王都訪問編 第28話 白ワンピの領主様が可愛いすぎる件
「凄いですね」
中世ヨーロッパ風の建物が立ち並ぶ大通り。某海なテーマパークを思わせる美しい街並みは、絵画の世界に迷い込んだ錯覚さえ覚える。
「王都を歩くのは初めてか?」
「はい」
田舎しか知らない僕はワクワクしながら辺りをキョロキョロと見回す。思わず興奮のあまりマライアさんの手をギュッと握りしめてしまった。
「ル、ルシア、手が……。ま、まぁいいか。迷子にならないよう手を離すなよ」
「も、勿論です」
囚人の僕がマライアさんとはぐれたらヤバい。などと思いながらも近くの屋台から流れる串焼きの匂いに、ふらふらと足が向いてしまう。
「ルシア、ふらふらしてるとはぐれるぞ」
マライアさんは僕の手を引き寄せる、
「は、はい。それで、何処に行くんですか?」
「ふふふ、いい所だ」
「い、いい所? ま、まさか大人の……」
「アホ、今日は大事な打ち合わせがあるんだ。ふざけた事言ってないで付いてこい」
「ですよね〜」
◇
「さっきのと比べてどうだ?」
赤いワンピースを試着するマライアさん。
「僕はさっきの白いワンピの方が好きです」
「す、好きか。そ、そうか。しかし白のワンピースでは勝てないだろうからな……」
赤いワンピースなら勝てるのか。って何? これからまさかのバトル展開?
マライアさんはぶつぶつと――、
「あの
何やら赤い顔をして呟いている。
洋服店に入ってもう何着目の試着になるか分からない。
でも僕は着替える度に表情が変わるマライアさん。なんかドキドキして僕も楽しんでいた。
「マライアさんは何を着ても綺麗ですよ」
子供の戯言と言うなかれ。自称美少女ゲーム評論家の僕が言うのだから間違いない。
「ば、ばか、大人をからかうな」
「僕は本当にマライアさんは綺麗だと思います」
「……。て、店主、このワンピースはこのまま着ていく。それからそっちの赤いワンピースも包んでくれ」
マライアさんは白のワンピースに決めたみたいだ。声が少し弾んでいるのは試着が楽しかったってことかな。
でも赤いワンピースも買うんですね。
それから王都の観光名所巡りで、白い時計塔やハートの形をしたループ橋に行ったり、屋台の串焼きや美味しいデザートのお店に行ったりと、デートみたいで楽しかった。
さすがに「デートみたいですね」などと言ってマライアさんの気分を害してはいけないので言わなかったけど。
「さて、そろそろ行くか」
先ほど行った白い時計塔の針を見れば四時に差し掛かろうとしている。
夕方に知人と打ち合わせがあると言っていたので、楽しいマライアさんとの自称王都デートはこれで終わりだ。
街路樹が並ぶ歩道。石畳も茜色に染まり、街ゆく人たちも帰路につく足取りで僕達とすれ違う。
「もう、終わりか……」
僕は少し肩を落として呟いた。
「王都観光は楽しかったか?」
「はい。マライアさんと一緒に巡れてとても楽しかったです!」
「そ、そうか。わ、私も(ルシアと一緒で)楽しかったぞ」
日が沈みかけた太陽が王都の街を茜色に染めている。ふとマライアさんと繋いでいた手が指を絡める握り方にいつしか変わっていたのに今さら気がついた。
「行くか」
「はい」
繋いだ手を離さないまま、僕達は待ち合わせの場所へと歩きはじめた。
夕日を見上げるマライアさんの顔は充実した微笑みをたたえ輝いて見えた。そしてその顔は戦場へと向かう戦乙女の顔であった。
って、この後ってやっぱりバトル展開なの?
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