幼年期編 第7話 爆裂魔法少女に憧れて……
あれから暫くはテレスが離れに来ていた事もあり、東の街へは行けずじまいだった。
それでも僕は、僅かな時間を見つけては転移の魔法で外へ出て、お肉を求めてあちこち飛び回っていた。
しかし待望のお肉への道は遠く、村の屋台で肉串は売られていたけど、お金を持ち合わせていないから買えない。
森で鳥や兎を見かける事はあったが、小動物を殺す勇気がなかった。
「ちくしょぉぉぉぉッ!」
お肉が食えない欲求不満を、お試し魔法で解消する僕。
広い草原、ゆっくりと流れる雲。穏やかな風が緑の絨毯に波を立てる。
目を閉じて魔法のイメージを構築する。なんだかんだで攻撃魔法が好きだ。
誰と戦うのか、何と戦うのか。
僕の前世の記憶にある魔法少女は『この強敵に爆裂魔法を!』と言っていたような、いなかったような。
そんな訳で、僕も爆裂魔法に挑戦する。
足元から深紅の魔法陣が広がり、緑色の絨毯を真っ赤に染め上げる。
「あれ? 思ってたより魔法陣がデカい。まあ、いいか」
魔法陣の大きさはざっと見ても直径100メートルぐらいある。大精霊エストリアによって刻まれた右手の魔法陣を天に振り上げる。このポーズが必要かどうかは分からないが、勢いは重要なファクターだ。
「我が望むは究極の焰!」
右手に赤い魔法の玉が発生する。
「我が焰は天を焼き、大地を焦がすものなり!」
赤い魔法の玉が熔岩の様に赤と黒の斑な色に変色する。ちなみに詠唱も必要かどうかは分からないが雰囲気は重要だ。誰も見ていないし。
「行けよッ! 『極大爆焰球』!!」
天にかざした右手から紅の火球が空へと上がる。本当に大地が焼けちゃうとヤバいので、火球は高度千メートルを超え、雲の高さまで上昇させた。
「爆ぜろッ!」
僕が言うと火球はカッと光り、そして超巨大な炎の玉となった。
「そ、空が……燃えてる」
僅かに遅れて爆音と突風が白い雲を薙ぎ払い、平穏だった草原を襲う。
辺りに漂う焦げ臭い匂いに冷や汗が出た。
「死、死ぬかと思った。……あ、危ないな、この魔法は」
まるで太陽の様な炎の玉。一歩間違えていたら、この草原を火の海に変えていた。
僕は『極大爆焰球』を封印魔法としたのだった。
◇
【とある町】
「な、なんだアレは!」
町の東門に立つ兵士が森の奥の空に浮かぶ巨大な火の玉を見て驚愕の声を上げた。
町の中でも多くの町人が東の空に浮かぶ巨大な火の玉を見て慌ててふためいていた。
「太陽が落ちてきた!」
「悪魔の炎よ!」
「ま、魔王が復活したぁぁぁぁ!」
町の中の至る所で混乱が生じた。
ドガァァァァァァァァンッ
響き渡る轟音。更に突風と地響きが町を襲う。
慌てて店を畳む店主、泣き叫ぶ子供、腰を抜かした老婆。人々は恐怖し逃げ惑う。
そして、巨大な火の玉は暫くして姿を消したが、その炎は町の人々に悪魔の炎として恐怖を植え付けたのだった。
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