成り上がりファンタジーを書かない理由
雨宮 徹
成り上がりファンタジーを書かない理由
私に影響を与えた作品は数多いですが、主に『ブラックジャック』『火の鳥』『仮面ライダークウガ』『ガンダム00』です。他にもありますが省略します。
これらの共通点は「人間の業」「単純な勧善懲悪ではない」という点です。手塚治虫作品からは、人間が持つ命への執着を学びました。「相手の病に付け込んで、多額の報酬をもらう」「永遠の命を求めて身を亡ぼす」。ブラックジャックについては、彼の良心によって無償で命を助ける場合もあります。ですが、基本的には金銭で動きます。それでも多くの人を魅了するのは、彼の人間性でしょう。
仮面ライダーとガンダムは、手塚治虫作品との共通点が見えないです。パッと見は。『クウガ』は、自らが嫌悪する「暴力をふるう」ことによって世界を守る。『ガンダム00』は、世界から戦争をなくすために、「武力介入」する。これらは、単なる正義の味方ではなく、矛盾を抱えつつも生きる主人公たちの物語です。手塚治虫作品と一緒で、単純な勧善懲悪ではありません。
このように、私に影響を与えた作品はネット小説でウケる「成り上がり」「チート」とは対極にあるのです。私は、矛盾を抱えつつも生きる人を書きたい。そうすると、どうしてもビターエンドになりがちなのです。こればかりは、仕方がありません。
矛盾を抱えた人を描くにはどうするか。参考にしているのが『ジュラシック・パーク』と『PSYCHO-PASS』です。これらは、物語の中に一種の皮肉・矛盾が混ざっています。『ジュラシック・パーク』『PSYCHO-PASS』は、システムの欠陥・矛盾という形ですが、これを人間に置き換えています。つまり、システムが内包する矛盾を個人の内面の矛盾を描くのに利用しているのです。私の創作の原点は間違いなくここにあります。社会批判が多いのも、これが理由です。SFやミステリー中心なのも、こららの影響です。
このように、私は「ウケ」よりも「自分の書きたい」を優先します。ですから、コンテストで受賞して書籍化されたいという願望はあっても、成り上がりものは書きません。正確には、影響を受けた作品の関係で書けないのかもしれません。
ここまで、私の創作の原点になった作品たちの紹介でした。このエッセイを書くことで、自分の創作に対するスタンスがより明確になりました。今後は、単に矛盾を抱えた人を描くのではなく、我流でファンタジーを書くことに挑戦したいと思います。
成り上がりファンタジーを書かない理由 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993
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