ダモクレスの魔法使い 〜TS転生者は異世界で核をぶっ放す〜 

とりさん

第一章 色々あった後の話

第1話 急に語り出すやつ ぱーとワン


 突然ですが、「転生」という言葉をご存知ですか?

 最近流行ってますよね。


 ライトノベルとかでよく題材となっているのを、皆さんも見たことがあると思います。


 そんな物語の中で、主人公乃至登場人物というのは、一度死んでもう一度生まれ変わる───という流れが基本です。



 ではどの様にして死んだのか?



 そう問われて調べてみると、「転生」という『結果』は同じであっても、そうなる『経過』というのは実に多岐に渡ることに気付くと思います。



 ───例えばトラックに轢かれたり。


 これは定番中の定番ですよね。俗に言う「転生トラック」というやつでしょうか。

 気付いたら目の前にトラックが……ってヤツですね。


 その後、転生の間に案内されるのか、それとも来世にダイレクトシュートされるのか。割と五分五分なところ、あると思います。



 ───例えば後ろから刺されたり。


 通り魔だったり、痴情のもつれだったり……。まあ、人生と色々ありますよね。


 稀に強盗と取っ組み合って前から刺される事も……。

 その時は、「あの子を守れてよかった」と未練なく来世に行けますね!!



 ───例えば神様の手違いで亡くなったり。


 これは酷い。神様に怒っても仕方が無いし、自分が生き返るわけでもない。

 天涯孤独の身ならまだ良いんですが、家族や愛する人を遺した場合……。


 まあ切り替えていきましょう!! 幸いな事に神様の殆どは、その事に罪悪感を感じて素敵な来世をプレゼントしてくれます。ヨカッタネ。



 ───例えば過労死したり。


 毎日のブラック労働で精神を擦り減らし、ある日ぽっくりと……ってな感じですね。

「貴方は脳卒中で死にました」とか言われるんです。


 あとはお酒を飲んでそのまま……みたいな事もありますね。

 寝て、起きたら既に魂だけになってたりするわけです。





 ……さて。


 こんな話をしてる時点で、薄々察してくれた方もいるかも知れませんが、私もまた、こういう経験───つまり転生をした訳です。


 とは言え、私/ボク「俺」オレ」僕自|分………。


 ……取り敢えず、と言っておきましょう。


 いけませんね。時々一人称がバグってしまいます。


 一人称というのは、自分のアイデンティティを確立するのに大事な要素。

 これがブレるのは宜しくありません。





 ……では話を戻しましょう。


 私は転生しました。


 死因は何だったのか?


 それは……まあ事故というヤツですよ。


 運が悪かったんです。





 少し私の身の上を語りましょう。


 まずは、前世を。


 ……私の前世は、いいところの跡取り息子といった感じです。

 まあ由緒正しいお家というわけです。


 産まれた時から不自由な事がなく、欲しい物は言えば手に入る。


 屋敷があって、使用人も多く勤めていましたし、行事事になると、決まってスーツを着込んだお偉いさん方が高そうなお菓子を持ってきてくれました。




 まあ、そんな勝ち組だったのです。





 ……家庭はどうだったのかって?



 余所のお家でよく聞く、家族の愛情が〜とか、お前は将来この家を継ぐ者として〜とか。

 そういうのは無かったです、はい。


 仕事の規模が規模なので、毎日会えるわけでは無かったですが、なるべく家族のために時間を作ろうと努力する良い父親だったと思いますよ。


 他の家族───母親や可愛い弟と妹とも、適切な距離を保って、お互いに尊重し合える関係でしたし。


「金持ち喧嘩せず」とはよく言ったものですが、私の家族もまた、会う時はいつも笑顔が絶えなかったと思います───別に喧嘩しなかった訳では無いですが。


 まあとにかく、私の家族は仲良しで、とても健全な関係を築いてた、ということです。





 前世の名前は……え〜と、はい、思い出しました。


 ……いや、仕方ないでしょう。その名前を最後に使っていたのは10年以上前・・・・・・ですよ?

 そりゃ直ぐに出てきません。


 私の前世の名前は、織田和也(おだ・かずや)。

 かの有名な織田家の血を継ぐ者。


 しかも本家の、ですよ。次期当主様です。




 ……何?織田家を知らない?




 仕方ありません。少し歴史の授業です。

 とは言っても、私もうろ覚えな所が多いので流しになりますが。



 ───その昔。


 まだ蒸気機関も発明されてない頃。

 まだ木造の帆船が主流だった時代。


 かの有名な探検家、子龍附子ころん・ぶすが新大陸───亜米利加アメリカ大陸を発見した時代。


 俗に言う「大航海時代」。


 古の時代からの積極的な海外進出により、既に東南亜細亜アジアにて海上覇権を築いていた我が国、日本帝國。



 そんな我が国が、凄まじい犠牲から目を逸らしつつも新たなフロンティアアメリカ大陸の開拓に全力を賭し始めた頃、なんとかビックになりたいと考えていた当時の織田家当主、織田信長は考えました。



「必死に生きてこそ、その生涯は光を放つ」や「仕事は探してやるものだ」など、とにかく動く事を重視していた織田信長は、それはもう考えました。



 考えて、考えて、考えに考え抜いて───。



 いつの間にか帝國軍人になっていた彼は、当時最悪最大のテロ事件、通称『本能寺の変』の際、事件の首謀者であった明智光秀を撫で斬りにした時、遂に思い付きました。





 ───そうだ、植民地帝國創ろう。



 思い付けばすぐ。


 私のご先祖様はその行動力でもって、即日に軍人を辞任。


 事件解決の報酬として、当時「砂だらけの巨大島」として、余りの貧しさに有名だった豪州オーストラリア大陸の植民地、『豪州植民地』を総督の任命権ごと・・朝廷から下賜してもらったそうです。


 その後に織田信長は、一門を引き連れて現地入り。

 その持ち前のカリスマ性と豪胆さでもって、植民地を取り纏め、開拓を進め───。


 まあ、あとは分かるでしょう。


 掘れば出るわ出るわ、金に宝石にその他沢山。


 加州カルフォルニアのゴールド・ラッシュが終わりかけていた頃、新たな黄金郷として注目を集め、移民ラッシュが発生。


 人口が増えれば、新たに産業が産まれ、都市は拡大し、収益は上がり続ける。


 蒸気機関が開発され、産業革命が我が国で始まると、今度は石炭に鉄鉱石に石油にと、次々と溢れ出す資源たち。


 やがてこの豪州植民地は、「帝國の至宝」と呼ばれる程に我が国にとって重要なものとなりました。


 勿論、この地を支配する世襲制総督織田一族の地位も。



 ……とまあ、ここまでが我が織田家の歴史です。

 どうでしたか?








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 自分の家の歴史を話す時、仕方なさそうに話すけど、口元はニヤニヤしている主人公。


 ちなみに本編は、作者の気分次第で始まります。

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