辺境伯領編 第51話 家族写真と戦慄姫怖しッ!
「何か、皆さん国家レベルと盛り上がっていますが、写真カードは思い出を残すとか生活に生かした使い方を僕はイメージしています」
「思い出を残す?」
お母さんは首をかしげる。
「例えば子供の成長とか、友達や恋人との思い出とかを写真で残せます」
「まぁ、それは素敵だわ!」
お母さんが感心した様に賛同してくれる。
「しかし、写真は犯罪などにも利用可能です。例えば盗撮、裸で城内を歩いている写真が撮られ街中に貼られたりしたら……」
「そ、それは不味いわね……」
「そ、そうです! 裸で廊下はもうやめましょう!」
青い顔になるお母さん、うんうんと頷くアンナさん。
しかし、お父さんに至ってはニヤリと謎の笑みを湛えている。
いや、ホントに意味が分からないです、お父さん。
「ですので、使い方には注意が必要な場合があります」
お母さんが真面目な顔に戻り―
「そうね、今日みたいな災害の記録も残せるわね」
「そうだな。写真は軍事にも使える。偵察時での敵軍の様子や布陣の状況、暗殺などに必要な要人の顔写真など上げればきりがない」
荒熊の二つ名を持つお父さんが、ジッと僕を見る。
「で、ルシアはどうする。いや、どうしたい。今なら我が家だけの秘密事で済ませられるぞ」
「僕はそれでも世に広めたいと思います。犯罪や軍事利用を考えて足を止めてしまったら、文明は進歩しません」
僕は隣に座るマライアさんを見る。マライアさんはにこりと微笑んで僕の手を優しく包んでくれた。
「火事が怖くて火を使わないとか、戦が怖くて剣を作らないとか、そんな事はなく人類は文明を進めてきたはずです。写真カードも同じだと思います」
「うむ。ルシアの言う通りだ。そしてルシアに覚悟があるのならば、写真カードは世に広めて行くとしよう」
「ルシア君は立派だわ。頭も切れるし十歳とは思えないわね」
えっ。
「オ、オカアサン、ボクハジュッサイデスヨ」
◇
「ハイ、チーズ」
僕とマライアさん、ご両親四人での写真撮影。
お母さんがのりのりで、既に僕とマライアさん、マライアさんとお母さん、僕とマライアさんとお母さんの組み合わせの写真は撮影済みだ。
「これも素敵ねぇ」
「はい、奥方様。ルシア様は大変素晴らしい物を発明致したと存じます」
「ええ、ルシア君、最高だわ!」
「全くだな。これは軍事利用を恐れるよりも、民の喜ぶ顔を選んだルシアの英断の正しさが俺にも分かってきた」
お父さんも家族の写真を見て顔が緩んでいた。
折角の家族写真。僕はコピーカードでコピーして全員に配った。マライアさんに手渡した時の喜んだ笑顔が素敵だった。
マライアさんはその写真を丁寧に布に包んでいた。
そこまでする?
コンコンと扉が叩かれ、メイドが夕食の案内を告げた。
「よし、飯にしよう。コピーカード、写真カードの取り扱いは慎重を要する。今は飯だ、飯、行くぞルシア」
「は、はい」
◇
食堂に入ると温かいスープの匂いがして、僕の食欲をそそらせた。
「なんだ、今日は大分質素な晩飯だな。ルシアには美味いものを食わせてやりたかったが」
「お館様、大変申し訳ございません。厨房の片付けが間に合わず、窯に火を入れらなかったとの事でございます」
アンナさんの話を聞きながらテーブルに着席する。
「だそうだ。済まないなルシア」
パンを齧りながら謝罪するお父さん。
「いえ、囚人小屋で食べた食事に比べればご馳走です」
なんなら、実家の離れで食べていた食事よりも豪勢だ。何せ食卓には厚切りのハムが有るからね!
「「囚人ッ!」」
マライアさんとお父さんが声を上げた。
「父上、ルシアの囚人の件」
「ああ、魔法陣カードで盛り上がってしまいすっかり忘れていた」
お父さんが僕を見た。
「安心しろ。我がロンズデール辺境伯家の名に誓い、ルシアの身分を解放すると約束する」
「父上、この件は叔母様、さらには学院長にもお願いしてあります」
「エリザベートにセドリック天王陛下か。頼もしいな」
僕は小声でマライアさんに聞いた。
「セドリック天王陛下って?」
「学院長の事だ。天王とは先々代の国王を指す称号だ」
ちなみに先代の国王の称号は大王との事。
「近く王都に上がるぞ、マチルダ」
「心得ていますわ」
「魔法陣カードの事も国王には伝えねばならぬからな」
「父上、その件で一つ願いがあります」
「ん? なんだマライア、目が怖いぞ」
見ればマライアさんの目には殺気じみたものを感じる。
「ルシアに関する全ての事は兄上には内密でお願いします」
言葉にも殺気を感じるほど重たい口調。
「ああ、そうだな。エルグランデには伏せておこう。全くあいつは辺境伯家の面汚しだ。先日も跡継ぎの事を問うたら、言うに事かいて爵位はくれ、しかし辺境の田舎に暮らすつもらはないなどと、ふざけた事を言いやがった。」
お父さんもお兄さんの事を毛嫌いしていた。
「さっさと勘当しちまうか。貴族派閥に組するバカ息子は言わば獅子身中の虫だ。派閥内の身固めにマライアを糞伯爵とかってに結婚させやがって!」
ハムの塊を豪快に食いちぎりながら怒りを隠さないお父さん。しかし、息子の勘当ともなればお母さんは黙認しないだろう。
「そうね、勘当しましょう。マライアもルシア君もくだらない派閥争いに巻き込みたくないわ。……あれが他家の息子なら、とっくに首の一つや二つ落ちているわよ」
是認だった。てか、他家なら落とすんだ。戦慄姫様怖い。
派閥争いか。僕の男爵家は革命派、お兄さんは貴族派、辺境伯家は王族派。うん、貴族って大変だな。
でも僕はその貴族を目指す。政治闘争とか未知の世界だけど、逃れられないなら信用出来る人と一緒がいい。
僕は僕を心配してくれるお父さんとお母さんを見た。
「あら、どうかしたのルシア君」
お母さんと目があった。
「いえ。これからも宜しくお願いします」
僕は頼もしいご両親に頭を下げた。
「おいおい、何だよ急に」
「ふふ、宜しくお願いね、ルシア君」
明るい家庭、明るい家族、僕が求めていた一つがここにあった。
◇
食事も終わりに近づいた頃。
「そうそう、アンナ。婆さんの遺品の中に賢者を調べた綴りがあったはずだ。明日にでも探しておいてくれ」
賢者を調べた綴り?
「はい。委細承知致しました」
め、めちゃめちゃ気になる!
【作者より】
新年明けましておめでとうございます
旧年中はありがとうございました
本年もよろしくお願いします
さて、執筆は80話まで書いてありますので、1月中は毎日投稿予定です。
引き続きよろしくお願いします。
また、昔に書いた作品の修正版を連載しました。異世界転移TS作品ですが興味あればよろしくお願いします。
異世界うさぎ紀行
転移ガチャでもらった最強鎧――ってバニーガールじゃねえか!
https://kakuyomu.jp/works/822139842307144800
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