王都訪問編 第37話 魔法模擬テストは自重します?
さて列の最後、つまり僕の番だ。
前世で自称ラノベテンプレを網羅している僕としては、三つの選択肢があった。
1、王道、やっちゃいました系。僕は大したことないですよ、とか言いながら大魔法で試験会場をぶっ壊すパターン。
しかし、このパターンは悪手だ。囚人の僕が王立学院、つまり税金で建てた建物を破壊したら器物破損罪が上乗せされかねない。
2、ここは無難にやり過ごし、コイツ普通じゃんって思わせておいて、
これも美味しいけど、模擬テストなので、後々とかあまり意味がない。
つまり選ぶルートは3。自重ルート。模擬テストなのだから、目立たずにやり過ごす。マライアさんに怒られたくないからね。
「ルシア、土属性魔法、石弾を使います」
最後とあってか、ナルタス以外の全員が僕を見ている。
ふと、レスティーナ殿下と目が合った。その目に込められていたのは僕への期待。
でも残念。僕はそれを裏切るよ。
「魔法陣展開!」
右手の先に青白く光る五つの魔法陣が浮かび上がる。
今回は自重魔法なので魔力少なめ、魔法陣小さめ。ラーメンで言えば背脂少なめ、味薄めって感じだ。
「『石弾』✕5」
使う魔法はただの石弾。高速石弾だと的を破壊し悪目立ちしかねない。
五つの魔法陣に一発ずつの石弾が現れる。
「行けッ!」
敢えて速度を落として射出させた五つの石弾。石を手で投げた方が早いんじゃね、ってくらいのスピードで飛んでいく。
そしてコン、コン、コンと五発全弾が的に当たったが、的が少し揺れるぐらいの威力で、先ほどのレスティーナ殿下のファイヤーランスのような派手さは全くない。
ヨシ、地味に的に当てたぞ!
狙い通りのショボい威力に内心でほくそ笑んだ。
皆さんの期待を裏切った罪悪感が今は心地よい気分にさせてくれる。
ふふふん♪
鼻歌を交え振り向いた僕が見たものは、なぜか皆さんポカンと口を開けて絶句した顔をしていた……。
レスティーナ殿下の唇もワナワナと震えているし。
アレ? 僕……なんかやっちゃいました?
「あ、貴方、今、五つの多重魔法陣……五連撃魔法陣を使いましたわね……」
「は、はい? 的が五つあれば魔法五発は普通に使いますよね?」
「五発の魔法が問題ではありませんわ。同時に魔法陣を五つ展開したのがおかしいのです!」
「えっ? アレ、皆さんも同時展開とかしますよね?」
全員が白い目で僕を見て首を横に振る寂しい展開。
「貴方、多重魔法陣は宮廷魔術師の中でも数人しか使えない高等技術、しかも過去においても多重魔法陣の最大数は三つでしてよ。貴方、五つってどういうことですか!?」
三つが最大? 本当に? てか――
「へ、へぇ〜、僕、なんか、たまたまできちゃったのかなぁ〜、あははは」
あれぇ、僕自重ルートに行ったはずなのに、あれあれ、自重って何だっけ?
◇
【ナルタス視点】
ルシアが周囲の者たちから注目されている中、暗い闇の感情を持つ者がいた。
(許さない……。レスティーナ、ルシア、僕様の美しい学院生活デビューを醜い魔法で汚した罪は万死に値する。それに群がる下民共。僕様はやる、やってやるぞ……)
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