第3話『あいつの頭は大丈夫なのか』



**第3話:真実の愛とは!**


放課後、ファミレスのドリンクバー。

俺(主人公)のいないテーブルで、友人一同による緊急会議が開かれていた。

議題は一つ。『あいつの頭は大丈夫なのか』についてだ。


「……なぁ。やっぱさ、アイツ、病院連れて行ったほうがよくね?」


友人の一人が、ストローを噛みながら深刻な顔で切り出した。


「だよなぁ。眼科か? それとも脳外科か?」

「いや、精神科だろ。『反対の反対は反対?』とか訳わかんねーこと言ってるし」

「俺もそう思う」


全員の意見が一致した。

プラシーボだの超能力だの言っているが、客観的に見れば、彼は「個性的な容姿の女性」に抱きつき、公衆の面前で愛を叫ぶヤバい奴だ。

友情があるからこそ、放置してはいけない段階に来ている気がする。


重苦しい空気が流れる中、ふと、友人の田中がポツリと言った。


「でもさ? ……ワンチャン、あるくね?」


「は? なにが?」


「いや、だからさ。超能力なんて最初からなくてさ」


田中は声を潜め、この世で最も恐ろしい仮説を口にした。


「あいつが、何のフィルターもなく、素面(しらふ)で、本気で心の底から『かわいい』って思ってたら? ……どうする?」


「………………」


全員の動きが止まる。

脳内でシミュレーションが行われる。

超能力という言い訳(ギミック)を剥ぎ取った、あいつの純粋な美的感覚。

あの顔を見て、脳内補正なしで「天使だ!」と叫んでいるあいつの姿。


それが意味することは、「真実の愛」か、それとも「壊滅的なセンスの欠落」か。


想像した瞬間、友人の佐藤が口元を押さえた。


「うげぅ!」

「ちょ、おい!」

「吐きそう! マジで吐きそう! やめて!」


想像の破壊力が強すぎた。

生理的な拒絶反応がテーブルを包み込む。


「あ、ありえる……あいつなら、素でやりかねねぇ……」

「怖い。純愛すぎて逆に怖い」


友人たちは戦慄した。

超能力であってくれ。頼むから、あいつの目は狂っているだけであってくれ。

そう祈らずにはいられなかった。


(つづく)


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