幼年期編 第8話 草原でまたやらかした件
僕はまたテレスのいない時間を見計らって、草原に来ていた。
「ん〜、今日も青空が広がり良い天気だ」
先日の『極大爆焰球』は大失敗だった。あんな魔法は危なくて使えない。言うなれば大量破壊魔法であり、戦略級魔法となるのだろう。魔獣狩りで森を丸々焼いてしまっては駄目駄目だ。
「それでも派手で強力な魔法は使ってみたい」
必殺技症候群とでも言うのだろうか、最強の手札として持っていたい憧れがある。
炎は前回失敗した。水? 辺り一面がぐちょぐちょになる……、いや、鉄砲水被害は広範囲に及ぶ恐れがあるから水は駄目だな。
土魔法? 隕石落としとか? 漢字でどう書く? 隕石落下? いやいや、質量兵器はヤバいって。
風魔法だと竜巻とかかな。あれもマップ兵器だよな……。雷なら……指向性を持たせられるかも!
閃いた雷魔法を試してみる。
「天空の光、黄金の力、破壊の化身よ」
僕は詠唱と共に大精霊エストリアの魔法陣がある右手を天にかざす。
「我欲するは裁きの厳雷」
右手から魔法の光が空に上がり、黄金に輝く巨大な魔法陣が広がる。
「その力、龍と成りて顕現せよ」
黄金の魔法陣から幾重もの稲妻が走る。
「『雷龍召喚』」
魔法陣の中央から稲妻を纏わせた巨大な黄金の龍が現れる。
「やった! 凄えッ! でけえッ! かっけぇッ!」
美しい黄金の鱗を纏った長い胴体の雷龍が、空を泳ぐかの様に飛んでいる。頭には二本の角があり、雷光を放っている姿は天空の王者の威光にも見える。
「放てッ、厳雷!」
僕は草原にある大きな岩にめがけ、攻撃を指示する。
二本の角の雷光から稲妻が走り、大きな岩を粉々に打ち砕いた。
ヨシッ、成功だ! 指向性がある派手な魔法だ!
雷龍は僕のイメージを形にした魔法であるから、勿論ブレスも使える。イメージ的にはマップ兵器なので、草原を焼かないように空に向かって放ってみる事にした。
「放てッ、雷哮!」
雷龍の口から眩しく光る黄金のブレスが天高く一直線に放たれる。
「……こいつもヤバい魔法だな」
威力は分からないが、辺りの雲が一瞬で蒸発した様はヤバい気配しかない。厳雷は良いとして、雷哮は封印魔法になりそうだね。
◇
【とある町の冒険者】
「ね、ねえ、ちょっと、アレ、アレ!」
「ま、マジかよ!」
夫婦冒険者パーティーである『比翼の鷹』は、町長の依頼で先日起きた悪魔の炎の調査のため、町の東に広がる草原に来ていた。
調査開始から五日目の午後、二人が目撃したのは、空から降りてきた黒髪の小さな子供だった。
二人は草むらにサッと身を隠す。
空を飛ぶ子供。既に異常事態が起きている。何故なら、飛翔魔法は第七位階の高位魔法で子供が使えるようなレベルではないからだ。
「……あの子、人間だと思う?」
「……見た目は五、六歳のガキにしか見えないけどな」
草むらから様子を伺っていると、黒髪の小さな子供が魔法を唱える声が聞こえてきた。
更に疑問が重なる二人。
「あんな詠唱、聞いた事がないわ……」
冒険者になって二十年、様々な経験をしてきたベテラン冒険者も知らない詠唱が黒髪の子供によって紡がれていく。
そして二人は唖然として空を見上げた。
天に広がる巨大な黄金の魔法陣。その魔法陣から現れた黄金の龍。
雷を纏った龍から放たれた稲妻が大岩を砕き、咆哮が空を裂いた。
「あ、あのガキ、激ヤベぇぞ……」
「あの悪魔の炎も、あの子がやったっぽいわね……」
「……ま、魔族か?」
「……人の子の筈はないわよね」
二人は息を殺し、気配を殺す。しかし、体が僅かに震えていた。
見つかれば殺される。
戦って勝つ見込みなど全くない状況は、過去に炎竜と対峙した時を思い出させた。
二人は動かない、いや動けない。
二人は待った、黒髪の子供がいなくなるのを……。流れ落ちる冷たい汗と共に……。
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