(Q)篭城

鈴星

 暑い夏の日、俺は篭城した。

 今までの居場所に不満があったんだ。キツイぜ、ほんと。


 もううんざりだ!と別の居場所に探すこと数時間、運命的な出会いを果たした。


 城だ。比喩でもなんでもなく、城があったのだ。

 しかも誰も住んでいない。幸運だ。


 そりゃあすぐに住み着いた。俺はこだわるタイプだが、これはもう一目惚れってやつだ。


 誰にも取られないよう、入口で見張る。幸い同業者は来なかった。


 しかし、そろそろ日暮れという頃、重大な事実に気づいた。


 ――移動できない…!


 これじゃ他のやつに見せびらかすこともできやしない!


 夕日が差す頃、さらに重大なことに気づいた。


 ――浸水している!


 玄関の反対部分から城が崩れていた。

 気づいた頃にはもう崩壊寸前。建て直す力なんて俺には無い。


 新しいヤドを探さなくてはいけない。しかし移動ができないこのヤドでは、探しに行くために裸にならなければいけない。

 さっきまでのヤドはいつの間にかどこかへ消えていた。





 ついに城は波にさらわれた。

 俺はヤドナシになった。


 ――誰か、ヤドをかしてくれ……。






 答え

 ↓










 ヤドカリ


 ※ ヤドカリはこだわりが強いです。貝選びは真剣に行います。

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(Q)篭城 鈴星 @seika-bell

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