あとがき。

 あれから五年が経った。

 今でもあの時の事は夢なのか現実なのかよくわからない。が、家の裏の空き地にはちゃんと窪みも残ってるし、でっかい隕石も出てきた。

小さなレンズも集音器もまだ彗の部屋に置いてあった。

 そして今俺は、あの時アイツが言った、出雲大社に向かっている。

 果たして本当なのか。確かめたい気持ちから、つい早足になる。

 参道から大きな鳥居をくぐり、少し冷たい空気に上着のジッパーを閉めた。

 お社いっぱいに広がる大きなしめ縄が見える。あんなものを作るのはさぞかし大変な作業に違いない。あのしめ縄だけで、もう神秘の香りが漂う気がする。

 アイツはどこにいるんだろう。見落としてはいけないと、弦担ぎもあって神在月に来てみたものの、所在に検討がつかない。

 やはり作法に則って、海岸の砂をこちらのお砂と交換して…とかした方が良かったんだろうか。

 と。


「あっ!」


 何だよこんなとこにいたのか。たくさんいるウサギの中で、すぐにコレがキミだとわかったよ。

 大国主命に助けられたウサギの仲間の話は、キミ自身の話だったんだな。

 話は出来なくても、また会えて嬉しいよ。


 ありがとう。

 キミのお陰であれから俺はちょっと変われた。

 人と交流を持つように努力もしたし、何人か…多くはないけど、友達と呼べる人も出来たよ。

 いっぱい喋っていっぱい泣いて、信じられないかもだけど、いっぱい笑って…優しくすることも出来たんだ。

 でね。俺みたいな子供って、ひっそりと…結構居るのかも知れないって思うようになってさ。キミが俺にしてくれたみたいに、俺もなんか出来ないかなぁって。今、小学校の先生になったんだ。

 理科をね、教えてるんだ。天体だよ。

 たくさんの星をね、ウサギさんが一生懸命磨いてくれてるから、星はいつも綺麗に瞬いているんだよって生徒に話してるんだ。いつも信じてもらえないけどね。

 でもいいんだ。俺にとっては、俺にはキミと出会った事実は変わらないから。キミが俺の為に、一生懸命磨いてくれてたのを知ったから。


 また、調査とか何とか…理由をつけて俺にも会いに来てくれよな。餅と砂糖、食い切れないくらいいっぱい用意しとくからさ。




 じゃあ…。また来るよ。


 今度はきっと、キミの名前、教えてよね。






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ウサギのお仕事。 葉山 うさぎ @usagimaru1208

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