閑話 第69.5話 学院長室
「学院長、大変です!」
学院長室の重厚な扉をノックもせずに飛び込んできたのは、女性教諭だった。
「シャロン先生、世の中、それほど慌てるような大変なことはありませんよ」
部屋の奥、執務机に座る白髪の老人――学院長はゆとりを持って若い女性教諭を諭した。
「ほ、本当に大変なんですよ! ルシア先生が――」
ルシアと聞いて学院長のこめかみがピクリとだけ動いた。
「どうされましたか? またとんでもない魔法を使いましたか?」
ルシアであればとんでもない魔法を学院内でも使いかねないと、学院長は思ったのだが――
「ルシア先生が」
(やはりとんでもない魔法か)
「世紀の大発明をしてしまいましたッ!」
「大発明!?」
予想は大きく外された。
「詳しく説明をして下さい」
「え、えっとですね、私がルシア先生の研究室に書類を届けに行ったら……ルシア先生が『温度計』を発明してたんです!」
「『温度計』?」
「はい。温かさや冷たさを数値化、可視化する器具です!」
「ほ、本当か!」
この世界において『温度』や『気温』といったものは数値化されていない。
「は、はい。ルシア先生曰く、人肌の温かさを36度、水の沸騰を100度として数値化したみたいです」
「水の沸騰を100? どうして、それを100としたのだ?」
「ル、ルシア先生曰く、水が氷になる時を0として、沸騰を100にするのが普通だ……とか?」
「普通の定義が……。ま、まぁ、ルシア君のやることだからしかたないですね。それでルシア君は?」
「はい。これから氷を魔法で作って0度を定める……とか?」
「氷魔法!? あれは北の氷原国家にしか使えない魔法ですよ! どういうことですか!?」
「え、えっと、ルシア先生曰く、この国は氷ができるプロセスを知らないから、氷の魔法方程式が作れないだけだ……とか?」
「氷の魔法方程式……。もしそれが本当であれば、この国の魔法、いや国民の生活に革命が起こりますよ!」
氷魔法の汎用性は高い。物を冷やす、凍らせる。たったそれだけで食料の保存が数倍、数十倍になり、国民の食生活や物流に大きな影響が出る。
そんな話が学院長室で繰り広げられている中、ルシアは研究室で呑気に氷魔法を使用しようとしていた。
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