第3話

 この世界にダンジョンという物が出現したのは、もう半世紀は前だろうか。


 歴史の教科書に稀代の天才、世紀の悪魔と評される事になる一人の人物。

 エリク・ルーシによる科学実験の産物だった。


 彼はアカシックレコードは虚数世界にあると導き出し、そこに接続する為の装置を作り出した。

 そしてその装置の暴走によって、虚数世界にある情報がダンジョンとしてこの世界に出現したのだ。


 残念な事に、この事故の所為でエリクは死亡。

 実際には死体すらなくなっているので生死不明ではあるが、実験の時には既に老齢となり、さらに半世紀もすぎればどの道生きているはずがないので、教科書には死亡と載っている。


 またその時に装置も消えてしまったのだが、それを期に、ダンジョンは無差別に出現する様になってしまった。


 ダンジョンの中は虚数世界であり、実数世界の人間が入るとたちまち形を保てなくなり、そうなればたとえ実数世界に戻っても二度と人の形には戻れる事はなかった。


 遅々として進まないダンジョンの調査。


 そこに画期的な方法で攻略が進む事になる。


 それは攻略を中継して、実数世界の他者が観測するという物だった。

 それによって初めてダンジョンの攻略という一歩を踏み出す事が出来るようになったのだ。

ちなみに、今のダンジョン配信はこの時の名残りであり、たまたま過去の歴史として放送されたダンジョン攻略の映像がバズった事を発端としている。


 ダンジョン内は不思議な事に、形が定まっていなかったのだが、その実数世界からの観測によって探索者だけでなく、ダンジョンの形を安定する結果になった。


 ただし、これはメリットもあるがデメリットも大きかった。


 観測とはすなわち主観が入る物であり、多くの人がダンジョンといえばモンスターを想像した結果、ダンジョン内には多種多様なモンスターが出現する事になる。


 危険なダンジョン攻略となってしまったが、何人もの命を犠牲した結果、ダンジョンを攻略する事が出来た。


 それは観測という手段を用いて、人類は画期的なシステム、科学アイテムを作り出す事に成功した事が大きかった。



 実体とは虚数の影である。



 という科学説を逆に用いて、指輪型の観測装置を持つ事で、ダイバーはダンジョンに潜る事で実数の体ではなく、虚数の体を構築してダンジョン攻略をするという物だ。

 実際の体は実数世界にあるので、虚数世界で死亡しても問題なく実数世界に帰ってこれるという仕組みである。


 ダンジョンの最深部には、かがやく球体。

 アカシックレコードに接続出来る装置だけがあった。

 そして最初に触れた者はそこから知識を得る。

 アカシックレコードとは『なんでも願いが叶う願望機』だと。

 ただし、一つダンジョンで叶えられる願いは一つだけであり、その知識を得た事で最初のダンジョンは消失してしまった。


 そこからもう大航海時代よろしく、ダンジョン攻略時代が始まり、ここで初めて民間の探索者たちがダンジョンに潜る事が許されたりした。

 ダンジョンに潜る。虚数世界に潜る。そういう意味を込めて、探索者を【ダイバー】と呼ぶようになったのもそれからだ。

 

 また、最初のダンジョンの観測で固定された概念により、まるでゲームのようにモンスターはアイテムドロップしたり、虚数体にはレベル、ステータスなどが観測という形で勝手に付与させる事になっていた。


 まぁ、長々とそんな説明をしたが、すでにダンジョンがある事が日常になっている世界では、仕組みなんてどうでも良い事だ。


 そんな事を考えながら、家に帰ってきた葉月は自室でパソコンを起動させた。


 動画アプリを起動させて、目当ての配信を探す。


「えっと、なんだっけ? ケロロン? いや、エルルン?」


 思いついた単語で検索していくが、興味がなさすぎてなかなか思い出せない。それでも友のご機嫌取りの為に頭を悩ませながら思い出せば、


「あぁ、エリリンだったけ?」


 中途半端に思い出す事は出来た。


 検索をかければ、ヒットする。

 しかもライブ配信が丁度始まるところだった。


「まぁ、違っていいか。後で宏斗に聞いて口裏でも合わせよう」


 最終的に面倒くさくなって、葉月は当たりかどうかわからないその配信を見る事にした。



 

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