「陰謀論編」

幕 間 叔父はテレビを信じない

 暇なので、意味がわかると怖い話でもしようと思う。


 あれは中三の冬だった。

 年末も年末、大晦日の夜に、焼酎瓶の二本目をあけた海斗おじさんが、ろくに扱えもしないSNSを眺めながら「若ぇ連中はどうしてすぐに陰謀論を信じるんだ?」と、僕に問うてきた。

 

 僕は「決めつけないでほしい」と至極冷静に酔っぱらいをあしらった。


 海斗おじさんは父さんの兄であり、僕の叔父にあたる。

 端的に言えば、親戚の「顔役」みたいな人で、長男ということもあってか、ガタイと声が異様にデカい。


 おじさんが木天寥またたび家のこたつを我が物顔で占領しながら、「けっ。笑えない年末は年末じゃねえ」とテレビに向かってケチをつけ始めたところで、姉と妹は二階へ、兄さんは外の空気を吸いに、父さんと母さんは買い出しに行くと言って、そそくさと退散した。


 賢い判断だとも思うけれど、薄情だなとも思う。


 要は、面倒な叔父の相手を押し付けられたのだ。


「そもそもおじさんは主語が少なすぎる。なんの話をしてるかもさっぱりだ」

「ガハハハッ。小金も小生意気になったもんだ。いやあよ、どうも、巫女さん歌合戦で原爆を想起させる曲が八時十五分きっかりに流れたらしい。ちょうど、一時間前くらいの話だな。ひっく」

「あー。それならさっき僕も見た」

「小金はどう思ったよ? 確かにこの話が本当なら道徳ってもんが骨の髄から欠けてやがる。けどよお、あると思うか、そんな偶然? ははっ、バカげてやがる。陰謀論だ、陰謀論」


 海斗おじさんはいつも得意げに笑う。

 ドッキリ番組を観ている時なんかは特に。やれ「やらせ」だ、やれ「台本がある」などといきり立っては、ゲラゲラと腹を抱えて笑っているのだから、甥の目から見ても救いようがない。


 そう。

 今回も「台本」があったのだ。

 おそらく、たぶん。


 おじさんは『信じたくない』が先行しているだけで。


 僕は色んな意味で、とても笑う気にはなれなかった。




 ※ ※ ※

 この短編はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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