囚人編 第17話 なんか僕、王国を救ってたみたい?
「はぁ〜」
マライアさんは頭を抱え、テーブルに突っ伏していた。
「まさか伝説の賢者の継承者とか……」
僕はマライアさんに五歳の時に大精霊エストリアから大精霊の加護と賢者ルドルフの知識をもらったことを正直に話した。
「しかし、これで得心がいった。ダイヤモンドの知識、革新的な算術、独学の魔法、どれも伝説の賢者の知識ということか」
「はい」
伝説の賢者の知識バンザイ。前世の知識も漢字を使った魔法も、何でもかんでも賢者の知識でまかり通る。
「ルシアの待遇だが、改めて考え直さなければならないな……」
「僕は馬屋の掃除当番でも構いませんよ」
「……そんな訳にはいかんだろ」
(賢者ルドルフの継承者だとッ! 国の最重要人物にして最高機密案件じゃないか!)
(父様に報告するか? ……いや、兄様の耳にでも入れば貴族派閥の腐れ貴族供にルシアが取り込まれかねない)
(……ここに入ればしばらくは安泰か? いや、ルシアの算術は国益になる。黙って置くわけにはいくまい。ならば……叔母様に頼ってみるか。……しかし何だ、この胸の中にある違和感は)
マライアさんが僕の顔を鋭い目つきでじっと見ている。
(大賢者の魔法……。黒髪……。子供……。まさか……)
「ルシア、二年前の大干ばつの時、……お前は何をしていた?」
「えっ」
突然の質問に少し慌てた僕だが――。
「あ、あの時は、毎日減っていく食事の野菜が、減らないようにするために雨を降らせてました」
「…………」
しばらくの沈黙の時間。マライアさんは再び口を開く。
「王国内に雨を降らせたのも、ルシア、お前でいいんだよな?」
(あの時の雨は、まさに天の恵みともいえた)
「……は、はい? まずかったですか?」
「……いや、まずくはないが……そ、そうだ、動機を知りたい」
「動機ですか? ん〜〜〜、強いて言えば……ついでとか、暇だったとか……ですかね?」
(ついでぇ? 暇ぁ? そんな動機で王国五十万の民の命が救われたのかッ!?)
(いやいや、問題はそこじゃない! 今、私の目の前に王国の救世主たる黒髪の魔術師がいるという現実だ!)
(しかし、何で王国の救世主がこんな所にいるのだ! ……!?)
マライアさんが難しい顔で何やら色々と考えているみたいだ。
そうこうしてる間に、カテジナさんを先頭にカートに乗せた食事を数人のメイドさんたちが食堂に運んできた。
カートから漂う美味しそうな匂いに、自然と鼻の穴がひくひくと動く。
そしてテーブルの上に並ぶ豪華な料理たち。そして僕の目を引き付けるお肉料理!
「カテジナ、配膳が終わったら執務室に来い。緊急案件がある。私は先に執務室に行っている。ルシアは食事を楽しんでくれ」
マライアさんはそう言うと、席から立ち上がって食堂から出ていった。
どうしたんだろうと少し気にはなったが、目の前に並ぶ美味しそうな料理の魅惑に勝てる訳もなく――。
「いっただきま〜す!」
僕は早速お肉料理にフォークを伸ばした。
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