5 - 兄と弟(上)
目論むころには、全てが遅い。
一度、頭をぶち抜かれてみたいものだと思う。
一応断っておくと僕はマゾではない。
じゃあどういう話なんだって言われると少し困るけれど、通常の語彙で最も近いのは好奇心、になるのかなと思う。
恐らく、頭をぶち抜かれても即死ではないのだと思う。まあ、ぶち抜かれ方によるのだろうけれど。口に咥えて撃った場合脳幹を損傷できるから本当に即死だとかなんとか、正直詳しくは知らない。でもそういう話は正直どうでもよくって、いくらでも考えられるであろう即死じゃないケースを僕は考えたい。
どんな感覚なんだろうかと、そう考える。
色々考える。痛いのかな、いや痛いには痛いんだろうけど、非日常的な痛みにすぎてあんまりイメージができない。頭痛の延長線上として考えるのは流石に違うだろうし、とか。恐らく自立できなくなるのだろうけど、力が抜ける感じがはっきりとあるんだろうか。そもそも「力が抜ける感じ」って一般にはっきりとはしてないかな、とか、あと、やっぱり一番気になるのは視界で、世界がどんなふうに映るんだろうかと思う。それはとても気になる。すぐに真っ暗になるのか。いや、真っ暗ってのもよくよく考えるとよく分からない。死亡までにかかる意識の有無、そのグラデーションに視界が暗くなるようなイメージが何故か直感的に含まれるけれど、正直全然筋が悪いような気がする。眠ることとのアナロジーなのだろうけれど、でも死ってのは間違えても黒色ではなく無色だろうから、というかそもそも有と無、生と死ってのは離散的なものであってそこにグラデーションを観念できるものではないのではないか?
ふと、有と無と生と死をノータイムで繋げていることについて無自覚だったけれど、それでいいんだろうか。よく分からない。眠たくて仕方なくて、そう言うときの思考ってのは深いようで何も残らず弛緩して繋がってはたちまち解ける。
ほら丁度、レンガの赤と灰色のモルタルが不気味なグラデーション模様を描いているのが目に入る。いや全然離散的。何が?やはり頭が悪すぎる。ここは廃倉庫で、床には埃と紙くずが積もり、所々に油の染みが広がっていて、重苦しい雰囲気だ。さらに薄暗く、全てが寝れてしまいそうな要素に映ってくる。天井の鉄骨からぶら下がった古びた蛍光灯が一本、かろうじて光を放っているだけ。
でも、何かは見えているだろう。こうして、いくら暗くたって何かが見えているのと同じで、頭をぶち抜かれてから死ぬまでの刹那、意識というものがあるのならば。意識がありつつ何も見えていないというのはよく分からない。僕たちはそういう時、やっぱりどうしても、何故だか目を閉じた時よろしく漆黒をイメージしてしまう。不本意にも。
だから、やっぱり一度ぶち抜かれてみるしかないのだと思う。やってみないことには分からない。何事も経験で、経験を理論で超克できるなんてのはたいていの場合傲慢、なのだと思う。頭でっかちにあれこれ考えて解決しようとするのをやめて、その肥大化した頭をとっとと吹き飛ばしてみるべきなのだ……と、なんとなく視界ごと自らを殴りつけてみる。眠気からこそ繰り出せる放り出すような殴打が全てを劈いて、痛いようなそうでもないような。あんまり何も変わらなかった感じがする。意味なんてない。眠気覚ましにはなる、眠気を覚まして何かいいことがあるのか、無い。全く。
頭をぶち抜かれることは眠気覚ましにはなりそうだなとか……何だか気持ち悪くなって、そのうちかえって頭が覚めてくる。快不快構わず程度が強いと起きられるってことを知っていて、そのまま夢の続きを見るように考えていたことの続きが続けられる。
そう、そうだった。言わずとも明らかな話として、この向きの難点としてあるのは当然、一度やってしまったらもう全部御終いだということだろう。本当は頭ぶち抜かれて死んだ後に時間を巻き戻してその感覚を分析したりしたいものだと思うけれど、残念ながらそうはいかない。バーチャルリアリティが完全なものになったらそういったこともできるかもしれないけど、そこでシュミレートされる頭ぶち抜きと現実世界での頭ぶち抜きによって得られる感覚が同一だって何が保証してくれるのか。そもそもやり直しがきくという点で圧倒的に感覚的差異が生まれるのは避けられない。死んでしまう事を抜きにした拳銃自殺だなんていささかパラドキシカルにすぎないかな。
そんなことを考えている。
足元にある頭をぶち抜かれた死体を見ながら、そんなことを考える。
