玄関に置かれた贈り物

天使猫茶/もぐてぃあす

恩返し

 ある休日の朝、僕は一匹の猫を庭に埋めた。

 散歩に出かけようとしたその時に自転車か自動車にでも轢かれたのだろう、まだ冷たい道路の上で泥だらけで固くなっていたのを見つけたのだ。


 その日の夜、そんなこともすっかり忘れて眠ろうとした僕は自分の頭の近くになにかの気配を感じて目を開いた。人の気配ではない。

 恐る恐る目を開くと、暗い部屋の中、枕元に薄く光る半透明の猫がいた。

 よくよく見ればそれは今朝埋めた猫と同じ模様をしているようにも見える。


 猫は僕が見ていることに気が付いたのか、ペコリと頭を下げる。それを見て僕も思わず布団から起き上がると正座をして軽く頭を下げる。


「供養をしてくれてありがとうございます。おかげで成仏することが出来そうです。しかし、恩人に礼もしないで消えるなんてそんな不義理は通せません。なので、一つ恩返しとして贈り物をさせていただきます。明日の朝に玄関に置いておきます」


 猫は一方的にそう言うと、僕に口を挟む暇を与えずにふっと姿を消した。

 一体何だったのだろうか、と頭を悩ませるもしかし眠気が強く、どんな恩返しなんだろうと想像しながら布団に戻るとそのまま眠ってしまった。


 翌日になり、玄関を開けた僕は思わず笑ってしまう。


「まあ、猫だもんね。気持ちだけもらっておくよ」


 そうして僕は、玄関に並べられた噛み傷のある何匹かのネズミの死体を庭に埋め、仕事に向かった。



 その夜に眠ろうとした僕は、部屋の中になにかの気配とともにチュウチュウという声を聞いて目を覚ました。

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