第19話 呪詛
「おおぉぉぉぉぉ! 身体に翼でも生えたかのように軽い!」
四階を抜かして五階に続く階段を上りながら、王離が叫んでいる。
それは良かったね。
相変わらずの虫ども。時々現れる疫鬼。
そして、すごい勢いで駆けてくる
ここに来て赤子のような鳴き声が響いてくる。
「はぁっ。はぁっ。はぁっ。はぁっ。さきほど……から、なんだ……この……鳴き声……」
肩にのった白から白い目で見られている。
いや、だってこんなに顕著に不調が現れると思っていなかったんだもの。
結局、二人は仙桃を食べたのだ。
仙桃の効果で王離は、体力が回復し筋力が増強したらしい。
さきほどから、虫どころか
元々、素質があった王離だ。妖魔を倒す為に作られた槍を使いこなすようになっていた。
しかし
だから、私が隣を並走しながら神気を送って、身体の中の気を整えている。
「呪詛の本体が近いということだね」
確証はなかったけど、この鳴き声は相当危険かもしれない。
「
私は翡翠の短剣を
「これは?」
「お守り。邪を切り祓うという呪がこめられている」
今の
だから、守り刀を渡しておく。
「それなら黎明が……持つと……いい」
「私の守り刀は白だからね。必要ないんだよ」
「はん? 俺様にかかれば
私の肩に乗って偉そうに言う白。
いや、後始末の方が大変なんだよ。
「
王離が、後ろを振り向きながら聞いてきた。
「おっさんは、前だけを気にしていればいい」
流石に
「人を……呪い殺す……なら、役目を……終えたのでは……ないのか?」
「武官っていう人が呪詛で死んだのなら、それでそれは良かったのだろうけど、疫鬼で死んだのなら、呪詛は完結しないまま発動し続けることになる」
「あ……だから……この状況……に」
「そうだね」
ただ、疑問なのが庭を回ったときに、呪物が埋められた痕跡がなかったことだ。
だから、王離に前の所有者を聞いたのだけど、随分前に
だから武官に対しての呪詛だと思ったのだけど……。
そして五階にたどり着いた。そこはまるで高貴な人と謁見するような広い場所だった。
中央には簾が上から下ろされたあやしい空間がある。
「なにか、皇帝との謁見の場所みたい」
「いや……そのものだ」
その皇帝陛下が言うのだから間違いはないのだろう。ということは、その皇帝に近しい者ということになる。
これは厄介な匂いがプンプンするよ。
「白。三ヶ月分の前借りじゃ、割に合わないよ」
「ははははは。人の怨念というものは厄介だな」
笑って誤魔化さないで欲しい。私は初めからやる気なんてなかったのに!
そして赤子のような猫の鳴き声がうるさいぐらいに響いてくる。それも複数いるかのように、全方向から聞こえてくるのだ。
中央にある簾がくるくると上に上がっていき、そこにいるものの姿があらわになった。
そしてピタリと止む猫の声。
ああ、これは普通の呪詛じゃない。
中央の玉座には美しい
作り方は様々だが、女性の身体を用いての外法などありえない。
これは、相当根深いものかもしれない。
『ミャウミャウ。ミャァァァァァン!』
猫だから、何を言っているのかサッパリわからないけどね。
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