ふと不謹慎な自分に嫌気がさして。さらにそのことに嫌気がさした。そんな凡庸な感情が残っていること、悪いことじゃないのかもしれないけれど、なんだか筋違いのような気がしてくる。いやもう、一々この程度のことを気にしていてはキリがない。自分の中に偽善の要素があることはかねてより重々承知しきっていて、何もかも今さらだった。こいつが、この死体が、自分のしたことなしたことと全く無関係に死んだ者ならまだしも、概ね僕の、僕たちのせいでこいつは死んでいるのだから尚更。僕のあり方やり方は偽善の中の偽善にすぎて、可哀想だとすら思えるから更に尚更。
別に死んでほしかったわけでも殺したかったわけでもない。だからこそ一層僕はタチが悪いのだろう。恨みや暴力性がトリガーになっているのなら対象はある程度絞られることだろうから。僕は誰に対しても恨みなんて基本的に持ち合わせていないし、暴力に興奮したりする感性も全くない。ただ成り行きに任せているだけで、だからこそ誰であっても殺す。のだろう。僕はアイヒマンより凡庸に凡庸を重ねたような悪だと思う。きっとアーレントが僕を見かけたら嬉々として分析対象にしてー悪の凡庸さの代名詞がアイヒマンから僕になっている世界、そんな下らない妄想を少しだけして……軽くため息をつく。反動で無意識に鼻から息を吸った際のむせ返るような匂い。このような光景にはもう慣れっこだけれど、この匂いにはいつまで経っても慣れない。プリミティブで身体的な不愉快さにはいつまで経っても慣れないものらしい。まったくもって救いの無い事実だと思う。唯一良いこととしては眠気覚ましになって、眠気覚ましが良いことだとやっぱり思えない。しいて言うなら残念ながらある程度必要ではある。と言う感じ。
脳が見える。通常のピストルではここまで酷いことにならない。
そもそも銃で死んだのかも怪しい。口径が大きい物だったらあり得るけど、とか考えようとしてやめる。どうでもいい。何であれやることに変わりはないのだし、仕方がない。中身をぶちまけないようビニール袋で頭を覆って首元で縛ってやって、死ぬほど重い、実際に死んでいる肢体をおんぶして外に運ぶ。これで確か……4体目。かつ5体目以降はいないから、これでも今日はずいぶんと楽な方の日だって言える。
この作業をしている時によくする妄想、このおんぶしている肢体が実は生きていて、首筋を噛んで嚙みちぎってくる。
今だってその妄想をして若干怖くなる。こいつは脳が吹き飛んでいて生きているはずがない。それでもなぜだか不安になる。と同時に、そうなってくれた方がいっそのこと楽なのではないかとも思う。楽に死ぬ方法ってのはあんまりない。だから何か自分の外部が強制的に殺してくれない限り死ぬのは中々に難しい。だからいっそのことやはり、とか言いつつも実際に首筋を噛まれたら痛すぎて嫌になるのだろう。進化上の利点としていい塩梅なのだと思う。激痛の回避より優先したいことなんてない。死ぬということに対しても例外ではなくて、お手軽自殺は大体痛い。痛くない自殺は準備にある程度時間を要してそれまでの間に冷静になれてしまう。我々をこの世界に繋ぎとめるやり口として、やはりどこまでも巧い塩梅だなと。
鍵が壊れた両開きの大きいドアを身体で開けて、月明かりのもとへ。まだこちらの方が明るいように感じられる。顔を上げて何となく月を見ながら歩いて、すぐそこに掘ってある穴に自分ごと落ちそうになる。初歩的すぎるミスに一瞬息を呑みながらも笑いそうになって、一瞬で下らなくなって無感動に体勢を立て直し、死体を放り込む。まあまあちゃんと首元で縛ったつもりだったのだが、ビニール袋がいつの間にか外れてしまっていたようだ。中身がぶちまけられる。既に穴の中にいた肢体達に、それが。
そんなリアルな光景を目にして、しているのに、また僕は浮いたことを考え始めている。僕たちはもう知識として体の中に脳だとか臓物だとか血管だとかが張り巡らされているってことを知っている。ここで起きたことは脳と脳漿がぶちまけられたことで、それ以上でもそれ以下でもない。誰の死体でやっても同じことだと。でもそうでない時代、まだ誰も体内に対しての知識がない時代に偶然こういう光景を目にした人はどう思うのだろうか、と。言語的理論的説明がないままにいきなり自分の中で未分化の概念としての臓物や脳を見せつけられたら?間違えても僕たちの頭の中や腹の中も同じようになっているなんて発想にはならないと思う。どうだろうか?そうなのだろうか、よく分からない。知ってしまった後で知る前の感覚など分かりようがない。そもそも本当に同じなのか、そんなことも知らないと言える。今僕の腹を掻っ捌いてみてそこが空洞だったとして、そうなっているならそうなんですね、としか言いようがない。何が入っていても同じことだ。流石により小さくなった僕がマトリョーシカのようにいくつも入っているだとかそんな変過ぎることを考える必要はないとしても、例えば空洞程度ならまあそうですか、となる。なんかそれで代謝したり呼吸したりが上手く行ってるんですねえ、と理解する外ない。腹掻っ捌いて臓物があふれ出てくる場合であろうと同じことで、このグロテスクな塊がどういう機序で代謝だとか呼吸だとかを司っているのか想像もつかないし、なんかこれで色々上手くやっているんですねえ、と理解する外ない。だから大差ない。
そんなことを考える。
そんなことを考えながら、積み上げられた砂山に対し無造作に置かれたスコップを拾って、埋め始める。死体の中には臓物やらなんやらが覗いているものもあって、やっぱり自分の体の中にこんなものがぎっしり入っているというほうが現実味がない話だと思う。自分で処理し自ら見たものなのに。
僕はこの埋める作業が嫌いで仕方ない。さらに眠くなる。同じ作業の繰り返しは気怠さを加速させ鈍らせる。もうずっと寝てしまいたいのに、もうとっくに色々諦めているはずなのに、何もかもが重たくて、さらにもう一段何もかも諦めたくなる。改めて、頭をぶち抜かれてみたい。やっぱり単に何か、スカッとしそうだ、眠れそうだみたいな意味合いで。
少しずつ、確実に見えなくなっていく死体達。そんなわけがないんだ、やっぱり。無い表情をわざわざ注視している自分。こいつらは苦しんで苦しんで、苦しみぬいて死んだ。実際に本当に頭をぶち抜いたら痛くて痛くて絶対にその一瞬を無限のことのように後悔する。眠ることに近いわけがないのに。さっきも似たようなことを考えたこれまでもこれからもそういったことを繰り返すのだと思う。いつだって関節が痛くて体全体が軽い熱を帯びている、血や硝煙の匂いがしみついていて、眠ってしまうにはとっくにいつだって眠すぎるんだ。こういったことを繰り返すのだと思う。何だって一体?そう、穴を掘ってただ埋めさせるという作業を囚人にやらせたら一番病んだ、みたいな実験があったはずだ。人は無意味なことをさせられるのが一番辛いのだと。僕は今人間を埋めておいて、ただ穴を掘って埋める作業とのアナロジーで自分を捉えているのだなってことを捉えて、やっぱり最悪だと思った。
分かりきったことだった。
逆に言えば何も分からない。
僕は何も知らない。死んでいったあいつらの名前も、ぶち抜かれて死ぬ感覚も。そして弟のことも。ふと思い出す。恨みが暴力性がトリガーになっているなら対象がある程度絞られる?そんなバカげた思考を平然と、何にも引っかからずにしてしまった僕はやっぱり眠いのだと思う。やはり笑えて来るぐらいに寝ぼけているのだと思う。そんなのは無機質で経験を欠いた机上論も机上論であって、僕はそれを誰よりも身近なものとして、良く知っているはずではないか。
弟の話をしたい。
いや、したくない。
僕は弟の話なんて全くしたくないし、僕は生来あいつのことが全く分からないからするべきでないとすら思う。あいつが生まれてからというもの、あいつは僕に付きまとい、僕はあいつのケツを拭き続けている。年の離れた弟。
端的に言って、キチガイだった。
キチガイなんて強い言葉を使うのは少し憚られるけれど、同時に、こんなものじゃ全く足りないとも思う。どれだけハードルが上がったってかまわないと思う。
それも素朴に、最悪の方向で。
確かに極まっているけど、アニメの登場人物だとしても人気が出ないと思う。素朴に最悪なだけのバカで単なる最悪だから魅力とかもない。と思う。いや、現状を踏まえると残念ながらそうでもないのだろうけれど、まあそれはとりあえず置いておいてそう思う。サイコパス系のトリックスターとかそういう感じですらない。そういったものともかけ離れている。思想も矜持もまるでなく、ただただ破壊するだけ。
事の発端は、こいつがまだ小学2年とか3年とかとりあえず低学年のころ。
よく覚えてないが低学年のクソガキの頃だったことだけ覚えている。教室のみんなで育てていたウサギが死んだ。ぴーちゃんだかぴょんちゃんだとかそんな名前だったらしい。何故かそんなことは覚えている。とりあえずそのぴーちゃんだかぴょんちゃんだかが何であれ死んだ。死んだというかこいつが殺した。事故という線も無く、明らかな切り傷刺し傷によって。僕はそれを直接見てはいないけどきっと凄惨な光景だったのだろうと思う。
放課後、ケージの隙間からカッターでザクザクザクザク刺しているこいつを偶然先生が見かけて、僕たちは家族総出で学校に呼び出された。
校長、教頭、担任、発見した先生が向こう側、父親、母親、僕、弟がこちら側で、長机を挟んでいる。事を知らされた父親はわざわざ立ち上がって反対側にいる弟のことをぶん殴った。何回かは覚えていないけどまあ何回か殴っていて、母親はずっと泣いていた。まあこれだけでも分かると思うが見ての通り両親は本当に普通の人達だった。こいつ以外はステロタイプの家庭と言う感じ。僕だってそうだったと思うけれどとりあえずそれも置いておいて、当時僕が考えていたことは、普通の両親からも低い確率でこんな子が生まれるんだな、みたいなことだった。僕も確かにこいつがセミやらなんやらを幼少期から殺しまくっていることは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。でも、同時に「ここまで」って何だろうとも思う。どうしてセミを殺しても誰も何も言わなくて、ウサギを殺したらこうもみんな騒ぐのだろう。それは直感的ではあるけれど、説明しろと言われたらよく分からない。そんなことを思った。こいつがそんなことを思ってウサギを殺したのなら、共感はできないけどまだ理解できるな、とも。
「すみません」
そうやって、思わず声を出していた。何故そんなことをしたのか全く思い出せないけど、きっとどうせ、当時も何故そんなことをしたのかなんてわかっていないと思う。今だってずっとそういう感じなのだし。
「一旦一対一で話を聞いてみていいですか、こいつ、話すの下手なんで」
律儀に手を挙げ、そう申しつける僕。どこか宙ずりになったような感覚。実際、この記憶は何故か三人称でしか思い出せない。この情報は何かの意味において実際といえる気がする。
母親を除き暫くみんな押し黙っていたけれど、教頭先生が静かに頷いたのを見るや否や、僕はすぐに立ち上がり、倒れ込んだままの弟の首元を掴み隣の部屋へ引きずっていく。
こいつは小学生で、僕はもう中学生、かつ運動部だったからか、大して協力的でないこいつであってもこうして持っていくのに不自由はなかった。廊下を経由し教室のドアを開け雑に放り込む。歩み寄って、呼吸が不安定になっているこいつの背中をさすってやる。
呼吸が落ち着いてきたのを確認して、僕はこんなお伺いを立てる。
「なんで殺したんだ」
本当にやったのか、みたいなことをまず聞こうと思っていたはずだった。
「……だって……なんか」
だって?と思う。
暫くして、
「可愛かった……」
思わず力が抜けて目を閉じる、眉間のあたりを抑える。
ああ、聞くんじゃなかった。例えば……そう手術の本みたいなのを偶然見かけて、元気がなさそうなウサギさんを治療しようと思ったとか、なんかそういうガキによくある無知ゆえの勘違いなのではないかとか、まあそこまでは大して期待していなかったけれど、けれど、多少こう、何かを期待していた部分があったのだろうと思う。”可愛かった”だなんて、本当に、考えうる限り最悪の返答ではないか。
「指、噛んできた……むかついた……」
そう続けた。右手を丸めて見つめている。恐らく噛まれた場所なのだろうけど心底どうでもいい。いや、別にまだマシかと思う。少なくとも純度100%の”可愛かったから”よりは遥かに。
「でも、ううん」
こいつは何やら首をかしげて考え始める。この状況で何を考えることがあるのか、いつだって何を考えているのか、分からない。
「何か……他にないのか、理由とか」
バカみたいに黙りこくっているから、バカみたいな質問をする。僕はこの期に及んでまだ、いまだに、何かを期待していたのかもしれない。
「……やってみたかった?」
この瞬間、当時もう全てが「いいや」と言う感じになって、思考が次にシフトしていたから右から左だったが、今思えば”可愛かった”よりも致命的な、本質的な返答だったように思える。
”やってみたかった”
つまるところそういうことで、そういうことでしかなかった。単なる好奇心。ただやってみたかった。よく分からないけど。こいつは単純な怒り以外の全てがそんな感じだった。この先もずっと、そう見える。
脱力しながら考えた。
先ほど言った”次”ってのは簡単なことで、すなわち事態が一番丸く収まるやり方は何なのかってこと、それ以上でもそれ以下でもない。少なくともこいつにこれ以上何か喋らせるべきではない、それだけは明白。だから僕はこいつの頭を雑に撫でて「ここで待ってろ」とだけ伝えて部屋を出る。後ろ手に扉を閉めてそのドアにもたれ掛かり、廊下で息を整える。
目を閉じて考える。もうやることは大体決まっている。そうあってほしかったパターン1、手術の本みたいなのを偶然見つけて……だなんて、ああ、とっても良い話を既に思いついているではないかと思う。出来合いのストーリー、矛盾点がないかのチェックを脳内で済ませて、陰鬱な空気漂う部屋に舞い戻る。
大体のことがこういう感じだった。
どうするべきなんだろう、こいつ。まあ最終的にどうするかは置いておいて、とりあえずごまかす。取り繕う、もみ消す。それぐらいしかできることなんてなかった。こいつは動物を殺すし実を言うと人も殺していた。僕が明確に知っているだけでも2人。
さらっと言うことではないかもしれないけど、さらっと言ってしまいたくなるぐらいにはなんだか直感的なことになってしまっていて、元々人が人を殺すということに対してどういう感覚を抱いていたのかもうよく思い出せない。ただすることは決まっている。
その時間は一緒に家でゲームしてましたよ。嘘。
事故なんです。こいつ、根は悪い奴じゃないんです。嘘。
この子が見に来た頃にはすでに死んでいたらしいです。嘘。
今はショックを受けてるので何も訊かないでやってください。嘘。
嘘嘘嘘。特に最後のは酷い嘘だと思う。
あいつは、いつだって楽しそうだ。
逆に言うと楽しくないもの、気に入らないものはすぐに壊す。
例えばまだこいつが、思えばすごいことだが……時々小学校に通っていたころの終盤、先生にクラスメイトとの喧嘩を仲裁され、お互いにごめんなさいしなさいと言われて、先に謝った相手にブチ切れてさらに殴りまくったらしい。その話を人伝えに聞いた僕は、また、やめとけばいいのに、やめておけばいいって分かりきっているのに、なんで謝ったのにさらに殴ったのかとか、なんとか、訊いていた。
「馬鹿にしてる」
と。即答だった。当然何が、誰が、などと訊く。
「僕が怒ってるのに謝って、それだけで怒るのやめるって、馬鹿にしてる!」
そう言って地団太を踏み始める。そうそう。これは本当に面白くて頻繁に思い出す。地団太を踏んでいるこいつがではない。当時の僕はこいつが何を言っているのか全く理解できなかったのだ。まだこいつはガキで頭も悪いから言葉が足りていないんだろうと。そうではないと気づいたのは少し、何なら結構確か、半年ぐらい時間が経ってからだった。何故か急にこの時のことをふと思い出して急に意味が分かった。そういう経験は誰しもあると思う。
”僕が怒ってるのに謝って、それだけで怒るのやめるって、馬鹿にしてる!”
思い出すたびに、思えば思うほどその通りに言えているから笑えて来る。意味内容自体に問題はないのに、意味が全く理解できなかったことが、心底可笑しい。
僕は、こいつのことがよく分からない。
でも別にどうでもいいともいえる。繰り返しになるがいつも通り、分かっていようと分かっていなかろうとやることに変わりはない。相手の子、その親、先生やら大勢に頭を下げに行く。
「先に謝らなきゃって頭ではわかっていたらしいんですけど、それをうまく表現できなくってパニックになったみたいで……それから……」
我ながらよくもまあそんな嘘ばかり思いつくなと感心する。他人事みたいな感情さんが独り歩きしながら勝手に事件をきれいにしていく。僕はまるでその様を眺めているにすぎない、みたいな、そんな感覚。よくもまあうまくやったものだと思う。僕がこのキチガイとは対照的に基本的には優等生だったから、大人たちに信用されやすかったとの言うのもあると思うけど、それでも大変だった。様々な根回しや買収。ガキのすることを目撃するのはガキが多く、ガキってのは数千円で動く。まあ、でもそんな小手先の取り繕いにも限界というものが流石にあって、結局健闘むなしくこいつが少年院にぶち込まれるかぶち込まれないかというところまで差し掛かる、というかまあ、第二種少年院の年齢制限を満たし次第すぐにぶち込むみたいな算段になっていたことを鑑みるに、全然誤魔化せていなかったのかもしれない。寧ろ第一種に入っていなかったのが不思議なぐらいで、まあ、僕がいなかったらそうなっていただろう、からやはりうまくやっていた、のだろうか。どうでもいいな。
そうして、どうでもいいなりに何とか誤魔化せないか頭を悩ませていたであろう、そのさなか「新世界」はやってきた。
僕は勝手に思い出す。思い出してしまう。その前日に母親が皿洗いをしながら言ってきたこと。
「実は、分かってるのよ」
何が、誰だってそう思うはず。突然言われたら誰だっていつだって。なのに薄々何が言いたいのか気づいていた、しまっていた。
「何が」
でもとぼけて見せる。半ば反射的なあの、あの感じ。自我なく平常のお手本通りのコミュニケーションの範疇にのみいることを後から認識できるあの。
「あの子のこと」
あの子ってどの子。とはさすがに言えなかったし、なんなら何も。
「頑張ってくれてありがとう」
父親は本当に何も気づいていなさそうだったけれど。やはりこういうのは得てして女性の方が気付くものなのかもしれない。
流れる水の音だけが聞こえてくる、そのひたすらにばつの悪い時間の質感までしっかりと思いだせる。耐え性のない僕は立ち上がって、少し早歩きで自室に戻ろうとする。
「ねえ」
ドアノブに手をかけた矢先、後ろから声が聞こえる。水音はいつからかなくなっていて、お互いに表情が分からない中で。
「あの子を産んだのは間違いだった。本当に、ごめんね」
自室に入るなりベッドに思いきりダイブして、力が勝手に抜ける。
枕に押し付けるよう「仕方ないだろ」と呟いた。覚えている。
お母さん、どんな子が生まれるかなんてコントロールできることじゃあない。やめてくれ、気にしないでくれ、謝らないでくれ。お母さんは、お父さんも、別に何も悪くないじゃないか。何だか泣きそうになる。実はもうずっと前からそうだった。今日声をかけられた瞬間から?もうずっと前から?よく分からない。
別にどうだっていい。どうだっていいはずだった。さらに枕に潜り込む。潜り込み切って、ああ、別にどうってことないのに、前や、いつも、なんとなく考えていたこと。どうってことないんだよ母さん。本当に本当にそう思える。そうだ。幸運なことに僕は勉強も学校も、ひいては生活がそんなに辛くない。し、こんな弟がいるのに、みんな僕を差別しない。なんなら仲良くしてくれている友達だってたくさんいる。クラスメイトは弟について踏み込み過ぎず無視しすぎず、本当にできた人間に囲まれていて恵まれていると思う。差し引き僕は全然不幸じゃないんだ。毎日働いている父さんや家事をしているお母さんの方がよっぽど大変だろう。別に、この出来の悪い弟がバカやった時だけ時間を使ってやって、良い感じにする。それで、その程度一向にかまわない。そんなことを強く思った。覚えている。でもなんだか心臓のあたりが締め付けられるようで、何がそんなに自分を苦しめているのか。
そんな感じでぐるぐるしながら寝るまでの間、この日の記憶、むず痒い全てが。妙に鮮明な記憶のうちの一つとして質量を以って、ある。
翌日、両親は死んだ。
目を覚ましてリビングに行くと死んでいた。よく覚えていない、何も追いつかない感じがしたような気がする。夢かなと思った気がする。いや夢かなとかは思わない。なんだか何も思えなかったと思う。だから、覚えてない。感情があんまり動かなかったようにも、感情が座標ごとズレたみたいな感じにも思えた気がする。なんとでも言えるな。面白いぐらいよく覚えていなくて表現に困る、本当に。
そんな中、その日のことで、僕が知識として知っていること。
弟が駆け寄ってきて泣きついてきたらしい。弟は泣きながら「やっと殺せたよ!!」みたいなことを言ってきたはずで、確かそんなようなことを。
なんだか弟の頭を撫でながら、死んだリビングが見えていた。
こまったな
僕は別に、お父さんもお母さんも、嫌いじゃなかったのに。
記憶にないはずなのに、思えばふと妙にエピソード記憶としてしか立ち現れないこんなあれこれが頭の中をなんだか急に占めていてもう苦しいような気がする、ああ、そうだ。そう、丁度思春期を超えたあたりだった。なんとなく仲が良くなり始めていた、そんな時期だったんだ。反面、年齢的にこいつは思春期真っただ中で、今気づいたけれどこれは不運なことなのかもしれない。僕だって思春期真った中だったら世の混乱に乗じて両親を殺していたかもしれない。となんとなく、いやでも、殺していないだろう、実際そういう事件はいくつかあったらしいけれど、やっぱり僕だったら殺したりしない。どうしてもそう思えてしまって、僕はこいつのことが分からない。何ならこいつは生まれてこのかたずっと思春期みたいな感じで境目とか無い、それを一番知っているのは僕だろう、バカバカしいにもほどがある。こうして僕はいつも通りこいつの脳内擁護に失敗する。エミュレートしようとしては霧散する。
あるいはもう一つ素朴な話として強く思うこと。父親は悪事が露呈するたびこいつのことを殴りまくっていたからまだ、分からないけれど、まだ殺すのも頷ける。でもなんで、どうしてなんだって母親まで?出来が悪すぎるのに、出来が悪すぎるお前を責めたことなんてなければ、虫も殺せないような人だったじゃないか。どうして?全く分からない。理解できない。
何となく訊くタイミングを失ってそのままでいる。
僕がそれを訊くよりも早く気付いたこと、拳銃。弟の手に握られている。どうしてと思うけれど、まあ世界が変な感じになって、なんか偶然手に入れたのかな、と思う。こいつを象徴するものとしてまあまあ納得がいくし、少し考えて何だって何だかどうでもいい。ただただ結果だけが重苦しい。こいつが何であれ拳銃を手にし、そのタイミングで世界ごと混乱している。世界ごと混乱しているから拳銃を手に出来たんだろうけど、だから、どうでもいい。それが意味すること。
箍が、外れたような感じ。
妙な感覚が、曖昧なまま確信的に立ち上ってくる。意識的か無意識的にかは知らないけど、とにかく一つ。
こいつでさえ多少、自分を抑えていたということ。はあ?
