第4話:テストの点数と恋愛相談
クラスで一番の……いや、学校で一番かもしれないボッチの僕とクラスで一番の……いや、間違いなく学校で一番のリア充代表ギャルの天宮さんがおしゃれ代表みたいなドーナツショップでお茶を飲んでる。
よくよく考えたらこの状況に僕の心は耐えられるんだろうか。あの天宮華恋と同じ店、同じ席でおしゃれドーナツを食べているのだから。
それでも、なんとか僕は天宮さんに言われるがままにカバンからテストの答案を引っ張り出した。
「70点かぁ、頑張ったね」
口では誉めてくれているのだけど、天宮さんの表情はがっかりしているのが分かる。俺
でも、僕的にはこれでいい。満足だった。
「あれ?」
彼女が僕の答案を見ているときに思わず言葉が出てしまったみたいだった。
「……」
少し嫌な空気が流れた気がした。
「現代文70点、古文70点、数学70点! 物理70点! なにこれ!? 英語70点!? なんで!? これ!? 全部70点やない!?」
「た、たまたまですね」
大丈夫。まだ大丈夫だ。僕のことなんて誰も見ていないから。これまでも大丈夫だったんだ。
「あれ? 数学のこれ、最後の問題解けとらん!?」
ああ、それは例の数学の先生の「杉山の100点防止問題」のやつだ。
「なんで問1で間違えてるのに、問2、3、4が全問正解してるの!? なにこれ!」
あー、そこは問1の答えを使って問2、3……って進めていくやつだ。配点の関係で問1を間違うことになったんだ。
「うそやろ。最後の問題解けとる! 私も間違えたのに! 杉山の100点防止問題!」
……バレた。完全にバレた。やっぱり、天宮さんは成績が学年トップなだけある。あの天宮華恋だ。単なるギャルじゃない。最強ギャルなのだから。
「ちょ、どうやったん!? これ授業中にやっとらんよね!?」
「あー……、これは杉山先生が好きなインボリュート曲線をX軸とかY軸じゃなくて一次関数を中心に回転させた体積を求めさせる問題で……」
「それ何を求めとーと!?」
しまった。これは見たときに珍しい問題だと思って嬉しくなって挑戦したんだ。まあ、分かってしまったらすぐ解けちゃったんだけど。
「ちょ、途中の式 見して!」
「あ……」
天宮さんは僕から答案をふんだくる様に奪って行った。
そして、目の前で食い入るように見てる。
「解けとる……。途中の式も合っとー……」
急に背もたれにドサッと体重を預けた天宮さんが言った。
「よく解けたねー、こんなの。しかも、今回 結構 時間足りんくならんかった?」
「た、たしかにギリギリだった……」
嘘だ。15分くらいで終わって、あとはぼんやりしてたんだ。でも、それは言わなくていい。
「現国は漢字の読み方間違える!? 『
漢字は得意なんだ。一回見たら覚えちゃうから。でも、配点の都合上 読みを間違えるしかなかったんだ。
「物理も問1から間違えてる! なんで
今回の物理は問題数が中途半端で配点が分かりにくかったから、そんな変な感じになっちゃったんだ。
「ミック……これ、絶対 狙って70点取ってるでしょ!」
天宮さんがテーブルに両手をドンと突いて断言した。
しまった。これまで誰にも気づかれないで来たのに。学校内で可もなく、不可もない立ち位置にいると、僕のテストの内容とかは誰からも気に留められないもんだった。
高得点連発なら話題にもなるんだろうけど、70点はこれまた可もなく不可もない。クラス内ではだいたいは天宮さんの高得点と、日向が天宮さんの点数を抜けるかが話題に上る。それくらいだ。
ボッチの僕の点数なんて誰も気にしない。高得点も取らないし、赤点も取らないからそっちでも話題に上らない。
……これまではそうだった。
「なーんか、おかしかぁ……」
そんなことを言いながら天宮さんが僕の答案を現国、古文、物理……と見比べて納得いかない表情をしていた。
「ところで、恋愛相談!」
その話は本気だったのか。僕的にはすっかり忘れていた。
