B市立図書館

俺はホテルで唯野と別れた後に駅に向かった。唯野はいいやつだった。俺がハク湖の伝説の生き物を見たい。あれが事実かどうか確認したいと言った時唯野は否定もしなかったし笑わなかった。真剣に俺の話を聞いてくれたし作戦も立ててくれた。


俺がこのことを言った時大抵の奴は笑っていた。お前は本気で伝説を信じるタイプのやつかと。伝説は伝説のまま楽しむものだと。わざわざ本当かどうか確認するものではないし、確認しようとも思わないものだ。


なら宇宙人とか幽霊とか妖怪とかも確認しに行けよと、ある奴は言ってきた。


俺だって分かっている。おそらくハク湖の伝説の生き物はあくまで伝説であってこの世にいないことなど。分かっているのだが確認してみたい。実際に実験したい。


唯野にその話をすると唯野は作戦を立ててくれた。俺はその作戦に乗っかった。結果的に風邪が悪化してしまったがそれは俺のせいであって唯野のせいではない。彼は別れ際に博物館や図書館の情報をまとめた紙もくれた。やつはいいやつだ。


駅に着いた俺は電車に乗り図書館の最寄駅で降りた。まずはB市図書館に行こうと思った。そこで手始めにハク湖や伝説について調べる。初歩的な情報を得た後にB県立博物館やB県立図書館に行こうと思う。


B市図書館に行くと俺は書籍検索のために使われるコンピュータを使いハク湖関連の資料を探した。


いくつかの資料を見て分かったことがある。ハク湖の周りは昔森であったこと、その森の周りには宿場があり、旅人がそこに年中泊まっていたこと、ハク湖は現在と変わらないことである。


おそらくハク湖から現れた伝説の生き物に飲み込まれてしまった人とそれを見て後世に伝えた人は旅人だったのだろう。ならば現場を見た人物は宿場に戻ってたのだろう。書き残したのか、女将などに伝えたのかは分からないが、見た人物によって伝説は語り継がれた。


宿場はどこにあったのだろうか。俺は再び本を見た。そこで驚きの事実を知ってしまった。俺が先ほどまで泊まっていたホテルに宿場があったらしい。


ならもしかしたらあのホテルに伝説の生き物に関する情報が隠されている可能性もある。でもそれは考えたくない。なら唯野が真っ先に教えているだろうからだ。あれほど協力的だった男のことだ、隠したりしないのではないか。


俺はハク湖の伝説の生き物についての情報を見た。やはり大きな魚か龍か、とにかく大きな生き物としか分かっていないらしい。


ここで得られる情報には限りがあるかもしれない。俺は一度この図書館を後にすることにした。明日B県立図書館に行こうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る