こいつが?まるで納得いかない。まるで。
”やっと殺せた”
やっと。やっとってことはかねてよりそう思っていたってことで、殺したいけど殺していなかったってことだ。僕はあんまりそれを信じたくないみたいで、一体どうして?お前は、お前だけでも。せめて完全に好き勝手やってるもんだと思っていた。お前すらもそれなら、一体全部何の意味があったんだろう?何だって?自分の思考が自分と思えない。意味ってなんだ。こいつが純粋に好き勝手殺していたなら殺された側も浮かばれるとでも?そんなことは思っていないはずで、でも何だか何かが気に入らない。納得できない。おかしいと思う。全部好き勝手やってそれならこいつがまだ多少、本当に多少だけれど理解できるから、なのかな。分からない。だとして理解できないだろ。普通の話として、それで我慢してる部分もあるってのはないだろうと思う。普通にそういう話なのかな。基準がよく分からないだろ。そこまでやるならもう全部やりたいようやれよと思う。いや思わない。全く思わないはずなのに、なんだかそんなようなことを喚いている。
そしてまあ、つまるところがそういうことだった。おめでとう。
全く思わないことが実現した。そこまでやるならもう全部やりたいように実際やり始めた。
「もっと殺そう!」
次の言葉はそんなところだったと思う。拳銃をまじまじと食い入るように見つめながら目をキラキラさせていて、なんだかすごく楽しそうだと思う。
そうですか。
僕は別に止めなかった。止めなかったのだと、思う。多少止めたのかもしれない。どうでもよくって、何故全力で止めなかったんだろうと思う。止めても無駄だって思っていたのかな。まあそれは多分、正しいけれど。あるいは止めたら自分が撃ち殺されるのかも、とか。そんな感じだろうか。でもやっぱりこのへんは不適切で、あんまりなんとも思えなかったという記憶がなんとなくある。強いて言うならこう。
そうですか。
なんだか、どうやら僕が次に言ったセリフはこんなものだった。
「銃はやめとけ」
「えどうして?」
「うるさいから。バレたら面倒だろ」
普通に。
「えー」
「てかお前……それで、なんだ、撃ち殺したのか」
「違うよ」
違うらしい。じゃあその銃は何なんだ。
「えっとね、そこの……」
「いや、説明しなくていい」
「……うん」
何だかしょんぼりしているように見える。意味が分からない、分かりたいとも思えない。
「じゃあ、どう殺すのが良いかな」
普通に。
「あーなんか、あるだろ、いくらでも」
いくらでも何があるのか、いくらでも何がある。全然意味もなく周りをきょろきょろして
「なんかほら、包丁」浮いている。勝手に口から音が出ている感じ。浮いているのに何だか淀んでいて、頭が重いのにふわふわ浮いているような、直立しつつ逆立ちの重心を感じるように、あと少し目に何か入ったようなむず痒さ、とか、意識がとびとびになって、目を細める。?
「あー、まあね」
まあそうらしい。まあそうだろう。まあそんな。
なんだめまいがしてくる。
まあ、好き勝手やらせてみるしかないかな。
なにか見えてくるかもしれない。
これから少し経って僕は両親の死体を刻んでトイレに流したのだけれど、それはまた別の話。
そんなこんなで今に至る。僕はこいつのやることなすことの後処理を一身に請け負っている。頼まれたことなんて一度もないけれど、なんだかそういうことになっている。ああ、別に実行役になることもある。そう多くないけど、まあ殺されそうになったら殺し返すとか色々。でも何故殺し返すんだろう。僕はそんなに死にたくないんだろうか。痛くなりたくないだけかな。
そうそう、人を殺すのはあまりに簡単で、これまた凡庸な表現だけど心理的抵抗を抜きにすれば本当に拍子抜けするぐらい簡単で仕方がない。どうやって殺すのかって言ったら、まあ少なくとも最初のうちはびっくりするぐらい単純な手口だった。いや別に今も複雑では全くないけれど。とにかく単純だった。夜中に手あたり次第家のドアを開けようとして、大体開かないけどたまに開けっ放しの家がある。本当にそれだけ。無差別にもほどがあった。
わざわざ駅まで使ってある程度田舎に行って、ドアをガチャガチャ手あたり次第。こういう犯罪ってありそうでなかったなと思う。やっぱ結構な割合で殺されるときには理由があるらしい。それ相応のと言うつもりは全くない。
単にここまで理由もクソもないよりはマシだって話だと思って、そんなことないと思う。なんだか最悪すぎて、比較対象も最悪でうまくいかない。
