よく分からない。

20××年、8月某日。

部屋のクーラーのタイマー設定を間違えて、

ムンムンとした湿気と熱のこもるサウナのような部屋になっていた。


酷く喉が乾き、ベッドも、白いヨレヨレの半袖も、汗でぐっしょりと濡れていた。


━━━━━水を飲もう。


夜中に温められた蛇口から、ぬるい水を注ぐ。


ごくっ。


━━こんなぬるい水、いつぶりなんだろう。


不意に、笑う母の顔が浮かぶ。


水を飲んだ後、顔を上げたのと同時に、鏡に写った自分と不意に目が合った。


長く伸びた髪が、汗で頬に張り付いている。

中途半端に伸びた無精髭は、撫でるとジョリジョリと音を立てる。


いつか髪を切ろうと思っても、先延ばしにしたまま忘れていくのが日常で。


朝昼の区別はどうでも良くて、自分の脳みそが中心。やりたいことも無くて、ただただネットに溺れていくだけ。


自己啓発系のYouTuberはとっくのとうに見終わってしまった。響くものは何も無くて、エンタメとして、ぼーっと画面を見ているだけ。チコちゃんには、既に叱られる準備は出来ている。


(母ちゃん、元気にしてっかな、、)

誰からも来ないLINEは、公式から来たもので埋もれて溢れかえっている。


そんなのどうでもいい。こんなことどうだっていいんだ。そんな事より。

今日の夢が、すごく奇妙だった。

ただ、その記憶が、嫌なほど脳の中にこびりついている。

ほとんどはっきりは思い出せないけど、

確実に覚えているのは、

母の笑う顔だった。

実家ら辺で、懐かしさもちゃんとあった。でも、確実に。いや、何となく、

実家近くの土地ではないのはわかった。

それでも夢の中の自分は、ふつーに日常として暮らしているようだ。

そしてさらにおかしい所は、静かだったこと。

頭がおかしくなるほど、耳が痛いほど静かで、

まるで人がいないようだった。まるで、人がそこに存在していなかったかのように。


悶々と考えながら手だけは動かしていたようで、無意識に焼いたパンの、ほそぼそとした煙が自分の背を超えて部屋の空気に溶けていった。

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