第3話 ミネストローネとオムライス

 ドアから顔を出す。長く入りすぎただろうか。温かいお風呂につかる。憧れが一つ現実になってしまったのだから仕方ない。こちらに気づいた青年が慌てだす。

「もうでたの?待ってもうちょっとだから。」

 たしかにいい匂いがしている。ゆっくりキッチンに近づく。小さな鍋の中にはたっぷりとミネストローネが入っている。

「アレルギーとかないって言ってたよね。口に合うといいんだけど。」

 青年は木の皿に盛り付けられたオムライスに、フライパンからデミグラスソースをかけた。

「持ってくから座ってて。」

 言われるがまま席につく。青年が机に料理を並べた。湯気が立っている。美味しそうだ。

「どうぞ。」

 正面に座った青年の言葉に小さく頷いてからミネストローネをスプーンですくう。

「美味しい。」

 本当に小さな声だったが、青年は顔をパッと明るくした。

 しばらく食べていて気づいたが、ずっと見られている気がする。正面を見てみると青年の料理は殆ど減っていない。目が合うと、慌てた様子でスプーンを手に取り、オムライスを口に運んでいた。

 何を考えているのだろう。わからないことが多すぎて、申し訳ないが正直気味が悪い。

「お風呂入ってくる。ミネストローネはおかわりあるから好きにして。」

 青年が早口で言う。目があった後、慌てて食事をかき込んでいた青年は、あっという間に食べ終わり、逃げるように早足で去っていった。

 

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2026年1月17日 20:00

花の守護者 レア @patronus

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