第22話 お母さんと一緒でも良いじゃん?

 家への帰り道で僕は考え続けていた。


「悪いフラグを潰したりストーリーは順調に進んでるけど、物足りない……」


 僕自身、満足感が無くて物足りなさを感じてしまう。


 一体何がどう足りないのか、自分で振り返って考えてみる。


「よく考えたら家でご飯食べたり寝たりして、全然旅ならではの外泊とか外食……出来てないよねこれ」


 今の満たされない感じを自分なりに考えた結果、僕は外での宿泊や外食が全然無い事に気づく。


 家で1人のレイカママに心配をかけさせなかったり、寂しい思いをさせない為だったけど、これだと折角の『ブレガース』の世界を満喫しきれない。


 醍醐味が味わえていないんだ。


「かと言って自立したいから独り立ち……多分泣きかねないかも」


 1番手っ取り早いのは家を出て自立する事だけど、僕は長年一緒に暮らしてきたから母の性格は知っている。


 とにかく、この世界に来てから僕をちゃん付けで呼んで可愛がり、当初は一緒のベッドで添い寝してもらった時があれば、僕がお風呂に入ってる所へ一緒に入って来た時もあった。

 それが嫌という訳じゃない、むしろあんな綺麗なお母さんと一緒に過ごせるのは嬉しいし。


 成長すると流石に別々にさせてもらってるけどね、年頃の男子には色々やっぱあるからさ……。

 とにかくレイカママは今も変わらず、僕を溺愛してくれてるというのは充分伝わっている。


「そもそも……こういうRPGのお母さんとか絶対家にいなきゃ駄目って理由あったっけ?」


 ふと、僕は考え始める。


 何かとゲームに登場するキャラの母親とかは家に居るイメージが強い。

 夫は何時帰って来れるか分からない中で家に待ち続ける、流石に縛られ過ぎで自由が無いのではと?と僕は感じた。


「そうだ、レイカママも普段は家ばかりで広い外の世界には出ていない……」


 僕は自分ばかりが、そうしたいと思っていた事を今さら恥ずかしく思ってしまう。

 僕よりもっと自由に歩けない母が居るにも関わらず、自分の自由しか考えていなかった。


 流石に自由に旅行へ行ったりするぐらい楽しんでも、罰は当たらないと思う。


「じゃあ──そうすべきじゃないか」


 これと決めた僕に迷いはなく、家に到着すれば中へ入る。


 ☆


「今日はね、良いお肉が入ったのよ〜。おかげでビーフシチューが何時もより良い出来なの♪」


「わかるよ、何時もより美味しいんだもん」


 僕はレイカママと当たり前のように夕食を過ごす。

 今日は良い牛肉が入ったみたいで、ビーフシチューが何時もよりコクがあって美味しく感じる。

 ライスも食べ進めたり、やっぱり米と肉にルーの組み合わせは最強クラスだ。


 その良い肉はウルにも影響があったみたいで、僕の足元にて生肉をガツガツと食べ進めている。


 何時ものように夕飯を一緒に過ごし、何時もだったら僕はあすに備えて自分の部屋に行っちゃうけど、今日は違う。


「レイセちゃん、明日もお出かけよね? 此処毎日行ってるから──」


「それなんだけどママ、ちょっと話したい事があって」


 僕はテーブルでレイカママと向き合い、母の目を真っ直ぐ見る、

 この世界において僕の母親だけど、やっぱり綺麗で見惚れそうになってしまう。

 本当にお父さんって、どんな出会いで結ばれたんだろう?


 そういう場合じゃないと己に喝を入れてから話を切り出す。


「基本的にママって家にいるよね?」


「ええ、材料の買い出しに出かける時ぐらいかなぁ。それ以外は家で過ごしてばかり、言われてみればそうねぇ」


 レイカママは自分の顎に手を当てる仕草を見せれば、自分の行動を振り返っていた。


 そして僕は少し間を開けてから次の言葉を伝える。


「──ママ、次から僕が出かける時ってさ……一緒に行くのって駄目?」


「え?」


 突然の言葉にレイカママは驚くような顔、こういう事を言われるとは思ってなかったのかな?


「正直言うと1人で遊びに行ったりとかしてたけど何か……心細いと思ったり、ママ家で1人どうしてるんだろうって。最近そんな事ばかり1人居る時に考えちゃうんだ」


 僕は目の前の母親と向かい合って話を続けていく。

 レイカママの方も僕から目を逸らす事なく聞いていた。


「僕がこんな気持ちになってるからママは1人でもっと寂しいんじゃないかなって……父さんも忙しくて家に帰ってないし、ずっとママを1人にさせるのは駄目だと思うんだよ。最近こういう事も始めたし」


 そう言うと僕は冒険者のライセンスを示す証をテーブルの上に置く。


「!? 冒険者にレイセちゃん、なってたの……!?」


 言ってなかったから当然レイカママにとって初耳で、驚くような顔で僕を見つめている。


「ゴメン、言ったら心配されたり反対されると思って言わなかった……何時までも無職じゃいけないから、何か働こうとなって始めたんだ」


 何か危険な事をしようとすれば、僕を溺愛する母なら駄目だと止めるかもしれない。

 僕の行動が制限されると思ったけど、最初から既に制限されていたんだ。


 このまま行けば僕はこの世界を満喫しきれないし、レイカママも家でずっと一人。


 そんなの僕が望むグッドエンドなんかじゃない。

 もう周囲にどう思われようが構うもんか。


「色々不安だから、家に居るんじゃなくて僕の側に居てほしい……駄目かな?」


 こういう事は言い慣れてないから、どうにも上手い言い回しが思いつかなかった。


「……フフ」


 するとレイカママは僕の言葉を聞いてクスッと笑う。


「レイセちゃんったら今の台詞は好きな女の子にプロポーズするみたいだったわ。そういうのを先にママへ言って良いの?」


「え、そういう感じに……」


 そんな意識無かったけど、そう聞こえちゃったのかこれ。

 何か急に恥ずかしい……!


