一つ眼の夢
無意味の意味
一つ眼の夢
ここのところ嫌な夢観てたんですよ。
決まって一つ眼の少年が遊ぼうって誘いに来るんです。
わたしは当たり前の気分で一緒に出掛けるんですけど、いつの間にかどこだか分からない丘の上に立ってて。
傍には一つ眼の彼だけがいて、「寒いかい、寂しいかい」って訊いて来て、そこで目覚めるんです。
嫌な夢なんて幾らでもあるでしょ?
なのにその夢を観た後はずっとモヤモヤして。
寝室を自分のじゃなく居間にしたりもしたんですけど、扉を開けて彼が入って来て後は同じ展開。
家族も心配してるのでその夢の話をしたんです。
その晩ですね。
母親が「今夜もその夢観るようだったら、明日みんなで出掛けるから」と。
よく理解出来なかったんですけど、眠くなったんで自分のベッドで眠りました。
その夜も一つ眼の彼が現れて。
母親はその話で決心したみたいな感じ。
で、休暇を取った父親と弟と四人で出発して、どこに行くんだろうと思ってたら結構な山の上。
「ああ…」って母親が声を上げたの憶えてます。
そこは古い墓地で、誰も手入れしてないのか草が伸び放題。
呆然としてたら母親が人数分の鎌を持って来て「さ、草刈り」って。
楽しいわけじゃないんですけど何故か「必要なことだ」って気分になってました。
草刈りが一段落した時に、母親が切り花と線香を手にしてて、とある墓石に供えてました。
で、「これはあんたたたちの曾御祖父ちゃんのお墓。昭和20年に復員したんだけど、帰国後すぐに病気で死んだって。帰国した時には戦傷で片目がなかったって。わたしが知ってるのはその話とお墓の場所だけ。今まで忘れてて寂しい思いさせてたかも。『一つ眼』ってことでわたしが思い付くのはそれだけ。あとは近くのお寺でお経挙げてもらいましょう」
因果関係は不明ですけど、以後「一つ眼の彼」は夢に出て来なくなりました。
一つ眼の夢 無意味の意味 @kokurikokuri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます