第2話 水の精霊、リノと契約
上空から落ちてきた半透明の精霊は、「ザブーーン!!」と、派手な水飛沫をあげてルアンザ池に落ちた。
空から、落ちてくる精霊なんて初めて見たぜ。
驚いたことに彼女は、池に浮き上がって華麗に泳いで俺のいた岸までやって来たんだ。
そして怒鳴った。
<何なのよ~~ ここは何処?>
「ここは、銀の森だけど? どうしたの? お前」
<銀色の女神様にスカウトされたのよ~ それでそこにいたネコに蹴り落されたの~>
「銀色の女神? 天界にいるっていう?」
その時、俺の頭上にいた『風の親分』のマルコーが口を開く。
<アルベール、これは噂に聞く異世界の転生者なのかもしれないな。天界の女神が異界の者をスカウトして、この世界に送り込んでくることがあるそうだ>
俺は、池のほとりで蹲って震えてる精霊を指差して言った。
「これが~~?」
<これとは何よ!! 私は、
あれま、自分から名乗るとは……本当にこの世界のことを知らないようだ。女神の特典付きの精霊なら高位の精霊に違いない。もう名前を取ったしな。
「お前は、精霊だよ。魔法使いと契約して役に立つのが精霊の仕事さ。先にお前の属性を探ろうぜ! 風では……ないな。火でも無さそうだし……大地とも違うようだな……」
<水ではないのか? 引き寄せられるように池に落ちたからな。泳ぎも見事だった>
風の親分』が値踏みするように言った。
「池に手を突っ込んでみてくれ」
俺は、ミナーセに言ってみた。ミナーセは、不満そうだったが、俺の言うことを聞いてくれた。
半透明のミナーセの手が、池の水に触れると魚たちがやたらに寄ってきた。歓迎してるのだろう。水の精霊で確定だ。
後は契約だな。
「よし、ミナーセ。お前の名前はもう取った。俺は、アルベール・ロイルだ。頭上には先住の『風の親分』がいるから、お前は俺の左肩に来い」
ミナーセは、上目使いに俺を睨んでいた。
<私の名前は、リノよ。ミナセは苗字。この世界が西洋風だとしたら、リノ・ミナセよ!! ミナーセってなに!! それに契約って何?>
俺は、ちょっとビビった。こんなにハッキリとした口調で、自分を主張して来る精霊は初めてだった。
「この世界は、光の神に祝福されてるんだ。光の眷属の精霊は人間と契約して魔法を使えるのようにさせるのさ。……そうか、リノか。ミナーセよりも簡単だな。リノ、俺の左肩に来い」
再び俺は、ミナーセではなくリノに声をかけた。
リノの身体は、抗うことなく俺の左肩に移動してきた。
<なんで~~??>
「精霊は、身体が無いんだ。名前を知られれば勝手に契約されるぜ」
気の強い女だな……左肩が濡れてきたんだが……
そういえば、リノはどれくらいの力があるのだろう。
「取り合えず、名前が呼べないんだから、『水の乙女』と呼ぶぜ?」
左肩に向かって喋ると、リノは頷いていた。
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