第4話「あれ? ……後ろにいる女の子、だれ?」
**第4話:愛の魔法!**
「やあ!」
タイミング悪く、あるいは良く、ファミレスの入り口に渦中の男が現れた。
まさに、噂をすれば影あり。
友人たちは一瞬で凍りつき、冷や汗を流しながら必死に笑顔を作った。
「お、おう! お疲れ……!」
俺はジロリと友人たちを見回した。
「お前ら、俺のいないところで何の話で盛り上がってたんだ?」
友人Aが泳いだ目で答える。
「いや、あのさ? お前のこと褒めてたんだよ。そう、純愛だなって!」
友人Bが慌てて乗っかる。
「なあ? と、ああ~そうだ! 一途ですげぇなって尊敬してたんだよ!」
必死の口裏合わせ。
俺は鼻をヒクつかせた。
「なんか……臭うな? 嘘の匂いがするぞ」
疑いの眼差しを向けていると、友人Cが、俺の背後を指差してポカンと口を開けた。
「あれ? ……後ろにいる女の子、だれ?」
友人たちの視線が、俺の背後に隠れていた彼女に注がれる。
そこに立っていたのは、清楚なワンピースを着た、目鼻立ちのくっきりした美少女だった。
俺は呆れて言った。
「だれって? 俺の彼女! 一二三(ひふみ)ちゃんだよ!」
「……は?」
「なんだよ! 初めて会うわけじゃねーだろが! 失礼な奴らだな」
俺は一二三ちゃんの肩を抱き寄せる。
彼女は恥ずかしそうに「こ、こんにちは……」と小さく手を振った。
その仕草は、どこかのアイドルかと思うほど可憐だった。
友人たちの脳内で、以前の「個性的な一二三ちゃん」の記憶と、目の前の「美少女」が衝突事故を起こす。
「「「エヴええ!!! あ、あの、一二三ちゃん!?」」」
ファミレス中に響き渡る絶叫。
俺の「かわいい」という強い思い込みは、どうやら現実をもねじ曲げる『愛の魔法』だったらしい。
……あるいは、俺の能力が「世界の方」を書き換えてしまったのか。
今の俺にはわからない。ただ、一二三ちゃんがかわいいことだけが真実だ。
(つづく)
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