エピローグ「賢妃様と獅子王の甘い日常」
俺がカイゼルの番となってから、一年が過ぎた。俺は民から『賢妃(けんぴ)』と呼ばれるようになり、王の伴侶として、そして国政の相談役として忙しくも充実した毎日を送っていた。
俺が今、最も力を入れているのは『学校制度』の設立だ。すべての子どもたちが身分に関係なく、文字の読み書きや計算を学べる場所を作る。それが、この国の未来をさらに豊かにすると信じていた。
「ミコト、また根を詰めすぎだ。少し休め」
執務室で設計図と睨めっこしていた俺の肩を、後ろからカイゼルが優しく揉む。すっかり過保護になったこの獅子王は、俺が少しでも無理をするとすぐにこうしてやってくるのだ。
「でも、カイゼル。この部分の予算が少し……」
「その話はまた後だ。今日はもう終わり。城下へ行くぞ」
「えっ、お忍びで?」
「たまにはいいだろう。賢妃様は働きすぎだ」
結局、カイゼルに半ば強引に連れ出され、俺たちは商人風の簡素な服に着替えて城下町を散策することになった。
街は、俺が来た頃とは比べ物にならないほど活気に満ちている。整備された街道を荷馬車が行き交い、清潔な井戸の周りでは女たちが笑い合っている。道端の食堂からは、保存食を使った新しい料理のいい匂いがした。
「賢妃様だ!」
誰かが俺の顔に気づくと、あっという間に人だかりができた。
「賢妃様のおかげで、今年の冬は腹を空かせずに済みそうです!」
「うちの子、賢妃様が作った石鹸で手を洗うのが大好きなんですよ!」
皆が笑顔で、感謝の言葉を口にしてくれる。その光景に胸が熱くなった。俺の知識が、こうして人々の幸せに繋がっている。
隣を見ると、カイゼルが満足そうに、そして少しだけ自慢げな顔でその様子を眺めていた。
その夜。城に戻り寝室で二人きりになると、カイゼルは俺をベッドに押し倒した。
「今日は、よく頑張ったな」
「か、カイゼル?」
「民のために尽くすお前は、誇らしい。……だから、褒美をやろう」
耳元で囁かれる甘い声に、身体が蕩けてしまいそうになる。
「知識の、褒美だ」
そう言って笑う彼の黄金の瞳には、獰猛な獣の光と俺だけに向けられる深い愛情の色が混じり合っていた。
激しい愛撫に翻弄されながら、俺はぼんやりと思う。
役立たずと捨てられた俺が、こんなにも幸せになっていいのだろうか、と。
でも、腕の中の温かさと絶え間なく注がれる愛情が、そんな不安をすべて溶かしてくれる。
ここは俺の居場所。この人の隣が、俺の世界。
太陽の隣で輝く星のように、俺はこれからもこの愛すべき王様と共に、この国の未来を照らし続けていくのだろう。
幸せに満ちた二人の物語は、まだ始まったばかりだ。
魔力ゼロの『外れ聖女(男)』、 追放先で知識を武器に国を改革したら、孤高の獅子王に「お前は俺の宝だ」と唯一無二の番として激しく求められる 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi
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