囚人編 第11 話 囚人クズ石拾う 硬石?いやこれは

 僕が送られた労働収容所は、深い山間にある辺境の鉱山村だった。


 結局、転移魔法で逃げ出す事はしなかった。


 今の状況は自分に罪はない。でも逃げれば逃亡罪、つまりは自分の罪が確定。理不尽だとは思うけど、今は我慢だ。


 僕を乗せた馬車は、石造りの頑丈そうな高い塀を潜り村へと入る。意外にも村の中は活気があり、商店街まである。


 どうやらこの村は一般人が暮らす区域と、囚人を拘禁する収容区域があり、一般人が暮らす区域には、笑顔の村人が多く見られた。


 そんな商店街を抜けて、切り立った岩山の麓、塀に囲まれた労働収容所に馬車は入っていく。


「降りろ」と言われ馬車の扉の外鍵が外された。馬車を降りると、二階建ての建物が幾つかあり、その奥に坑道が見える。


 僕が辺りをキョロキョロと見ていると、鎧姿の兵士が二人きた。


「お前はここでは444番と呼ばれる」


 えっ、444!? 死亡フラグとかじゃないよね? フラグ回収は絶対にやりたくない。


 囚人番号に戸惑っていた僕は、兵士に連行され、坑道前の建物に連れていかれた。


 兵士の一人が建物の扉を叩く。


「おい、爺さん。新入りを連れてきた」


 扉が開き、腰の曲がった痘痕あばた顔のお爺さんが顔を出す。


「ガキか。……まあいい。こっち来い」


 お爺さんがのそのそと歩き始めたので、僕は後についていく。鉱山沿いの道を歩き、岩が山積みされた場所に来るとお爺さんが足を止めた。


 見れば木箱に座って作業している人たちがいる。


「これを使え」


 渡されたのはハンマー。


「あそこにある岩から、鉄鉱石と岩石を分けるのがお前の仕事だ。鉄鉱石はあっち、岩石は向こうに一輪車で運べ。一輪車一杯で銅貨一枚貰える」


「お金が貰えるんですか?」


「飯は銅貨五枚からだ。働かねえと飯が食えねえ。ほらとっとと行かんかい!」


 労働収容所はノーワーク・ノーペイのまさかのサラリーマンシステム。お爺さんに背中をドンと押されて、僕は山積みの岩山に向かった。


「こんにちは」


 木箱に座り作業をしているおじさんに声をかける。


 ……が、返事なし。チラっとだけこちらを見たが、その目には光がなく無気力な感じだった。


 僕もああなるのかと不安を感じる。


 僕は諦めて誰もいない隅っこで作業をする事にした。よく見ると木箱に座らず、石の上に座っている人もいる。僕も石に座り作業を始めた。





 山積みされた岩山には大きく三種類に分類される。鉄鉱石の塊、岩石の塊、鉄鉱石と岩石が混ざった塊。ただ八割が混ざった塊だ。つまり、めちゃくちゃ面倒くさい。


 少し大きな石に座り、混ざった塊をハンマーで叩く。


「これを砕くとか無理じゃね?」


 少し叩いたぐらいでは硬い石は割れない。周りを見回し他の人の作業を観察する。作業者の中には女性や子供もいた。


 僕くらいの歳の男の子は、適当に石を取り、何やら観察してポイと投げ捨てた。何度かそれを繰り返し、どうやらお目当てが見つかったらしく、手にした石をハンマーで叩き始めた。


「なるほど。子供でも割れそうな石を選べばいいのか」


 僕も石を観察しながら鉄鉱石と岩が剥離出来そうな石を探した。


 よさげな石を見つけた。カンカンッとハンマーで叩く。少し赤みを帯びた鉄鉱石が岩石から段々と剥がれていく。


「いや、しかし、これは腕にくるな……」


 慣れない作業で手や腕が痛くなってくる。これを一日中やって、最低限のノルマである一輪車五杯は無理だろ。


「はぁ〜、このままじゃ今日の晩飯は無し。いや晩飯な死!って感じかな」


 って、くだらない造語を作っている場合じゃない。と言う訳で辺りの人に見られていないのを確認して――。


「『身体強化』」


 ハンマーで軽く叩いただけでパカンと石が割れた。これなら楽勝だ。


 そんなこんなで鉄鉱石と岩を分ける作業を続けていると――。


「おや?」


 石を割っていく作業の中で、石の中からくすんだ色をした水晶の様な石が出てきた。


「宝石かな?」


 大きさは約3センチメートル、八面体の綺麗な形をしている。お宝発見かもしれないので、その綺麗な石を持って先ほどのお爺さんのいる建物に向かった。





「これは硬石だな。硬すぎて磨けもしないクズ石だよ」


 お爺さんは仏頂面でつまらなそうに言い放つ。


「この石は貰ってもいいんですか?」


「ああ、クズ石だから好きにしろ」


 そう言うと、早く仕事に戻れ的な手のしぐさをして、僕を追い払おうとする。


 僕はお爺さんの建屋を出て、硬石を空にかざした。


「硬石ね……」


 硬すぎて磨けない石。


「うん、やっぱりそれっぽい」


 表面は茶色がかっているが光に透かすと透明感がある。そして綺麗な八面体のシェイプ。この石は――最強硬度を持つ宝石、つまりあれの可能性がある。


 僕はそれを胸の小さなポケットにしまい、ニヤりと笑った。

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