B県立図書館館長の白田


「お客様、私の隣にいる彼がハク湖やハク湖の伝説について少し詳しい方でございます」


司書は横にいる男を俺に紹介した。見た感じは俺と似たような年齢といったところか。


「ではあちらの応接室でその話について話しますので私についてきてください」


男はそう言うとカウンターから離れて奥にあるであろう応接室に向かって歩き出した。俺は彼の後についていった。


応接室に向かって歩き出した時カウンターにいる司書が男に小さく手を振っているのが見えた。あれは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。


応接室に着くとその男は手前の椅子に座るよう俺を誘導した。俺は素直に従いそこに座った。男は向かいの席に座る。


「改めましてB県立図書館にようこそ。私はここの図書館長を勤めますは白田と申します」


どうやらこの男はこの図書館の館長らしい。この館長がハク湖について少し知っているということか。


「俺は沼津だ。よろしく」


俺は軽くがだ自己紹介をした。


「さっそくだが本題に入る。カウンターにいる司書に聞いたと思うが俺はハク湖の伝説について調べている。あの伝説が本物かそれとも偽物かそれを確かめることが俺の目的だ。そのためにハク湖やハク湖の伝説についてあんたが知っていることがあれば教えてほしい」


俺は目的を素直に伝えた。館長は唯野のように俺の目的について聞いても笑わなかった。真面目に話を聞いていた。


「そうですね。まず沼津様はハク湖やハク湖の伝説についてどれくらいの知識があるか確認してもよろしいでしょうか。まぁ些細なことで構いませんから。決して浅はかな知識であっても私は笑ったりしませんから」


俺はハク湖についての知識を話した。ハク湖の周りが森だったこと、宿場があり現在そこにはホテルが建っていることなどだ。俺がその少ない知識を話していても白田は笑わなかった。


「なるほど、確かに沼津様の知識は正しいです。おっしゃる通りハク湖の周りは森でした。樹々に囲まれておりました。宿場についても正しい知識です。まぁもう少し詳しく言うのならハク湖の周辺が宿場町になっておりまして、そこが現在はホテルや土産屋などに変わっているということです」


まぁ俺もこの知識は正しいと思っていたから改めて正しいですよと言われても何も思わない。仮に正しくなかったとしたらB市立図書館に置いてあった史料や本が間違いだったということになる。


「沼津様は宿場町にと聞くと何を想像されますか」


「そりゃ旅人が泊まるところだろう」


名前の通り宿がある場所の町ということではないのだろうか。


「これは安土桃山時代や江戸時代のことですが、その時代には当然のように身分というものがありました。大名のような身分の高いものもいれば一般人もいました」


それは分かっている。江戸時代までは武士の時代といっていいと思っている。徳川家がトップにいた江戸時代は戦の数は少なくなったとはいえ武家が頂点にいたのだ。


「宿場町にはですね、武士のように位が高い人が泊まるところと一般の方が泊まるところがありました。また当時は馬での移動ということもあり馬の交換場所や荷物の受け取りなんかも宿場町にはありました」


そうなのか、俺は松尾芭蕉のように旅人は歩く印象があるため馬での移動ということは想像していなかった。


「そこでです。あの伝説をもう一度おさらいしましょう」


白田はそう言い伝説のおさらいを始めた。



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