囚人編 第10話 親父様が捕まったら、ついでに僕も捕まった
十歳を迎えた春、大事件が勃発した。まさかまさかの親父様の逮捕。
その日の昼前、テレスが慌てて離れの庭に駆け込んできた。
「ルシア坊ちゃん、大変ですよ!」
「なに慌ててんの? まさか僕のお昼ご飯が今日は無いとか?」
「ち、違いますよ! 王都の騎士様達が来て――」
テレスが告げ終わる前に、テレスが開けた扉から二人の鎧を着た騎士がずかずかと庭に入ってきた。
「お前も男爵家の子供か」
威圧的な声で言う騎士。
「は、はい」
離れで十年引きこもりの味噌っかす子だけど、男爵家の子供に間違いはない。正直に答えた僕は、理由も分からないまま縄で拘束される。
「き、騎士様、ルシア坊ちゃんは何も悪くありませんっ!」
テレスが青い顔で騎士に必死に取りすがるが、殺気さえ感じる厳つい声で――
「黙れ女中!」
と一喝されると、テレスはその場で腰を抜かして尻もちをついた。
有無を言わさぬこの状況。親父様が何やらヤバい事をやらかしたに違いない。
「僕の事は大丈夫だよ、テレス」
一先ずは逆らわない。この状況で逆らえば公務執行妨害だし、転移魔法で逃げたとしたら逃走罪とかになりかねない。
死刑とか言われない限りは、流れに身を任せよう。
ほんっと、クソ親父様、なにやっちゃってくれちゃったの?
◇
「お腹すいた……」
あの後、護送馬車に乗せられた僕は、何処かの砦に連行された。今は薄暗い地下牢で引きこもり生活が再開されている。
この地下牢には僕以外は誰もいない。転移魔法で抜け出すのは楽勝だけど、この先どうなるかを知ってからでも遅くない。
とはいえ、新引きこもり生活は食事が一日一食しかないのがキツい。こんな事なら異空間収納に食べ物を少しでも入れておくんだったと後悔。
ちなみに父の罪状が、国家反逆罪って事をこの牢屋に入ってから聞かされた。
何でも父は反王族派閥の革命派閥とかにいて、かつ男爵家が属する革命派閥第三党はエスパルダ帝国と組んで革命戦争を企てたんだとか。
それがバレて革命派閥第三党に属する貴族は全員しょっ引かれ、一族郎党も一蓮托生で
なお、この砦には僕以外の家族は留置されていない。父と義母は王都の裁判所、義兄姉も別々にされて他の砦で引きこもり生活を始めているらしい。
◇
新引きこもり生活の五日目。
臭くジメッとした牢獄は引きこもり好きの僕でも堪える。
「……テレス、心配しているだろうな」
状況が一向に動かない今日この頃。ちょっと転移魔法で抜け出して、テレスに状況だけでも伝えに行くかと考えていた。
そんな時、僕を連行した、あの厳つい声の騎士が牢屋の前にやってきて、僕の処分を言い渡した。
「北方辺境伯領にある鉱山収容所で三年間の労働刑だってよ。北の地は寒くてな、冬場は毎年寒さで死人が出る過酷な収容所だ。まぁ、死なないように頑張れよ」
厳つい声の騎士はニヤけた顔で言う。性格悪いなこの騎士。
「あ、あの……」
「なんだ?」
「両親や義兄姉はどうなりましたか?」
会った事もない家族だけど、少しだけ気になったので聞いてみた。
「男爵と奥方は斬首刑、兄貴は西部戦線送り、姉貴は修道院送りだ。お前の刑はヌルいぐらいだ。よかったな、鉱山送りで」
ニヤけ顔の騎士。つくづく性格が悪い。
「そうですか……」
両親は死刑か。 義兄姉は鉱山労働よりハードな所に送られるみたいだ。
クソ親父はまあ自業自得として、義兄姉とは会った事はないが少し心が痛む。
さて……僕の方はどうしたものか。
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