俺とこいつとで手分けして作業していたわけだけど、当然俺は鍵が開いていてもスルーする。偽善にもほどがあって分かってる。本当に僕はこんなことしたくなかった。単にそれだけで当たり前のことだった。というか、せめて寝るときぐらい鍵をしてくれと思う。本当にやめてほしい。
どう考えたって僕が担当するブロックとあいつが担当するブロックで何か差があるかって全く無い。本当に嫌になる。俺がいるだけ、救われるブロックがあるだけマシなんだろうか?そんなことを一瞬でも思う。
気持ち悪い。クソ野郎。
でも初めのうちは確かに両方のブロックを守ろうとしていたんだ。どういうことかって、開いている家が見つかったら報告してもらう。そんで俺はその家をこう、色々見る。主に見るふりをして、非常口とか部屋とか窓が多いから逃げられやすい、取り逃がしたりして捕まるリスクがあるとか、靴が多すぎるから全員やるのは難しいとかなんとか言って、どんな家でもそういうことにしてやろうという算段でいた。自分のブロックに関してもそういう家を何件か偽造するだけでいい。まあこんなことを続けていても、そのうちこいつが堪えられなくなって一人特攻するとか、あるいは止める僕を殺すとかそういうケースも考えられたし、どうせいつかそんな感じになるのだろうなとも思ってしまっていたけど、はっきり言って完全に甘かった。そう、こいつは何故か聞き分けがよくって、意外と普通にリスクを示せば折れてくれた。確か一週間ぐらいそれが続いていてかなり安心していた。今思うと馬鹿にもほどがある。そもそも本質的じゃない無意味な延命措置でしかないのは勿論、そんなことは可愛いもので……事態はそんなことより、比べ物にならないぐらい完膚なきまでに最悪だったのに。こいつの最悪さを直感的想定の範囲内で推し量るなんて、なんて。
「……そんで非常口は荷物で塞がれてて……しかも、今二人しかいない」
急に長々と喋るそいつに僕は完全に呆気にとられていた。
いつもは、先ほど言った通り鍵が開いていたって報告を受けて、俺が四方八方から無意味に家を洞察、長々と喋って納得させる。と言う流れなのだが、こいつは急に、報告の段階でプレゼンを、してきた。
「どう?」
どう?って、どういうことだろうと思う。考えてみて、こいつが急にプレゼンしてきた。なんとなく思い返して、俺が教えた気にするべき点を完璧に抑えていた気がするだから何だと思う。全く想定していなくって、こいつが喋っている間バカみたいに口を開けていただけだった。何なんだ、とか思っていた。馬鹿みたいに。だから、だからどういうこと、だから殺すのだろうか。殺す?
繰り返す、僕はこのプレゼンの間、多分、もう疲れていて、疲れていたからか何も考えていなかった。何を急に、ぐらいに思っていた。適当に聞いていた。その意味だとかをあまり重要視できていなかった。
「ごめん、もう一回」
なんとなく嫌すぎて。とりあえず、そう、とりあえず。話はそれからだって思う。もう一回何回でも。
こいつは多少不機嫌そうになりながらも一から説明してくれた。そのプレゼンに穴がないか徹底的に探す。探す。探し続けて、一つぐらいさっさと見つかれと思う。そう思って、またしばらく思い続けて、気持ちだけがそう思い続けて終わる。
終わった。
「完璧だよね」
「……」
無駄な延命措置、本質的じゃない場当たり的で短絡的なやり方。誰も殺したくないだとか言ってそうやって適当に逃げて、それがもたらしたものがこれだった。何でよりにもよってこんなことには頭が回るんだとか、本当に想定外で、勘弁してほしかった。これなら特攻でもしてくれた方がまだよかったじゃないか。このバカに何も考えさせず好き勝手やらせていれば、直ぐに事件になって一つの事件で終わっていたのかもしれない。最悪のトロッコ問題ではあるけれど、やっぱり、僕以上の偽善者ってどこにいるんだろうかと思う。
結論、僕は律儀に、ご丁寧に、極めて低リスクな家を選んで人を殺しに行く知識、理論をこいつに与えたのだった。
「おーーーーーーーい」
「あっ」
ぞわぞわして、なんか目を合わせられない。
「いこ」
「あっああ」
そして手を引かれる。何が?
だから、だから何なんだ、いやだから殺すんだって。分かってる。何が?
だから殺す。鍵が開いていて、確実に殺せそうな環境だから殺す。
どうして?
僕はここまでやってきて、のに、未だにお花畑にいたんだろうと思う。適当にこうやっていなしていれば、いつかなんとかなるんじゃないかとか、そういう形で。そう。
なんだか、驚くほどその家は近かった。
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