第70話 みんなやれば出来る

「ほ、本当に魔法で氷ができてます……」


 第四位階の水属性魔法が使えるアンソニー君が、僕の『氷』魔法を見て驚いている。


 氷系の魔法は北方の氷原国家以外は使えないらしい。


「僕はしっかりと氷の定義付けができれば、アンソニー君でも氷を作れると思うよ」


「私が、魔法で氷を?」


「うん、早速やってみよう!」





「水温が5度を下回りましたわ」


 研究室の作業テーブルの上には、水を注いだコップが置かれている。コップには目検で付けた目盛りを付けた温度計を立てている。


「アンソニー君、頑張れ〜!」


「が、頑張って、く、下さい」


 三人の研究員生が応援するなか、アンソニー君は額に玉の汗をかきながら、コップの中の水に冷却魔法をかけていた。


「アンソニー君、温度計の目盛りを1度ずつ下げるイメージだよ」


「はい、先生……」


 そして――温度計は0度を示した。


「み、水が氷りましたわッ!」


「本当に魔法で水が、水が凍ったよ!」


「ア、アンソニー様、す、凄いです」


 アンソニー君は極度の集中で、テーブルに両手を付いて、荒い息を吐いている。


「やりましたね、アンソニー君」


「は、はい、ルシア先生ッ!」


 そう言って彼は渾身の笑みを浮かべると、右手でガッツポーズをとった。


「オホホ、あなたのそんなお顔は初めて見ましたわ」


 アンソニー君は顔を赤らめながらも、嬉しそうに微笑んでいた。





「さて、魔法で氷を作る、正確には魔法で0度まで温度を下げることに成功しました。これでより正確な温度計が作れますね」


 アンソニー君が作った氷を利用して、0度から100度までの目盛りを付けた温度計が完成した。


 途中、研究室に顔を出したシャロン先生が何やら慌てていたことは――まあ、ほっておこう。


「じゃあ、次はカンナさんの番だね」


「え、ボク?」


「はい、カンナさんです」


 僕はそう言って土を詰めた鉢をテーブルの上に置いた。


「この研究会のテーマは、はい、リオン君」


「あ、温める魔法陣と、さ、冷ます魔法陣を作る、こ、ことです」


「正解です。では、温める、冷ますに必要な魔法属性は、はい、レスティーナさん」


「オホホ、火属性と水属性ですわ」


「半分正解ですね」


「は、半分ですか?」


「はい。特に火属性は燃やす、加熱するには的していますが、温める、温度計でいうと、30度から90度あたりの温度帯では、発熱のコントロールが難しいと思います」


「……、オホホ、それでその土の入った鉢の出番というわけですわね! さすがはルシア先生ですわ!」


「な、なに、ボクには分からないんだけど」


 僕は迷える子羊のカンナさんに、もう少し説明をして、土を温める魔法の実験に取り掛かった。


 そして三日後、カンナさんは土属性の発熱魔法の発動に成功した。





「水、土ときたので、次は風属性ですね」


 研究員生の中で風属性の魔法が使えるのは第五位階のレスティーナ様、第四位階のアンソニー君、そして第二位階のリオン君だ。


「さて、誰にチャレンジして貰おうかな」


 僕が三人を見渡すと、レスティーナ様とアンソニー君がリオン君を見た。


「ぼ、ぼ、僕ですか!?」


「オホホ、私は火属性の温度コントロールはできております。ルシア先生の講義を得た今であれば、土属性も風属性もそう難しいとは思えませんわ」


「私も氷を作る過程で温度コントロールが身についたと思います。であれば……」


 二人の若い貴族から注目を受けるリオン君が、少し涙目だ。


「リオン君、頑張ってみようか」


「お姉ちゃんも徹夜で応援するよ!」


「わ、わ、分かり、ました。ぼ、僕、頑張ってみます」


 リオン君が風の温風魔法を発動させるまで一週間がかかったけど、その間に魔法陣研究会の結束が固まっていった、僕はそう感じていた。


 さて、研究員生たちは結果を出した。先生冥利に尽きるとは、まさにこのことだ。そして、成功には報酬を。


 僕がお城でやり忘れていた問題――お金がない問題を解決するために僕もアルバイト、頑張らないと!


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