「でも、そうレイセちゃんから言ってくれたり思ったりしてくれて嬉しい。大きくなってきたから段々とママがいらなくなってきたんじゃないかって、ずっと不安だったの」


「いらないなんて絶対無い!」


 僕はレイカママの目を見て言いきる。


 彼女がいなかったらレイセというモブ兵士の子供は生まれなかったし、僕もそこに宿るような事は無かったと思う。


「レイカママは絶対必要だから、絶対に」


「レイセちゃん……!」


 感極まったのかレイカママは席を立つと、僕を優しく抱き締めてくれる。

 成長したけど僕の小さな体は母の腕の中に包みこまれ、とても暖かく感じた。


「ありがとう……そこまで想ってくれてママとっても嬉しいわ……これからはレイセちゃんが行く所について行くからね……!」


「うん」


 心地良い気持ちになりながらも、僕はレイカママの背中に両手を回す。


「今まで通りご飯も一緒だからね?」


「うん」


「また一緒のベッドで寝ようね?」


「うん」


「また一緒にお風呂入ろうね?」


「うん……え?」


 僕はレイカママの言葉を聞きながら返事したけど、一緒にお風呂へ入るというのに返した後で気づく。


「お風呂は……あの、色々不味くない……?」


「親子でお風呂に入る事は何も問題無いでしょ? レイセちゃん、やっぱり嫌って思ってる……!?」


「え、い、嫌じゃない。全く嫌じゃないから……!」


 逆に嬉しいぐらいだとなるけど、それは僕の胸の中に仕舞っておいた。


 グッドエンドを迎えるならレイカママも一緒、それで原作キャラと一緒に世界を満喫する。

 もっと早く思いついても可笑しくないのに、僕の視野は大分狭まっていたみたい。


 此処からはレイカママも入れての『ブレガース』満喫だ!


 ☆


「ママ……流石に恥ずかしいかも……」


「えー? 親子なら普通よ?」


 翌朝、何時ものようにレイカママの朝食をウルと共に食べて、僕は外へと出る。


 違う部分はレイカママが一緒に歩いてて、僕と手を繋いでいる事だった。

 足元にはウルも歩き、相変わらず母のボディガードを務めてくれている。


「こうすれば絶対はぐれないし、暖かいからね?」


「うん……」


 そうしたいと願ってる母の顔を見て、僕達は手を繋いだまま街を歩いている所だ。


 買い物は勿論、馴染みのトラベラーギルドへ行くにしても一緒で、周囲にはニヤニヤされたりも少なくない。

 クエストの依頼人からも微笑ましい目で見られるぐらいだ。


 それだけ以前にも増して僕はレイカママと24時間ほぼ一緒にいる。


 お手洗いだけは流石に別々だからね!?百歩譲ってベッドや千歩譲ってお風呂とか一緒だとしても!


「レイセすっごいお母さんっ子だったんだー?」


「お母さん大事にするのは凄く良いと思うよ」


 クエストをこなしてる途中のルシオやロイスにも、僕達の姿を見られて暖かい目で見られていた。


 多分──いや、確実にマザコンと思われたかなこれ……。



 という感じで僕はレイカママが見守る前で、腰が痛い老婆にタッチヒーリングを施して腰の痛みを治す。


「おお、楽になった……!ありがとう坊や。お母さんを大切にね」


「あ、ありがとうございます……」


 物凄い子供扱いをされて僕はクエストクリアと共に、棒付きの飴まで貰う。


「レイセちゃん大分クエストをこなして凄いわねぇ〜、もう優秀な冒険者さんじゃないかな?」


「ううん、そうかなぁ……」


 何時ものようにレイカママと手を繋いで歩き、僕を凄腕の冒険者と言ってくれるけど、別に冒険者としては凄いクエストは一つもしてない。


 家の掃除を手伝ったりとか、ペットを一緒に探したりとか、薬を買って届ける等、誰でも出来る小さなクエストばかり。


 評価の上がる凶暴な魔物を倒す、みたいな仕事は冒険者になったばかりの僕には中々回って来ないし、ルシオ達にも早々来ないと思う。


 こんな感じで僕は新たな日常をレイカママと過ごす。


 ────────

 此処で一区切りという事で、この話は1度此処で幕を引こうと思います。


 まだまだ色々書くべき事があったのですが、どうにも纏まりきらないまま進んだら話が大きく滅茶苦茶になりそうな気がしたので、タイミングとしては此処かなとなりました。


 楽しみに見ていた皆様には申し訳ないです。


 そして此処まで見てくださり、応援してくれた皆様ありがとうございます!


 現在別の作品を毎日投稿中なので、そちらも良ければ見ていただけると嬉しいです!


 サイコフットボール 〜天才サッカー少年の双子は本当のテレパシーが出来て心の読めるサイキッカーだった!〜


 https://kakuyomu.jp/works/822139838469550967

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原作知識を持って転生した先はモブ兵士の息子!? 〜滅ぶ運命にある村のフラグをへし折る為に、努力しまくったら最強の魔法使いになって、シナリオを書き換える!〜 イーグル @dpmhrk

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