第7話

「我々地の民は、リフティフ神から直々にめいを授かっている。この地を守り抜くように言われ、我ら祖先は今まで生きてきた。この地から決して離れず、他所よそ者に明け渡さぬように」

「つまりシャトルに乗るのは、それに反するってことか」

 ソーライの言葉に、ばば様は力強く頷いた。

(なんとなく読めてきたぞ)

 リフティフ神がこの世に存在したのかどうかは分からないが、ここにクーリングスポットがあることは間違いなさそうだ。

 古代、地の民と呼ばれるものたちは、どうにかしてここがそのツボであることを突き止めたのだろう。それが発見できるほどの頭脳を持っていれば、これが悪用された場合の結末を予想するのは容易たやすい。

 そこで、この場所を『神』というふうに具現化して崇め奉り、建物で覆って、さらにそこに住む者たちに守らせている。

 とまあ、こんなところだろう。

「でもさ。そうやって神様の言いつけを守ったところで、このまま地の民がみんな死んじまったらどーするんだ?」

 ソーライは質問した。

「どうする、とは?」

「だって、もしこの熱が収まったら、また人は戻ってくるだろう? そのとき、ここに誰もいなかったら、別の人たちが住み着くのは目に見えている。神に託されたこの場所が踏み荒らされるかもしれないぞ」

「そうか……。そうだな、だがもう遅すぎる」

 ばば様はようやく思い当たって目を伏せた。

「今からシャトルをとばしたところで、熱波に耐えられず燃え尽きてしまうだろうな」

「じゃあさ、俺に賭けてみない?」

「どういうことだ?」

「実は熱暴走を止める方法を知っている……って言ったら信じる?」

 ばば様はしばらくソーライの顔を見て考えあぐねていたが、ちらりとナルハの顔を見やると、ソーライに向き直り静かに頷いた。

「信じよう、そなたの言葉」

「そうか! ありがとう!」

 端末を確認すると、残り時間は五分といったところ。もうこれ以上、ゆっくりしてはいられない。

「して、我らは何をすればよい」

「特にすることはない。ただ、この建物から半径五十メートル以内に入らないようみんなを避難させてくれ」

「それだけでいいのか?」

「ああ。ちょっとのあいだ暑いだろうけど、少しだけ我慢して欲しい。すぐに鎮めるから」

「分かった。ナルハ」

 ばば様の呼びかけにナルハはひとつ頷くと、建物の外に飛び出していった。それを見届けて、彼女はソーライに向き直る。

「そなたはどうする」

 その質問に、ソーライは端末を持ち上げた。

「俺はこいつでVT166を見つける」

「VT166……そうか。ならばこちらへ来るがよい」

 そう言うと彼女は立ち上がり、ゆっくりと祭壇の裏へ向かう。それから、祭壇を覆っている布を持ち上げた。

 後ろからその場所を覗き込むと、床に扉がついているのが見える。

 彼女は「開けろ」と言わんばかりに、無言で見上げてきた。

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