第2話:物資を手に入れた!

 泳いでも、泳いでも、泳いでも。

 まるで進んでいるとは思えない大海原を泳いでいるとどこからか流れてきたペットボトルに入った水や袋麵がスーパーの袋に入って見つかる。


「水っ! あとは……インスタントの袋麺だけか……」


 あまりにも簡素な物だが動いたことで何とか手に入った食料に愕然としたが、それでも今の現状で文句など言えるはずもない。

 昨日まで食べていた母の食事を考えるとジャンクでしかないが、今となっては貴重な食糧で開いていた袋麺をバリボリと口にする。

 安定しない水面によって食事のマナーなど気にする余裕とやらも吹き飛び、野生児の如く貪り喰らう。

 一心不乱にお菓子のように食べれば一瞬にして麺は消え去り、パサついた口の中を水でごくごくを潤わせていく。


「……ぷはぁ! 最高だっ! やっぱり腹が減ってたらなにも考えられねぇな!」


 一息つくと口から零れ落ちた乾麺の破片が海に漂い、段々とふやけていく様を見て乾麺と水を使うことで麺として食べることも出来たのでは? と思ったがすでに乾麺は胃の中に消えた。

 残ったのはペットボトルに入った少しの水だけだった。


「うっ……失敗した。でもしょうがない。今回はしょうがなかったんだ。腹が減ってたんだし」


 決して満足とはいかない食事量だったが、それでも何も食べれないよりもマシだろうと前向きに考え、今度見つけたら実践すればいいと思った。

 だがそこには見渡す限りの海があるだけで、運よく見つかったこの袋麺も次に見つかるのはいつになるのか。


「それにしても……いったいここは何なんだ? どうして俺は海なんかに居るんだよ。っていうか太陽の位置もさっきからあんまり変わってないように見えるんだが」


 腹が膨れれば多少は冷静に自分の現状を改めて考えることが出来ている。

 けれどすぐさま幾ら考えたところで何も確証も得られないのだから無駄だと悟る。


「せめて誰でもいいから人とかいないのか? って、いる訳もないか。こんなどこかの沖合じゃあ人に会えたら奇跡だろ」


 溜息と共に顔を俯かせると波に揺れる哀れな自分の顔が映り、穏やかな波によってぐにゃりぐにゃりと変化する。

 寝間着すら着ていない俺は下着一枚でこの海に捨てられている。そう両親とて健在なのに何故かこんな理不尽な現状に追いやられていることに強い憤りを感じていた。


「なんだよ……なんなんだよっ! どうして俺がこんな目に遭わないといけないんだよ!」


 水面を強く叩けば水飛沫があがり、声は大空と水平線へと消えていく。

 空しい。ただ虚しさだけが残る衝動的な行動に、今はただ何度も繰り返していた。まるで幼稚園に通う前の幼い子供が親に何かを強請ねだるような行動。

 しかし、誰かが何かを世話してくれるはずもない。ただ空虚な時間だけが過ぎてゆく。

 そして一頻ひとしきり喚いたあと、気が付けば体力は尽きてまるで流木のように仰向けのまま海の上に漂っていた。


「……疲れた。もう、いい。もういいよ。もう一度寝ればきっと元の生活に戻れるさ……」


 もしかしたら、という淡い期待を持って目を閉じる。漂う身体は波任せとなり、まるで揺り籠のように何処かへと運んでいくような気がした。

 こんな悪夢から抜け出せる場所はもう夢の中にしかないような気がする中で、それは大きな衝撃となって訪れた。


「な、なんだっ!?」


 身体を起こして周囲を見渡せば、やや離れた場所で巨大な水柱が見えた。

 こんな自分しかいない世界で起きた巨大な変化。自分以外の何かがなければ起きない変化に身体は無意識にそちらへと泳ぎ始めていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る