幼年期編 第4話 六属性魔法陣からの召喚はお姉さんだった?
「これでクリーンの検証も終わりか」
地面の上にクリーンの魔法方程式を何パターンか書き換えて効果の検証をしてみた。
あの爆光の失敗は忘れよう……。
「魔法語は分からないからCΨは弄りようがないよな……。でも、待てよ。ここに『火』って入れたらどうなるんだろう」
前世で異世界物は結構読んでいた。漢字が魔法になる作品もあった。ならば一度は試してみたくなるのが漢字だ。
魔法文字のCΨを消して、漢字の『火』の字を入れて魔力を魔法陣に流しこんだ。
「うわっ!!」
魔法陣から高さ五センチメートルぐらいの火がモワモワと噴き出した。
「マジか、漢字でもいける!?」
異世界マジック、漢字の神秘。いや漢字の象徴力か!? 何はともあれ魔法が発動した事に僕は感動した。
「じゃ、じゃあ『水』は!」
魔法陣に水の漢字を入れて魔力を流すと、魔法陣から水が少し噴き出した。
「おおぉぉぉぉぉ」
凄い、凄いッ!
興奮した僕は色々な漢字を試してみた。
『風』や『土』など一文字の意味が分かる漢字は発動したが、意味が通らない一文字や二字述語、三字述語などは発動しなかった。
それからはテレスの目が有る時は単語の勉強、無い時は魔法の検証をして日々を送った。
◇
「はぁ〜」
今日もため息が溢れる。
僕は五歳になったが魔法研究は停滞していた。
ここ二年間でやった事は、使える漢字の模索。
僕が知っている魔法陣は第一位階のみ、使える漢字は一文字のみ。だからやる事も結構行き詰まっていた。
「魔法陣を右手側、左手側に描いて、こっちは『水』、こっちは『土』。これで何か変わるかな?」
左右同時発動の魔法は、左右で単独に魔法が発動して終わった。
「残念、意味なし」
その後もいくつかの検証をした。
もう少しで五歳を向かえる頃にやった検証は、大きく描いた第一位階のサークルの中に複数個の魔法陣を描いた魔法陣だ。
例えば大きい第一位階のサークルの中に『水』を入れた魔法陣と『土』を入れた魔法陣。これに魔力を流すと泥水が出来る。
たかが泥水と言うなかれ。
この泥水は複合魔法によって出来た泥水なのだ。
「一歩は前進したけど、ファイヤーボルトとか攻撃魔法にはまだまだ遠いな」
目指せ、攻撃魔法!
◇
先ほどテレスが母屋に帰っていった。
昨夜、布団の中で思い付いた魔法陣を地面に描く。
大きな魔法陣の中に『火』『水』『風』『土』『光』『闇』の六属性を描いた魔法陣だ。
「魔力、注入!」
薄らぼんやりと魔法陣が光り始める。
「魔力、更に注入!」
魔力を流し続けると光が強くなる。
「魔力、限界ぃぃ注入ぅぅ!!」
僕は魔力を全力で限界辺りまで注いだ。
すると魔法陣が七色に輝き、魔法陣を中心に渦巻きながら光が広がっていく。
「な、ヤバ、ば、爆発する!?」
これってクリーン爆光事件の再来!?
そして激しい光の渦の中心から眩い光の玉が現れた。
「な、何か出たッ!」
静かにゆっくりと浮かび上がる光の玉。その光から溢れる幾条もの輝きは神々しい光芒となって辺りを照らす。
光の玉が僕の頭上高く上がると――
『ちょ、ちょっと何よこれ!』
光の玉から女の人の声が聞こえた。
え、何これ?
『え、やだ、大精霊召喚されちゃったのッ!? もうッ、時間無いのにィ!!』
やたら慌ただしい女性の声だ。僕は頭よりも高く上がった光の玉を呆然と見上げていた。
『あ〜面倒くさい。あの爺と変な約束しなきゃ良かった。って子供ぉ? なんで子供が六属性同時詠唱なんて出来るのよ!』
光の中から驚いている声が聞こえたけど、僕もめちゃめちゃ驚いているよ。
『あ〜、へ〜、あなた【カンジ】が使えるのね』
今、漢字っていったよね。
『まぁいいわ。 ちょっと人間ッ!』
「は、はい!」
『あたしはこれからデートなの』
「は、はぁ……」
光の玉の向こうに誰かいるのは分かる。さっき大精霊召喚とか言ってなかったか?
『だから、あたしには時間がないの。分かるわよねッ!』
「え、いえ……」
『あ〜、もう、あたしの勝負パンツ何処にしまっちゃったのよ〜』
それは知りませんよね?
『ほら、ちゃっちゃと済ませるから早くしなさい!』
「え、えっと……それは勝負パンツが必要的なアレですか?」
『あんた馬鹿ァ!? 勝負パンツが必要なのはあたしのデート! ほら、右手を出しなさい!』
「えっと、あなたは誰ですか?」
『あたしを知らないで召喚したのッ!? あたしは大精霊のエストリア。ほら、右手ッ!』
大精霊? と思いながらも僕は右手を前に出した。
光の玉から強い魔力の光が濁流の如く溢れ出る。その濁流が一つに集まり、そして光り輝く女性のシルエットになった。
『我大精霊エストリアは賢者ルドルフとの盟約により彼の者に我が力の欠片を施す』
エストリア様が右手を僕の方にゆっくりと差し出す。その光り輝く指先から幾つもの光の欠片が溢れた。
溢れ落ちる光の欠片が、光の川となり僕の右手の中へ流れ込んでくる。
「うわっ! 熱ッ!」
僕の右手の掌が燃える様に激アツい。肉や骨が焼けてはいる訳ではない。この熱さは……魔力が燃えてるのか?
『盟約は果たしたわよ。あ〜もう、パンツどこよぉぉぉぉぉ!』
光の玉がパッと消えた。僕の右手の熱も冷めて手の平を見てみる。そこには複雑な紋様の魔法陣が痣の様に出来ていた。
「何これ? 何が起きたの?」
光の玉の向こうにいた大精霊エストリアがただの勝負パンツお姉さんである筈がない。
そしてめちゃめちゃ気になるのが賢者ルドルフ、そして【カンジ】と彼女が言った事だ。
赤ん坊の時に見た夢。
今はもううろ覚えだけど、あの時の賢者さんは大精霊エストリアとの出会いを予言していたのか?
「たしか『自由に生きよ』みたいな事を言ってたような……」
そして僕は右手をまじまじと見つめる。
うずく……。
中二心を昂ぶらせる複雑な紋様の魔法陣が刻まれた右手。
「み、右手がうずく……。時はきた、悪魔の血が覚醒する……」
中二的に右手を押さえて、お決まりのセリフを喋る僕。
悪魔の血は覚醒しなかったが、とんでもない魔力を授かったのは事実のようだった。
◇
この時の僕は理解していなかった。
大精霊神エストリアが授けた力の程を。
僕が黒髪の魔術師と呼ばれ人々から畏怖される事を。
そして世界に魔法革命が起きる未来の事を……。
【作者より】
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