第2話 急に語り出すやつ ぱーとツー
……えーと何処まで話しましたっけ。
……ああ、思い出しました。私の前世の実家についてでしたよね。
それでは、私が死んだ時について話しましょう。
§ § §
「それで……ここが例の場所か」
「ええ、そのとおりですよ、和也お坊ちゃま。」
まだ一人称がオレだった頃。
オレ……私はとある工事現場に来ていました。
工事現場と言っても、建物だったり、道路やダムだったりを
もっと大規模な、それこそ歴史の教科書に載るような大規模プロジェクト。
「ここが……大鑽井盆地……」
「はい。そして───
『中央灌漑計画』。
それは、
そこに広がる巨大な砂漠地帯に巨大な人工湖を形成し、緑化及び農地の拡大を進める事を目的として立案されました。
元々緑溢れる土地が限られていた上、内陸部の乾燥地帯で行っていた畜産業も需要に限りがあって、
そのため、内陸部に広がる広大な乾燥地帯の緑化は、昔から考えられてきた事でした。
結局、緑化を現実にできるほどの案もなく、諦めていた時。
先代の織田家当主、つまり私のお祖父様は、帝國軍の新型爆弾の開発に土地の提供という形で協力していた時、その爆弾───原子爆弾の威力を見て、天啓を得ました。
───そうだ、
その後に始まった戦争で
───そして今。
私が居るのは、
大鑽井盆地と呼ばれる巨大な乾燥地帯。
そこでは、原子爆弾の威力でもって豪快に地面を掘り返そうという野心的な計画に基づき、爆弾本体も含めた様々な機材が集まっていました。
そんな場所を私は「視察」という名目で遊び……ゴホン、見学に来ていた訳です。
……だって気になるでしょ?
計画を推し進めたお祖父様は、先月星になってしまいましたけど、あの豪快な人が魅せられた、人生を賭けた計画。
歴史的瞬間だけでなく、その前の事まで目にしておきたいと思うのは当然だと思います。
……で。
結局、私はその日の昼食を摂る前に、お祖父様と同じで星になってしまったわけです。
……ああ。
「
私の、私の最期に見た光景は───
地上に顕現した
まさに、神話の如き世界でした。
お祖父様、今なら何故あんなに核実験の写真ばっかり集めていたのか分かる気がします。
あなたも魅せられたのですね。
あの、人間などではどうしようもない圧倒的な力。
摂理、真理、法則。
この世の善も悪も、森羅万象焼き尽くし、消し去る姿。
───………。
生まれてこの方、神など
───……ぃ……。
ああ……神よ、我をお赦し下さい。
御身の偉大さを死ぬその時まで気付けなかった愚かさに。
───…きろ……!
……もし。
もし、次の生があるならば。
───…きろ……ニ…!
我が身は御身のために───
「起きろッ! 無礼者ッ!!」
「うぇっ?」
大声が耳元で鳴り響き、私は反射的に顔を上げました。
……なんだか、懐かしい夢を見ていた気がします。
死ぬ直前、我が神より啓示を授かった時のこと。
「まあいいではないか。彼女も疲れているのだ」
「しかし……
……今でも私の中で生き続ける、私を私足らしめる
………。
さて、そろそろ現実を見ましょうか。
顔を上げてまず目に入るのは、金ピカが一杯使われた豪華絢爛な天井や壁。
そして今私が座っている、重厚な印象を受ける木製の大きな会議テーブル。
大きな窓からは日が差して、テーブルの上にある資料を照らしています。
この部屋には私以外にも、何人もの人が座っています。
……が、その中で資料を手に取ってないのは私だけみたいですね。
……察するに会議中に私だけ居眠りしたみたいです。
何故かこちらを睨んでくる人がいるな、とは思いましたが、そういう事なら納得です。
ごめんなさい、今ざっと目を通したので許してください。
結論から言うと、凄く見たくない内容でした。
「とは言え、だ」
状況の理解に努めていると、一人の声が響きました。
一言で言うなら、イケメンカリスマボイス。
二言目には「モテそう」。
まあ、前世の私程ではありませんが。ええ。
ちなみに私の前世でお付き合いさせて頂いた女性はいません。
……作れなかった訳ではありません。作
「お見合い」という、生涯の伴侶と顔を合わせる事を余所の家ではやると聞いたことがあるので、私もいつか会えるんだろうと思ったんです。
ところがギッチョん(死語)。
「お見合い」がある筈の友人達は、次々と学校で女性との付き合いを始めたので、「ああ、彼女達が友人達の『お見合い相手』とやらか」と思っていたらどうやら違う様で。
その件に関して、友人達に問い詰めたところ、呆れながらも教えてくれました。
「恋人は自分で作るものだ」
どうやら『お見合い相手』と『恋人』は別の存在だった様です。
それに、『お見合い相手』イコール『生涯の伴侶』は絶対のものではなく、『恋人』イコール『生涯の伴侶』となるケースもあるのだとか。
「自由恋愛」と言うそうです。
そして一番問題だったのが、何気人生で五指に入るレベルのこの事実を、久し振りに家族全員が揃った夕食で共有した時でした。
私の父が、ポツリと言ったのです。
「あっ、うちはお見合いしないからな。自分で相手見つけてこいよ」
お父さんもお母さんを巡って、大親友と殴り合ったものだ。
そう言って笑うのを横目に私の心の中は、
───どうしよう。
そんな考えで一杯でした。
---
前世で主人公は、赤ちゃんはコウノトリが運んできてくれると思っていたそうです。カワイイね。
尚このせいで、いつまで経っても女性経験がないままなので、主人公の友人達と、織田家と付き合いのある親世代は焦りまくったそう。
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