逆に、彼女の表情はパアッと明るくなってこちらを見た。
「僕には荷が重いですよ」
「このテストみたいに、恋愛相談でも70点のアドバイスがもらえたら御の字なんやけど!」
天宮華恋は僕に70点の恋愛アドバイスを期待しているらしい。
テストの点と恋愛相談は全くの別ジャンルだ。焼きそば作りが上手だとしても、自転車の運転が上手だとは限らない。それくらい全く別の話だ。
「日向くんの親友でしょ!? 日向くんのために!」
「日向の?」
「ほら、うまくいったら、日向くんにはこんなかわいい彼女ができるんだよ!」
「ああ、なるほど」
天宮さんが両人差し指で自分を指していた。長くてカラフルな爪が印象的だった。
彼女が言うのも一理ある。それくらい天宮さんは周りの評価が高いし、なによりかわいい。ホワイト化社会の申し子みたいな良いやつ代表の日向となら釣り合いが取れるだろう。
「僕が言うのもなんだけど、日向は良いやつだし、直接言ったら普通にオッケーしてくれそうだけど……」
「それじゃダメなん!」
急に大きな声を出して辺りのお客さんが注目した。それを天宮さんが気にしているようだった。
「確度を上げる必殺技が必要なのよ! 一撃必殺の!」
周囲を意識してか声を潜めて天宮さんが僕に顔を近づけて言った。無意識に僕も顔を近づけた。それだけでドキドキだった。
それにしても、なるほど さすがリア充。こういう所で失敗を防止しているのか。勉強になる。
「告白したら絶対にオーケーもらえるように根回ししたいんだね?」
「そう! それよ!」
ふんすと腕を組んでソファにドカリと座った。僕の記憶が間違ってなければ、僕の方が相談に乗る側で、頼まれごとをされている側だと思ったけど……。
このふてぶてしさがリア充って感じで、僕が見習わないといけないところかもしれない。
「で、どうしたらいい?」
やっぱりこの役は僕には向いてない。僕は同級生の高校生男子の気を引きたいと思ったことが一度もないのだ。方針も分からなければ、ロードマップを引くことすらままならなかった。
「やっぱり僕には……」
「じゃあ、ミックやったらどう?」
断りの言葉を言ってこの場違いな状況を終わらせようとしたら、天宮さんが予想外のことを訊いた。
「だからぁ、ミックだったら、かわいーーー女の子になにしてもらったら嬉しい? ……エロなしで」
天宮さんは成績は良いけど、頭はあんまり良くないのかな。こんだけかわいくて、みんなから好かれてたら、普通に告白したら誰でもオーケーするだろうに。かわいい服とか着てたらオーバーキルだ。それ以上なんかないだろ。断る要素を全く思いつかない。
「あえて、
そうなのだ。日向は部活前にパンを食べてた。部活前に弁当を食べてるやつもいるけど、親が弁当を作ってくれないとパンを食べてるやつも多い。
弁当を渡せるような関係になってて、天宮さんが笑顔で弁当を渡してきたら、もうそれだけで落ちてる。その時点で落ちてる。告白の言葉すら必要ないかもしれない。
「おべんとう……、お弁当! いいね! それ! よき! 胃袋をつかむ的な! 三つのお袋やね!」
よく分からないことも言っていたけど、なんか納得してくれたらしい。よかった、よかった。僕にも天宮さんみたいなリア充代表の人の恋愛相談に乗ることができるなんて。人生において思い出になるような大義を果たしたな。
僕の物語は「ラブコメ」だと思っていたけど、「勘違い系」だったか。ヒロインは僕のクラスメイトに矢印が向いていた。なーんだ、僕はモブだったか。
「それじゃ……」
「待って」
ドーナツも食べたし、コーヒーも飲んだ。相談にも乗ったから帰ろうとしたら、天宮さんから呼び止められてしまった。ついでにシャツの裾も掴まれているので、ここから立ち去ることもできない状態だった。
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