでいた。
「それで落合さん。イラストを返して貰えませんか?」
「……返すわよ。萌子にも言えばいいじゃない。私が盗んだって……あんた達、確か噂の探偵なんでしょ?あの子がイラストを盗んだ犯人を探すよう頼んだ……違う?」
イラストを受け取ると、夜道は丁寧にそれを預かった後、首を振った。
「いいえ、僕たちに依頼されたのはイラストを探すことです。犯人を特定することではありません」
「は……?」
「落合さん。これは拾ったことにしておきます。そうすれば、貴方と沼田さんは友達に戻れます」
「……っ!!戻れるはずないわよ!」
顔をぐしゃぐしゃに歪めて、落合は叫んだ。
「私がやったことは消えないわよ!親友なのに……嫉妬なんて醜い理由で盗んだ。……捨てようとした。もう、友達になんて……」
「僕が黙っていればバレませんよ。そもそも捨てるならさっさと捨てれば良かったのに、大事に持っていた。そして、貴方はこんなに後悔している。それは大事な友達だから、踏み切れなかったんじゃないんですか?」
「なんでそこまですんのよ!?あんた、あの探偵とやらにいつもべったりしてんじゃん。裏切っていいの?」
その発言は夜道が旭に従順な様子を学校で見かけていたからだろう。
しかし、夜道は否定する。
「確かに僕は旭様に心酔していますけど、別に操り人形でも、従順な犬でもない。自分の意思でこうした方がいいと思ったらから、旭様に黙って行動してるんです」
「…………」
「だから、落合さ………」
「〜〜〜〜っ!!うるさいっ!」
感情が決壊したように、落合は夜道を強く突き飛ばす。
そして、踵を返して走り去ってしまった。
「ーーおい、夜道」
ふいに、背後から旭の声がした。
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