王都訪問編 第27話 領主様と王都へ

「ルシア様、両手を上げて下さ〜い」


「ルシア様、お顔は正面です!」


「ルシア様、足をもっと開いて下さい」


 僕はメイド三人娘のサリーさん、アリサさん、ニーナさんに、体のあちこちにメジャーを当てられ採寸されていた。


「あ、あのサリーさん、何で背中から抱きついているんですか?」


「胸囲を測っているんで〜す」


「ア、アリサさん、顔正面はいいんですけど、アリサさんの顔が近すぎませんか?」


「首周りを間違えると、服の形が悪くなるんですよ。はい、はい、ルシア様、顔をう・ご・か・さ・な・い・で」


 僕にやたらと密着するサリーさんとアリサさん。


「二人とも、ふざけないでしっかり測って下さい」


 ニーナさんが二人に注意をする。全く、真面目に採寸をしているニーナさんを見習って欲しい。


 って、あれ?


「二、ニーナさん? な、何をしているんですか?」


 僕の股下を測っていたニーナさんの細い指が、股下を越えていらぬ物まで測ろうとしている。


「フフ、何ごとも正確に測るべきだと存じますわ」


「い、いや、そこは測らなくても大丈夫ですからぁ!」


「大丈夫でございます。フフ、私、慣れてますので」


 な、何に慣れてるのよ!


 マライアさんが王都で知人と会う約束をしていたとかで、僕が転移魔法で王都までエスコートする事になった。街道は僕が壊してしまったので仕方がない。


 そして、王都に行くからには正装が必要とかで、急遽僕の服を仕立てる事になったのだが……。


 お姉さん達、密着し過ぎじゃね? 前世のお姉さんのいるお店でも、こんな密着は無かったよね?


「ルシア様ぁ~」


 せ、背中に胸がッ!


「ルシア様!」


 み、耳に息を吹きかけないでぇ!


「フフ、ルシア様、可愛いですわ」


 か、可愛いって、それ、採寸ちゃうよね!


 そして、僕の服は彼女達の密着測定のすえ、完璧に完成した。黒を基調としたかなり秀逸な出来栄えだ。


 でも何故だろう、オークキング戦よりも厳しい戦いだった。


 そして彼女達の頬を高揚させた笑顔が、僕の敗北を意味していた。





 ふぅ〜、とため息を吐いて僕はマライアさんの執務室に入った。


「ほほう、良く似合っているじゃないか」


「そう言って貰えると苦労が報われます」


 マライアさんは良き人だぁ。前世では死ぬほどサビ残しても、お疲れ様の一言も無かった。


「苦労?」


「あはは。それで、いつ王都に行くんですか?」


「今だ」


「はい?」


「今日の夕方に待ち合わせをしている」


「まだ昼を過ぎたばかりですよ」


「ああ、早く行って王都観光だ。こんな辺境にいては、碌な買い物も出来ないからな」


「王都観光って……。僕はどうするんですか?」


「買い物には荷物持ちが必要だろ」


 ニィッと笑ったマライアさん。やれやれと思いながらも、僕はマライアさんを連れて王都へと跳んだ。


「『転移』」





「ここは?」


 跳んできたのは草原にある小高い丘の上。丘の上にある一本杉を僕は覚えていて、それを目標に跳んできた。


「ここは王都近くの草原です」


 緑の匂いが立ち込める草原。ゆっくりと風が流れ草の波を作る。その波の先に王都を囲む高い塀の下にゆっくりと動く人々の列が見える。青い尖塔に映える王城が、前世の有名な遊園地を思い出させる。


「流石に街中に転移する訳にはいきませんから」


「そうだな。よし、行くとしよう」


「……今さらですが、囚人の僕が王都に入って大丈夫ですか? ほら、城門で兵士さんが皆さん身元調査とかやってるっぽいですよ」


「私と一緒にいる限りは大丈夫だ」


 つまり一緒にいないと捕まるって事?


「ほら」


 マライアさんが右手を伸ばしてきた。これは手を握れってことかな?


「ま、迷子になると不味いからな」


 少し恥ずかしそうに言うマライアさん。流石に子供と手を握るのは恥ずかしいらしい。


「……分かりました」


 見渡しのよい草原で迷子にはならないと思いつつも、僕はマライアさんの手を握った。


「……」


「どうした?」


「あ、いえ、マライアさんの手が、その……」


「フフ、女らしからぬゴツゴツした手で驚いたか?」


「そ、そうですね」


 先日のカテジナさんの柔らかい手とは違い、手の平は硬く、指の付け根には剣だこができているみたいだ。


「でも、働く女性の手って感じで素敵です!」


「なっ、何を、い、言っている」


(す、素敵だと……。このゴツゴツした手が……。兄上からはがさつだと蔑まれた私の手が……)


 顔を突然赤くしたマライアさんが――。


「ほ、ほら行くぞ! 早くしないと日が暮れる!」


 僕の手を引っ張り歩きだした。


「まだ、日は高いですよ」


「う、うるさい!」

 

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