最終話 Cの世界

 気がつくと、ぼくは――

 何もない空間 に浮かんでいた。


「ここは……? みんなは? 13? 12? おーい!」


「シィ。安心しな。おれたちはここにいるよ」


 12の声だ。


「うむ。おかげでおれも助かった」


 −1の声もする。……無事でよかった。


「ま、ぼく様にかかればこんなもんさ」


 1の声。


「ありがとう、1。うまくいってよかった。でも、みんなが見えないよ……」


「大丈夫。みんな無事よ」


 13の声がかつてなく優しく響く。


「ただ、もう数次空間は……シィには認識できない<次元>の形になってしまったの」


 0.1が少し寂しそうに言う。


「がははは! だがな! わしらはいつでもここにおるぞ。気が向いたら、また来るがよい!」


 ∞はいつも通りだ。


「そう、この――君が救った複素数の空間に」


「ちょ、0、ズルい! 普段話さないクセにカッコいいとこ取るな!」

「わしにも言わせろ!」

「ふふふ、早い者勝ちですよ」


 見えないのに、特異点トリオ0・1・∞のやり取りが目に浮かぶ。


「そろそろお別れのようじゃな。最後に数字を代表して感謝の言葉を言わせてくれ。――ありがとう。シィ」


 あ、元老院の人の声だ誰だろう。多分2かな


「じゃあな。シィ。楽しかったぜ」


 12の声が響いた次の瞬間――



 ぼくは目を開けた。


 そこは自分のベッド。

 隣には数学オリンピックのトロフィー。


「夢……?」


 いや――違う。ぼくの手には13の羽根が握られていた。


「あれは――現実だ。少なくとも、ぼくにとっては」


 ぼくはそっとトロフィーを羽根と一緒に棚に飾り、

 ぐーっと背伸びをする。


 窓の外には、いつのまにか青空が広がっていた。


「みんな、また会いに行くよ――」


 どこまでも続く世界を見ながら、ぼくは静かに笑う素敵な一日がはじまる



おしまい

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【短編小説】数次空間コンプレックス 風上カラス @moyashi_japan

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